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「あなたVS外出自粛」疲労回復には脳も体も積極的な休養を

プレジデントオンライン / 2020年4月29日 11時15分

Getty Images=写真

■“いつもの休日”に満足すると脳が衰える

緊急事態措置の実施期間は2020年5月6日までの1カ月間。外出自粛にテレワークにと家に閉じこもりがちで鬱々としている人も多いかもしれない。プレジデント誌では心身の健康に「太陽光」が大切であると記した。もう1つ、心身には適度な「刺激」が重要なのだ。

もし今、外出自粛要請などなく、通常の大型連休(ゴールデンウィーク)だとしても、長期休みにダラダラするのは心身の回復には有効とはいえない。疲労回復には「積極的な休養(アクティブレスト)」が効果的といわれる。もともとはアスリートから始まった考え方で、活動後に急に横になって休むのではなく、軽く体を動かしたほうが心身ともに疲れが軽減できるとされる。

たとえば「聴覚への刺激」も、「積極的休養」の1つとされている。

こんな興味深い報告がある。音楽を集中して聴くと、ストレスを緩和して積極的休養効果を得る手段となるだけでなく、血圧や認知機能へ影響し、睡眠の質の向上、気分状態を改善して味覚感受性を高めるというのだ。「栄養・食生活」と「休養」の両面から「生活習慣病の予防対策」としても期待されるという。管理栄養士の望月理恵子氏は「積極的休養には普段と違う動き、新しい刺激が重要」と指摘する。

「人は睡眠や入浴時間などによって、実は消極的休養は日常生活で得られているのです。でも、積極的休養は意識しないとできません。音楽を聴いてちょっとリズムにのって体を動かしたり、おいしいものを食べに行ってもいいでしょう。体を動かすことで、筋肉が活発に働くと、唾液が出やすくなって味覚も研ぎ澄まされます。そうすると食事が楽しくおいしくなって、吸収率も高まります。“刺激”がリフレッシュ感を生み出し、その結果、疲れがとれやすくなるのだと考えられます」

とにかく連休で「新しいこと」にチャレンジするのもいい。精神科医の和田秀樹氏は「ブログや小説を書くなどのアウトプット」を提案する。

「40代から脳の前頭葉が縮みやすく、それによって知力や体力よりも、新しいものを生み出す発想力、柔軟性、機動力が低下しやすい。すると、“いつもの休日”を心地よく感じてしまう。しかしそういうワンパターンな活動では脳が全く使われず、もっと衰えてしまいます。いつもと違う著者の本を読む、新しい料理を作る、できるなら自分から世の中に発信するような活動をすると、前頭葉の刺激になって年とともに弱くなるクリエイティビティにも良い影響があるはずです」

自宅での食事も、外食要素を取り入れ“感覚刺激”を増やすことができる。

「いろいろな種類の生野菜に、ドレッシングや調味料を置いて自宅サラダバーを行うと、幅広い栄養素も摂取でき、肥満予防になります。サラダチキンやゆで卵を入れれば筋肉のもとにもなりますね。同様に、酢飯を作って何種類か刺身を用意すれば自作寿司に。食材やスープを変えて一人鍋を楽しむのもいいですね」(望月氏)

■「休日に高尾山」で仕事がはかどる理由

もし外出自粛でなく通常の休みであれば、私がお勧めするのは山登り、それも本格的な登山では身体的負担が大きいため、片道30分、標高500メートル程度の「低山」を登ること。東京都内であれば「高尾山」が良いモデルだ。

実は、20代をピークに30歳を過ぎたあたりから毎年約1%ずつ筋肉が減少するのだが、それに伴って、疲れやすくなったりフットワークが重くなってしまう。低山を登ることは、平地を歩くよりも確実に、効率的に筋肉量を増やす。これまで8700人以上に運動指導を行ってきた信州大学医学部特任教授の能勢博氏に、筋肉量減少とともに疲れやすくなる仕組みを聞いた。

「筋肉の中には、ミトコンドリア(細胞の中に存在する小器官の1つ)が多く存在していて、体を動かすエネルギーを産生しています。ミトコンドリアは食事から摂取した糖質や脂肪酸などの栄養素と、呼吸で得られた酸素を燃やしているんですね。その機能が劣化すると、多くの活性酸素が生まれます。つまり加齢によって筋肉量が減少すると、ミトコンドリアの数も減って、酸化しやすい体になってしまうのです」

シワやシミ、動脈硬化などの老化現象の要因になり、エネルギー産生能も低下するので動くのが億劫になる。その結果、もっと筋肉量が減少するという悪循環だ。

打つ手はただ1つ、運動することなのだが、ここで本人が「ややきつい」と感じる最大体力の70%以上の運動を取り入れないと、筋肉量は増えにくい。しかし平地では実現するのが難しいのだ。「山に登る」という動作なら自然とこの70%以上に達しやすく、しかも低山であれば心身のリフレッシュに貢献する。

「週1回低山を登るだけで、平地で速歩きで1日15分、週4日程度のウオーキングと同等、またはそれ以上の効果が望める」(能勢氏)という。

■心地よく、楽しいと思う刺激を取り入れる

山登りは「脳の活性」や「決断力向上」にも有効だ。適切な運動トレーニングを行うと、マイオカインと呼ばれる筋肉由来のホルモン様物質によって、脳内でBDNF(神経細胞の発生や成長などを促進させる神経栄養因子)が生産される。

「有酸素運動を実施することで認知機能が向上するという報告もあります。日常生活や仕事でなかなか物事を決断できなくなった人は、山登りをしてみては。体力向上にもなりますが、山では足場の不安定なところが多く、そうしたところを歩くことで脳機能改善が期待できます。さまざまな組織のタンパク質合成にもつながり、肌や髪などの若返りも助けるんですよ」(同)

体全体への適度な負荷によって筋肉内に乳酸が発生し、それが脳を刺激して成長ホルモンなどの分泌を促すのだ。

最後に、最近どうにもやる気が起きない、アイデアが浮かばないという人へ。神経内科専門医の米山公啓氏によると「脳のスランプ」があるという。

「脳のスランプから抜け出るには2つの方法があります。1つは徹底的に仕事をし、よりよい思考方法を見つけること。2つめは一切の仕事から遠ざかり、脳を休ませるという方法。休ませる1つの手段として、仕事とは全く関係のない庭仕事でもして時間を過ごすのです。私自身、開業医として週の半分くらいは患者さんを診療していますが、残りの時間で作家として原稿書きを続けています。2つの仕事をすることで脳の切り替えができて、うまくバランスがとれているのかもしれません」

「完全停止」でなく脳を“アイドリング”状態に保つ「積極的休養」。自分が心地よく、楽しいと思う刺激を取り入れることによって、連休明けの仕事で良いスタートを切れるかもしれない。

「筋肉減少のサイン」がある人は“積極的休養〟を!

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)など。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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