「8割おじさん」西浦教授が実践するコロナ感染しないジョギング術
プレジデントオンライン / 2020年4月24日 11時15分
■「コロナ太り」がじわじわ増えている
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で「外出自粛」の日々が続いている。リモートワーク導入企業が増加した結果、「コロナ太りした」という声をしばしば聞くようになった。
「太る」メカニズムは非常にシンプルだ。
消費エネルギーより、摂取エネルギーが上回ると、体脂肪が蓄えられる。会社勤めの人なら特に運動をしていなくても、通勤・帰宅、外回りなどで歩く機会はそれなりにあった。しかし、ずっと自宅で過ごしていると運動量は激減する。
体重(脂肪)が1kg増えるには、約7200kcalが必要だ。単純計算では、1日の消費エネルギーが350kcal少なくなると、約3週間で1kg太ることになる。外出自粛の日々が続くと、肥える人も増える。
コロナ太りを解消するには日々の摂取カロリーを減らすか、消費カロリーを増やすしかない。最近は、ウオーキングやランニングをする人を多く見かけるようになった。
※編集部註:ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所長・山中伸弥教授は、自覚症状のない新型コロナウイルス感染者が多いことを踏まえ、4月16日にユーチューブで「走って大きな息をすると、もしかしたら周りにウイルスをまき散らしているかもしれない」と、エチケットとしてマスクの着用をすすめている。
ダイエットを目的とするならランニングのほうが断然お勧めだ。ウオーキングのおよその消費カロリーは「体重(kg)×歩いた距離(km)÷2」で計算することができるので、体重70kgの男性が3km歩くと、約105kcalを消費したことになる。ちなみに3kmは早歩きでも30分ほどかかる。
では、その時間をランニングに切り替えるとどうなるか。1km6分ペースで走れば、30分で5kmを走ることができる。ランニングのおよその消費カロリーは「体重(kg)×走った距離(km)」で計算することができるので、約350kcal。同じ30分間の運動なら、ランニングはウオーキングの3倍以上も効率よくカロリーを消費することができることになる。
■コロナ太り対策でも「ランニングはツラいよ」という人のダメな走り方
とはいえ、走ることに抵抗感を抱く人は少なくない。本来、マイペースのランニングならしんどくなることはないが、学生時代に運動部だった人でさえも「走る=しんどい」というイメージを持っている場合がある。
走っていてキツく感じる人の多くは、オーバーペースなのだ。無理して速く走っている。呼吸が乱れるほど速く走ると、マラソン日本記録保持者の大迫傑だって苦しい。ランニングは有酸素運動だが、オーバーペースになると無酸素運動のような状態になり、体脂肪も燃焼しにくい。とにかく楽しく走る=笑顔で会話できるくらいのペース、がちょうどいいのだ。
もし、走っていてキツく感じたら歩けばいい。いきなり30分走ろうとすると無理があるが、ウオーキングとランニングを織り交ぜれば誰でも気軽にチャレンジできる。
![彼女の足を伸ばし女性の低いセクション](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/670/img_793610458bf2b1473151ebadbbf1c0da821935.jpg)
具体的には、どうすればいいか。
最初は「5分ジョグ+10分ウオーク+5分ジョグ+10分ウオーク」のペースで始めるといい。そして徐々に走る時間を増やしていく。以下の5ステップくらいで行うと無理が少ない。
②10分ジョグ+10分ウォーク+5分ジョグ+5分ウォーク
③10分ジョグ+10分ウォーク+10分ジョグ
④15分ジョグ+5分ウォーク+10分ジョグ
⑤20~30分ジョグ
30分間のランニングができると、消費カロリーもぐんと高くなる。ただし、一気に運動量を増やすと、疲労がたまり、メンタル的にもしんどい。実は毎日走る必要はまったくない。体調と相談して、メニューの強弱をつけながら、徐々に走る量を増やしてしていくのが理想的だ。
■筋肉量を増やせばもっとコロナ太り防止につながる
通常、人の筋肉量は20歳ごろをピークに加齢とともに落ちていく。筋肉は消費エネルギーが大きいので、筋肉量が減ると自然と消費エネルギーも少なくなる。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、体重70kgの男性で比較した場合、1日の基礎代謝量(安静にしていても生命活動を維持するために消費しているエネルギー)は20代が1680kcalに対して、50代は1505kcal。1日でおよそ175kcalの差がある。
ただ走るだけでは、筋肉量を増やすのは難しい。プラスして、「筋トレ」も行いたい。カラダのなかで最も大きい筋肉である「大胸筋」「大腿四頭筋」「背筋」の“ビッグスリー”を強化する種目を行うと効率的だ。自宅でできるトレーニングは動画サイトなどを参考にするといいだろう。
筋トレをすると一部の筋肉は“破壊”される。カラダはその部分を修復しさらに強化する。これを「超回復」という。このプロセスを繰り返すことで、筋肉は大きく、強くなっていく。運動強度や筋肉の部位によって変わってくるが、一般的に超回復するには48~72時間が必要になる。トレーニングは「休養」も大切だということを知っておこう。
■早朝に走ると人はハッピーになれる
カラダを動かして、汗をかくことでメンタル的にもスッキリするが、ランニングなどのリズム運動は「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン(脳内で働く神経伝達物質)の分泌を促している。一定リズムで走るだけで、ハッピーに感じることができるのだ。
セロトニンは朝日を浴びることでも増やすことができる。幸福感を得たかったら、夕方よりも朝に走ることをお勧めしたい。特に早朝は人や車も少なく、空気が澄んでいるので、さわやかな気持ちになれる。
また朝は体内のエネルギーが枯渇している状態なので、体脂肪が燃焼しやすいメリットもある。さらに朝ランで体温が上がるため、1日中痩せやすい状態になる。ダイエットが目的なら朝ランが最高だ。
■「8割おじさん」厚労省クラスター対策班の西浦博教授の走り方
ツイッターで自ら「8割おじさん」と名乗る厚労省クラスター対策班の西浦博さん(北海道大学大学院教授)も日々のランニングでストレスを発散している。
![新型ウイルス肺炎が世界に拡大 専門家がFCCJで会見](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/670/img_da9c52dbec3b97d7e846dd18f5efb3a3795027.jpg)
ひとりで散歩するイメージで「LSD」(ロング・スロー・ディスタンス)を楽しんでいるとネットメディアのインタビューに答えている(BuzzFeed News<「このままでは8割減できない」「8割おじさん」こと西浦博教授が、コロナ拡大阻止でこの数字にこだわる理由>4月11日公開)。
LSDはゆっくり長く走るため、心拍数が急激に上がることはない。そして、長い距離を走れるようになると、「ランナーズハイ」を感じることができるようになる。脳内伝達物質であるβ‐エンドルフィンが分泌されることで、苦しさや疲労感が抑えられ、「多幸感」をもたらす作用があるといわれているためだ。
新型コロナウイルスの流行拡大を防ぐために人との接触を8割削減することを提唱している西浦教授によれば、友達とランニングするのはOKだが、十分に距離を置くこと、ランナー同士立ち止まって30分以上話さないことが鉄則だ。当然、帰りに一緒にビールを飲みにいくのもNGだという。
外出自粛も数週間という期限が決まっていれば、まだ耐えられるが、先の見えない長期戦になる可能性が高い。“正しい外出自粛”を知り、そのなかで楽しく過ごせるよう、各自で工夫をすることが大切だろう。
ひとりランニングが退屈なときは、友達を誘うのもアリだろう。だが、打ち上げは自宅に戻って「オンライン飲み会」。コロナ禍では、そんな楽しみ方がトレンドになるかもしれない。
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スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)
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(スポーツライター 酒井 政人)
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