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4月16日を過ぎても「ある一言」を書けば確定申告を延長できる

プレジデントオンライン / 2020年4月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、資金繰りに苦しむ企業や個人事業者が多い。公認会計士・税理士の佐久間裕幸氏は、「一定の条件下で、申告や納税を待ってもらえる制度がある。特に申告の期限延長制度については、このコロナ禍でほとんどの人が当てはまる上に、特別な手続きもいらない。ぜひ活用するといい」という――。

■税務署への申請で納税が猶予される

新型コロナウイルス感染症の影響で、企業や個人事業者は、大きな売上減少や休業手当の支給による運転資金の不足に直面している。そのような状況で、税務署に申請することにより納税猶予を受けられれば、資金繰り面で大きな助けになるだろう。

2月決算で4月末申告の会社であれば、通常4月末までに法人税、消費税の納付をしなければならない。個人事業者で令和1年分の確定申告書を提出済みであれば、4月16日までに納付をするのが原則で、振替納税を利用している場合5月15日に引き落とし日が到来する。あるいは、従業員が多い企業では、4月の給与から源泉徴収した所得税を5月10日までに納付しなければならない。

こうした状況の中で、新型コロナウイルス感染症の影響により、国税を一時に納付することができない事情があれば、税務署に申請することで、審査のうえ原則1年以内の期間、納税の猶予が認められる。この場合、以下の要件のすべてに該当していなければならない。

①国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること。
②納税について誠実な意思を有すると認められること。
③猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと。
④納付すべき国税の納期限から6カ月以内に申請書が提出されていること。

■申請が通れば1年間も納税を伸ばせる

「今までも納税が苦しい時には、1~2カ月納付を遅らせたり、分割納付したりしていたから、わざわざ申請をするのも面倒だ」という方がいるかもしれない。これは単なる滞納をしていたに過ぎず、納税猶予の措置を受けていたわけではない。税務署が本腰を上げれば滞納者として取り扱われてしまうことになる。しかし、今回の納税猶予の取扱いは、審査が通れば以下のような措置が受けられるのだ。

①1年間の猶予が認められ
②猶予期間中の延滞税が軽減され
③財産の差し押さえや換価(売却)が猶予

しかも、担保の提供が明らかに可能な場合を除いて、担保は不要となる。

さらに「個別の事情」に該当すれば、前述のような要件とは別に納税の猶予が認められる。例えば、既に別の国税で納税の猶予を受けている場合には、前述の4つの要件を満たせないため、審査で猶予は認められないという結論となる。しかし、以下のような個別の事情があれば、別途納税の猶予が認められる。

①災害により財産に相当な損失が生じた場合
②納税者本人または家族が病気にかかった場合
③事業を廃止し、または休止した場合
④事業に著しい損失を受けた場合

例えば、新型コロナウイルス感染症に罹患してしまった場合、休業要請に応じて店舗を休業した場合など、今回のコロナ禍により該当する場合が少なくないはずだ。

税務署の案内文書によれば、「まずはお電話でご相談を」とされている。

■そもそも申告自体がまだなら延長を

また、そもそも、申告期限の延長によって納税義務の発生自体を止めておくこともできる。まだ申告をしていない場合は、まずは申告期限の延長を検討することをおすすめする。

すでに多くの方がご存じの通り、所得税の確定申告と納付期限は、例年より1カ月延びて、4月16日まで一括延長されている。これに対して、法人税などそれ以外の税目については、こうした取扱いはない。しかし、個別の延長手続(国税通則法第11条)が幅広く認められることが明らかにされている。個人の所得税についても、4月17日以降に提出せざるを得ない場合、同様に個別の延長手続が認められている。

国税庁のFAQでは、次のような例示が掲げられている。

①体調不良により外出を控えている方がいること
②平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること
③感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること
④感染拡大防止のため外出を控えている方がいること

例えば、企業、個人事業者、申告を依頼している税理士事務所で、担当者が感染症に感染した、患者に濃厚接触したなどで業務が停止した場合や、休業要請を受けて休暇取得を要請したり、テレワークなどを実施して作業の効率が大幅に落ち、業務が進まない場合などが該当すると考えられる。

■手続きは必要なし、余白に一言書くだけ

今般、政府の緊急事態宣言が全国に拡大されたことで、ほぼすべての企業や個人事業者がこの条件に該当することになろう。所得税、法人税、消費税といった申告納税の税目は、申告をすることにより税額が確定し、納税義務が発生する。すなわち、申告期限の延長は、納付期限の延長とセットになる。そのため、延滞税等の発生もないということになる。

新型コロナウイルス感染症の影響により、期限内に申告・納付することが困難な個人事業者、法人については、申告・納付ができないやむを得ない理由が解消した日から2カ月以内の日を指定して申告・納付期限が延長される。申告書等を作成・提出することが可能となった時点で申告を行えばよい。振替納税を利用している個人事業者の振替日については、所轄の税務署から個別に連絡が来る。

この個別延長の手続であるが、申請書が複雑ではこうした手続に慣れない納税者にとって負担になる。そこで、国税庁では、申請書等を別途、提出する必要はなく、申告書の上部余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記するだけで良いとしている。すなわち、本来の申告期限が到来する前に何か手続をするのではなく、申告書の提出ができるようになった時点で、提出する申告書に付記をするだけでよいのである。

■電子申告の場合も一言入力するだけ

また、電子申告をする場合には、所得税のe‐Taxによる場合、「送信準備」画面の「特記事項」欄に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載し、法人であれば「電子申告及び申請・届出による添付書類の送付書」という添付書類の「電子申告及び申請・届出名」欄等に、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と入力しておけばよい。また、従業員の給与から天引きした源泉所得税を納付する所得税徴収高計算書の場合には、計算書の「摘要」欄に「新型コロナウイルスによる納付期限延長申請」と記載すればよい。

手続の詳細は、次のURLの国税庁のWebサイトに掲載されている。

申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の個別指定による期限延⻑⼿続に関するFAQ(個人)
法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ(法人)

以上のように、すでに納期が到来している税金については、納税猶予の申請を行い、これから納付期限が到来するものについては、申告・納付期限延長の手続をすることで、納税の時期を遅らせることができる。

特に申告・納付期限延長については、申告書等を作成・提出することが可能となった時点で動き出せばよいのであり、助成金や融資のような申請書や添付書類の提出や審査といったプロセスを要しない。個人事業者、会社等の資金繰りの大きな味方になってくれるだろう。

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佐久間 裕幸(さくま・ひろゆき)
公認会計士、税理士
1961年、東京生まれ。1986年、慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了。1990年公認会計士、税理士登録。大手監査法人を経て、1964年に父が創設した佐久間税務会計事務所を2007年より引き継ぎ、所長に。

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(公認会計士、税理士 佐久間 裕幸)

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