非常事態にだけは強い!もしも、今、小池総理だったら
プレジデントオンライン / 2020年4月24日 15時15分
■強制力ない自粛で未知のウイルスと闘う安倍晋三
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、世界各地で国境封鎖や外出禁止令などの強硬な措置がとられる中、日本は強制力のない“自粛”によって「未知のウイルス」を封じ込めようとしている。安倍晋三総理は、人と人との接触を削減する目標を掲げるが、携帯電話などのデータから分析される人出は、残念ながら目標値には届いていない。緊急事態宣言の発令から2週間が経過した今、多くの国民が抱く不安は「このまま目標が達成できなければ、ズルズルと“緊急事態”が延長されていくのではないか」というものだろう。長期戦も口にし始めた総理に対しては、より強力な対策を視野に入れるべきとの声も強まっている。
「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる」。緊急事態宣言を発令した4月7日、安倍総理はこのように削減方針を打ち出し、5月6日までの宣言期間中の外出自粛を要請した。東京都や大阪府など大都市圏のオフィス街の人出は大幅に減少し、週末の外出を控える人も目立つが、東京近郊の県など地域によっては減少幅が小さく、そのハードルの高さを感じさせている。
■非常事態に強い小池百合子
総理は厚生労働省クラスター対策班の分析に基づき目標値を掲げたが、政府の専門家会議で副座長を務める尾身茂氏は削減効果について「8割であれば2週間、7割であれば2カ月以上かかる」としている。つまり、期間内に「8割削減」を達成できれば感染者は減少に向かうが、「7割削減」にとどまれば期限を超えて追加の対策が必要となるということだ。すでに「自粛疲れ」も見え始める中、さらに緊急事態宣言の期間が延長されれば経済的打撃は計り知れない。では、そのときに日本はどうすれば良いのか。
そこで、非常事態下の強いリーダーとして「再評価」の動きが見られているのが、小池百合子都知事だ。小池氏は3月23日の記者会見で「今後の推移によっては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性がある。そのことを何としても避けなければならない」と発言し、感染拡大防止への協力を呼び掛けた。
■田崎史郎氏の"安倍擁護"発言
米国や英国など欧米を中心にとられている「ロックダウン」という用語を用いたことに対しては、前都知事の舛添要一氏が「ロックダウンなどという言葉を軽々に使ってパニックを煽(あお)ってはならない」「都市封鎖も緊急事態宣言も必要ないと私は思う」と批判。元経済産業省官僚の岸博幸氏も「ロックダウンで大変になるかもしれないって世の人を驚かしたのは、まさに小池さん。緊急事態宣言=ロックダウンだ、みたいな印象になっちゃったのは残念な気がする」と指摘し、ワイドショーをはじめ各メディアは猛批判を展開した。
安倍政権に近い政治評論家の田崎史郎氏にいたっては、総理が緊急事態宣言を発令した時期が「遅すぎる」との回答が7割に上った世論調査結果を受けて「小池さんのロックダウン発言があったんで、これに次いでやるとパニックになってしまうんじゃないかと。さまざまなことを考えながら(政権は)やっていたんですね」と責任転嫁して見せたほどだ。相変わらずの田崎氏の安倍擁護である。毎回のウルトラCな擁護話法にもはや感心してしまう。
■メディアも、厚労省も、もっと危機感を持ってほしい
ちなみに、この「ロックダウン」をはじめ、オーバーシュート(爆発的感染者急増)やクラスター(感染者集団)、パンデミック(世界的な大流行)などの言葉は、小池氏が初めて用いたものではない。少しでも公表されている資料を調べればわかることだが、小池氏が記者会見で発した4日前の3月19日、政府の専門家会議は大多数の国民や事業者が努力を続けていかなければオーバーシュートが起こりかねないと分析したうえで、次のように提言していた。
「そうした事態が生じた場合には、その時点で取り得る政策的な選択肢は、我が国でも、幾つかの国で実施されているロックダウンに類する措置を講じる以外にほとんどない、ということも、国民の皆様にあらかじめ、ご理解いただいておく必要があります」。つまり、小池氏は専門家会議の提言に基づいて「あらかじめ」言及し、情報公開したにすぎない。むしろ、ロックダウンの可能性についての専門家による提言の重要部分に触れなかった政府やメディア、評論家は無責任だったのではないか。コロナ危機下のデマや誤発信が問題になっているが、メディアはこうしたときこそ事実にこだわるべきだろう。同様に、政府は厚労省クラスター対策班が地域ごとの感染者数の予測をしていながら、対象自治体には「非公表」とすることを指示しており、政府の責任で国民に積極的な情報開示をしてこなかった姿勢には疑問が残る。
■安倍の甘すぎる見通しに悲鳴をあげる自治体
緊急事態宣言を発令しても「自粛と要請」に頼る安倍政権の対応について、英経済紙フィナンシャル・タイムズは「部分的なロックダウン」と表現したが、危機管理の要諦は最悪の事態を想定したうえで、情報公開をしつつ、国民の理解と協力を得ながら対策を進めることだろう。宣言の期間である1カ月のうち、半分にあたる2週間の自粛効果を見極めたうえで追加措置を打つとした政府に対しては、「こんな甘い見通しで本当に大丈夫なのか」などと自治体からは悲鳴があがっていた。
悠長な構えの国に対し、「都民の命と医療現場を守るためには待っていられない」と小池都知事は4月10日に事業者に対する休業要請に踏み切り、様子見を決め込んでいた他自治体も追随したが、現場を預かる都道府県知事と国の危機感の違いには雲泥の差がある。4月初めからの全国的な感染者数の増加については、ウイルスの潜伏期間から3月20~22日の「3連休の緩み」が影響したと見る向きもあるが、これは3月10日の政府対策本部で安倍総理が「今後おおむね10日間程度は、これまでの取り組みを継続するようお願いしたい」と発言し、同14日の総理会見では「(感染者数は)一定程度、持ちこたえているのではないかというのが専門家の皆さん評価」などと安心感を誘ったことが影響したとの指摘もある。
■安倍の発言は「3連休の緩み」を生んだ
ある全国紙政治部記者は「『それまで自粛を頑張れば、逆に3連休は外出していいんだ』との誤ったメッセージになった。東京や大阪だけでなく、全国的にその後の感染者が増加したことを考えると、総理の発言は『3連休の緩み』を生んだ原因になってしまったともいえる」と語る。
さて、日本は緊急事態宣言の期限である5月6日をどのように迎えるのか。ある感染症の専門家は「今のところ感染者の減少の兆しが見えないため、5月7日からは、より強硬な措置をとらざるをえなくなるのではないか」と語る。対策後の効果がわかるまで約1カ月間が必要のため、仮に期間を延長すれば「出口」は今夏前がギリギリになるだろう。
「より強硬な措置」——。小池氏が3月末に発した「ロックダウン」についての評価は、その後1カ月近くを経て変わりつつある。美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長は3月31日、ツイッターで「ロックダウンは昔から、蔓延する疾病に対する正攻法です。感染の可能性のある対象を閉じ込めて接触を絶てば武漢肺炎の終息は必ず早まります。早ければ早いほど良いです」とつづり、4月15日には「腹をくくって、政治生命をかけて武漢なみの都市封鎖をすべきです」とも提言した。すでに国民民主党は「ロックダウン法案」提出を視野に検討を進めているという。
■無能が確定した安倍総理よりは…
2月末の記者会見で「政治は結果責任だ。その責任から逃げるつもりは毛頭ない」と決意を語ったものの、4月7日には「私が責任をとればいいというものではない」と修正した安倍総理。その一方、当初は批判を一身に受けていた小池都知事には「有事に強い」「先見性がある」などと評価する声があがる。危機に際しての指導者たちのリーダーシップが問われる中、総理は腹をくくった対応をすることができるのか。緊急事態宣言を延長する場合には、国のトップとして、あらかじめ、わかりやすく、その見通しと措置を国民に示す責任をまずは果たしてもらいたい。
もし、“小池総理”がコロナを対応していたら、今ごろ日本どうなっていただだろうか。タラレバの議論は不毛かもしれないが、少なくとも「大きく構える」“小池総理”の方が、存在感皆無で「無能が確定した」安倍総理よりも国民は安心を得ることできたのではないだろうか。
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政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。婚活中。
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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)
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