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なぜ「マスクの品切れ」が延々と続いているのか。いつ国民に行き渡るのか

プレジデントオンライン / 2020年4月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sergio Yoneda

■国を挙げて増産しているはずなのに、買えないマスク

マスク不足が一向に解消されない異常事態が続いています。異業種であるシャープ、トヨタ、日清紡HD、ヘリオスTH、DMMなどが次々とマスクの生産に参入し、全国マスク工業会によると店舗への入荷も増えているといいます。

しかし、依然としてマスク不足は解消されません。増産されているはずのマスクは一体、どこに消えてしまっているのでしょうか? 多くの人が持つこの疑問を考えていきます。

少し前まで、マスク不足の原因となっていたのは転売屋の存在でした。

筆者の知人にせどり(転売)を個人ビジネスにしている人物がおり、聞いた話では転売規制が入る前にフリマアプリで転売をしたところ、マスク単体で月商2000万円にもなったといっていました。通常価格でマスクを仕入れて、フリマアプリで高値販売する行為は健全な市場流通性に悪影響を与えるとして、厳しく規制されました。しかしながら、小売事業者の高額販売は規制対象から外れており、依然として高値で取引されています。楽天市場や、アマゾンなどの通販サイトでは、一枚数十円のマスクが、100円以上の価格で売られており、依然として消費者にとっては「普通の価格で気軽に買う」ことが難しい状況が続いています。

■マスクがなかなか買えない現象を説明する家庭内在庫

それにしても、なぜマスクはいつまで待っても「レアアイテム」であり続けるのでしょうか。その理由は国内のマスク生産量の少なさと、家庭内在庫という概念、買い占め行為の3つで説明することができます。

そもそも、国内のマスクは多くを海外からの輸入に依存している状況でした。日本衛生材料工業連合会によると、2018年のマスクの海外輸入数量は約80%です。今は世界的にマスクの品薄状態が続いていますから、国外で生産されたマスクが積極的に日本に入ってくる状況ではないのは明らかではないでしょうか。

また、マスクは「必要なときに必要なだけ」買う生鮮食品などと異なり、家庭内在庫という概念があります。マスクは置き場所に困るサイズではなく、また時間が経過することで直ちに品質を損なうものでもありません。そのため、特に今のような有事の際にはストックとして買いためておく人が多くなり、一家庭あたりのマスク保有枚数が高まり、その分多くの人の手に行き渡らなくなるのです。

■国民が一人2箱買うなら120億枚も必要になる…

仮にマスクは1箱50枚程度入っているものとします。日本の人口は約1億2000万人なので、一人あたり1箱手に入れようとすると、必要なマスクは60億枚、「品薄なので、念のために2箱持っておく」と考えると120億枚必要になります。そのため、シャープが工場のクリーンルームを稼働して、数万、数十万枚と生産してもこの圧倒的な需要の量に応じる枚数を用意できていないのです。

さらに店頭販売での買い占め行為が起きている現状も、全国民にマスクが行き渡らない原因になっています。マスクの購入を求めて、真夜中から行列をつくり、店頭に座り込む人まで出ています。なるべく多くの人に行き渡るよう、店舗によっては購入制限を設けていても、同じ人が何度もレジに並んで買い直しをするなどの不正が横行しており、小売店もその対応に苦慮しているのです。

このような複合的な要因によって、日本の全国民にマスクが行き渡らない状況が続いているのです。

■なぜ台湾は日本にマスクを寄付できるのか

マスクをたくさん着ければそれだけ効果を高めるというわけではないので、同じ人がたくさんマスクを持つのではなく、できるだけ必要な人に行き渡るようにすることが肝要です。そのためには、「一人の人が何個も買い占める」という状況を止めなければ、いつまでも買いづらい状況は解消されないでしょう。

これには官民一体となった対応が必要と思われます。販売店側ができる施策としては、同じ人が何度も買えないようにマスクの購入に条件を設けることです。たとえば多くの店舗でやっている会員登録をしてもらい、購入時には会員証の提示を義務化することです。これにより、同じ人が複数回購入しようとするとレジで止めることができて、簡単に買い占めを防止することができるでしょう。

民間の努力だけでなく、政府の対応も求められるところです。台湾では1月にはマスク不足になることを見通し、政府がマスクを買い上げました。これにより、市民による購入制限を設けるなど政府が積極的にマスク不足解消に乗り出し、感染拡大防止に大きくリードしています。4月16日には台湾は200万枚のマスクを日本に寄贈することを提案しています。政府主導によるマスク不足が功を奏して、他国である日本に寄贈する余裕まで見せています。

■マスク不足が解消するための2つのシナリオ

安倍晋三首相はマスクを2枚配布する「アベノマスク」の施策を打ち出しましたが、これに要する税金は466億円とされています。日本の人口が1億2000万人ですので、国民一人あたりで割ると約390円です。1枚あたり190円の税金をかけてマスクを配布したわけです。もちろん、それだけでは十分な供給量とはいえず、抜本的なマスク不足解消に向けて官民一体となった取り組みが期待されます。

「マスク」は、必要なタイミングと必要な人は限られる特殊な物です。花粉症や風邪がはやる時期にはマスクを必要とする人が増え、医療従事者は日常的にマスクをする必要性がある一方で、年間を通じてまったくマスクをする習慣がない人もいるのです。

新型コロナウイルスに端を発するパンデミックにより、従来はマスクを必要としていなかった人たちにも突然、強烈な需要を生み出すこととなりました。これにより想定外の莫大なマスク需要を生み出すこととなり、その結果として入手が大変困難となりました。

マスク不足が解消されるシナリオは2つあります。一つは幸いにこのパンデミックの脅威が終息することでマスクの莫大な需要が収まるシナリオ、それからもう一つはマスクが十分充足するシナリオです。

■アベノマスクの次なる一手が必要

前者にはアビガンをはじめ、世界各国の医療の専門家や研究者がしのぎを削ってその対応にあたっています。ワクチンができる可能性を示唆する研究者も出てきており、問題の根本解決が期待されるところです。また、世界的大流行が起こってからまだ日が浅いので未知数ではありますが、気づかぬうちに抗体を獲得している事例も報告されています。さらなる研究が進むことで「抗体を持つ人には緊急のマスクが必要ない」ということになれば、時の経過とともに抗体獲得者が増えることで、マスクの強烈な需要は収まる可能性があります。

また、マスクが充足するシナリオについても、全世界規模でマスク増産を急いでいる状況から行き渡るために必要な要素は「時間」ということになります。マスクは天然資源などとは異なり、人工的に生産できますから、数の問題は時間の問題として解決が期待されます。

いずれにせよ、官民一体の対策を取ることが、スピーディーなマスク不足解消にもっとも有効な策であることは間違いありません。アベノマスクの次なる政府の一手に望みが託されているのです。

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黒坂 岳央(くろさか・たけを)
フルーツビジネスジャーナリスト
果物専門店「水菓子 肥後庵」代表者

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(フルーツビジネスジャーナリスト 黒坂 岳央)

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