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不安や弱さを「強み」に変えられる人のメンタル習慣

プレジデントオンライン / 2020年4月30日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fcscafeine

■「自分の弱さ」を理解する

いま、強い不安に苛まれている人がたくさんいます。そうした不安をすこしでも軽減するために有効なメンタルスキルをご紹介します。

私たちは、ネガティブとポジティブのあいだを行ったり来たりしながら生きています。そして、うまくいっている人は自分をフラットな状態に持っていき、感情を上手にコントロールする術を知っています。

その1つは、「自分の弱さ」を理解することです。

ネガティブな感情がふくらんでしまったとき、その不快度数を客観的に把握することはとても重要なスキルです。そのスキルを身につければ、「怒り・不満・憂うつ・くやしさ・悲しさ」などのネガティブな感情によってイライラしていても、自分の中でコントロールしきれず、周囲にぶつけるようなことは極端に少なくなります。

自分の中に「弱い自分」がいるけれども、それがいつも優位に立つことばかりではないことを知っているからこそ、できることなのです。

■「心のクセ」はいい方向にも悪い方向にも……

私のクライアントに、学生時代、バスケットボールで国体に出場した経験のある40代の女性Kさんがいました。彼女は忍耐強い営業スタイルによって生命保険業界で活躍し、2人のお子さんを育てるシングルマザーでもありました。

公私ともに忙しいながらもうまくいっていた彼女でしたが、私のメンタルコーチングを受けたころは壁にぶつかっていました。子どもたちが高校生になり、子育てが一段落。急に仕事がうまくいかなくなり、営業成績が落ちてしまったのです。

じっくり話を聞くと、彼女の中には「成果を出せない自分は許せない」「負けるのはダメだ」という完璧主義的な考え方がありました。

これまでは、それがプラスに作用してがんばれたようですが、営業成績が落ちるという“つまずき”によって「焦り」や「とまどい」といったネガティブな感情がふくらみ、強みが弱みに変化。完璧主義を追い求めれば求めるほどうまくいかず、空回り。

これが、彼女の人生の「スキーマ(心のクセ)」でした。お話を聞いていくと、仕事以外でも、人間関係でも、完璧主義というスキーマからくる不本意な人間関係のこじれもありました。

■不安をコントロールする「感情の数値化メモ」

そこで実践してもらったのが、「感情の数値化」というスキルでした。

「自分はいま、イライラしてしまっているけれど、過去一番の怒りの爆発に比べ、いったいどのくらいのイライラなのだろう?」
「いま、自分は将来への不安を抱えているけれど、いままでで最高潮の不安と比べれば、いったいどれくらいの不安なのだろう?」

正確な「メタ認知」(自分自身をより高い次元から客観視すること)はとても難しいことですが、感情の数値化とは、あえて感情という定性的なものを定量的にとらえようという試みでもあり、感情を「見える化」してコントロールするテクニックです。

■ネガティブ感情を「見える化」して、客観視してみよう

やり方はとても簡単です。まず、最初に紙とペンを用意します。そして、「自分がこれまでの人生で経験した、最悪にネガティブな感情」を、原因となった出来事とともに思い出します。そのときのネガティブな感情が10点満点中10点となり、あなたの最大数値=モノサシの長さとなります。

次に、「いま自分が感じているネガティブな感情」の種類(不安、とまどい、焦りなど)を書き出し、10点満点中何点と採点します。

ネガティブな感情がふくらんでいるとき、脳内では扁桃体と呼ばれる部位が過剰に活性化。それが怒りや不安といった感覚を呼び起こし、決断力や判断力を低下させます。

ところが、紙とペンでネガティブな感情を「見える化」し、客観視することで、扁桃体の過剰な働きが治まっていくということが脳科学の研究で明らかになっています。

■「距離を取る」メンタルスキル

先述のKさんは学生時代、自分のミスで大切な試合に負けた出来事を思い出し、そのときに感じた後悔をネガティブな感情の10点としました。そして、その点数を基準に、いま抱えている感情を採点していきました。

Kさんのように、採点というアクションを通してネガティブな感情と少し距離を置きながら、自分の心の動きを理解することで、そこから発生する感情を上手にコントロールできるようになります。

たとえばいま、思い通りにならない毎日の中で、あなたが8点、9点をつけるような強い不快の感情を抱いてしまっているとしたら、原因となっている人や事柄から1時間だけでもいいので離れてみましょう。心理的・物理的な「距離」を取るのです。

そして、緑の多い場所に出かけましょう。木々を見ながら歩くだけで心が落ち着きます。これは脳内でセロトニンと呼ばれるホルモンが分泌されるからです。

■ネガティブ感情を分離すれば、「スキーマ」は武器になる

心がすこし落ち着いたら、ふたたび「感情の数値化」を行ってみてください。抱えていたネガティブな感情は3、4点くらいにまで下がっているはずです。

「感情の数値化」には、過去のよりネガティブな感情を思い出し、「あの最悪のときを乗り越えてきたんだから……」と考えることで、冷静さを取り戻す効果があります。また、定期的に自分の感情を数値化することで、ネガティブな感情を手放すきっかけをつかむこともできるのです。

女性の手は心臓の形で閉じられた赤い南京錠を握る
写真=iStock.com/Fotoeventis
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Fotoeventis

前述のKさんは「感情の数値化」を通じて、自分の弱みが「負けを認められない完璧主義」にあると気づきました。

それからのKさんは、ストレスがたまると、「あ、また過剰な完璧主義が顔を出したな」と察知して、「感情の数値化」を行い、感情を数字で可視化する習慣がつきました。

そのことによって、「でも、これってそこまで完璧さを求められている?」などと自問自答することで、冷静さを取り戻し、この「完璧主義のスキーマ」を他の方法でもっと活かせないかと論理的に考えるようになりました。そうすることで、日々の生活も、仕事も人生全般も、飛躍的にうまくいくようになったのです。

■「弱み」を変換するアクション

じつは脳科学では、強みと弱みというのは「隣り合わせ」だといわれています。完璧主義なKさんの性格が物事や仕事に対するモチベーションを上げるのに役立っていたように、状況や環境によって、その人が弱点だと認識しているものは、いとも簡単に「強み」へと変貌を遂げるものでもあります

たとえば、営業トークが苦手で思い悩んでいたBさん。クライアントの前で自社のプロダクトの説明をする際に話を盛り上げることができず、いつも苦労していました。

Bさんは実直で、人あたりがソフトな性格です。友人の輪の中に入るといつのまにか人の聞き役に回るタイプ。彼は「そういう消極的な性格を治したいのです」と私のところにメンタル・コーチングを受けに来られました。そんなBさんに私はひとこと、「治さなくて、いいですよ」とお伝えしました。その代わり、徹底的に「聞き役」に回ってください、と。

「プロダクトの説明を上手にしようと躍起になるよりも、相手が困っていること、問題に思っていることを質問して、とにかく徹底的に聞くことに集中しましょう。そのとき、こんなバカな質問をしてもいいのだろうか? と思う必要はまったくありません」

■「弱み」は本当は「大きな強み」なのかもしれない

根がマジメなBさんですから、それからというものの、営業トークのかわりに、クライアントに質問をして、徹底的に聞き役に回るようにしました。それがBさんにとっても心地よかったのです。

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すると不思議なことに、クライアントの引き合いもどんどんよくなっていきました。人は話を聞くより、しゃべりたい生き物です。Bさんの「聞く力」によって、クライアントは気持ちよく話すことができ、満足度が上がったというわけ。多くの人がわれ先にとしゃべりたい世の中にあって、「おだやかに人の話を聞けるBさんの力」というのは貴重なものだったのです。

Bさんのケースは、弱点だと思っていた部分がじつは大きな強みだったという端的な例でしょう。

いかがでしょう。いま、あなたは大きな不安の中にいるかもしれません。ネガティブな感情に心が支配されているかもしれません。しかし、「それ」はじつは、あなたの豊かな感受性や、人の心を敏感に読み取れる「強み」と表裏一体の関係にあります。不安は悪いものでもなくすべきものでもなく、「強み」という武器に変えて使うもの、なのです。

今日からそんな意識で自分の心と向き合っていただければ、と願っています。

※本稿は、中島輝『1分自己肯定感』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

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中島 輝 心理カウンセラー
作家。著書に『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』など多数。

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(心理カウンセラー 中島 輝)

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