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コロナ禍で大不況到来!10年後も生き残る歯学部、歯医者

プレジデントオンライン / 2020年5月1日 11時15分

コンビニより多いと言われる歯科医院。そして偏差値30台でも入学できる歯科大学。大不況の到来が予測される今、歯医者に未来はあるか!?

■国家試験合格率、偏差値、学費ランキング

今や「歯科医院はコンビニより多い」と言われ、厳しい競争にさらされている歯医者。多数のライバルがいる中で生き残るには「腕の良さ」だけでなく経営戦略が必要な時代とされている。

今、全国の歯医者はどのような状況に置かれているのか、10年後の展望は明るいのか、各種データから読み解いてみる。統計の解説は、船井総合研究所で歯科医院のコンサルティングを担当する松谷直樹氏にお願いした。

街に歯科医院があふれる中、医院選びで参考にしたいのが歯科医師の出身大学だ。医院のホームページを見ると、大体の場合は院長の出身大学が掲載されている。図1を見ると、全国の歯学部の偏差値は、上は60台、下は30台と大きな開きがあることがわかる。国公立が概して高く、私立で大きな格差が生じている。それに応じて国家試験の合格率も国公立が高い。

■東京はこれからも「激戦区」であり続ける

国公立は長崎大学を除いて合格率は7割を超えているが、私立大学はピンキリで、最下位の奥羽大学は3割程度しか合格者を出していない。東京歯科大学や日本歯科大学(新潟)は偏差値のわりに高い合格実績を残しているが、松谷氏によると、そのような大学は「歯科治療、知識をより効果的に習得できる教育カリキュラムが組まれていると考えられる」のだそうだ。

国公立の偏差値が高い理由は単純で、学費が相対的に安価で志望者が多いからだ。入学金や授業料、施設設備費などを含めた6年間の学納金は約350万円で統一されている。一方で、私立大学は2000万~3000万円と桁違いの高さだ。たいていの受験生は国公立を第1志望で受けるので、必然的にレベルが高くなる。

「国公立に関しては、偏差値や国家試験の合格率は今後も変わらないと思います。ただ、私立に関しては、国家試験合格率が高い大学により人気が集中して、さらに二極化が進んでいくと考えられます」と松谷氏は予測する。

歯学部入試では国公立が圧倒的人気であることはわかったが、歯科医師が開業するにあたっての「激戦区」はどこの地域なのか。図2は都道府県別人口10万人あたりの歯科医師数のグラフである。全国平均が80.5人なのに対し、東京都が115.9人と最も多く、次いで徳島県107.6人、福岡県103.5人となっている。逆に、人口10万人あたりの歯科医師数が最も少ない「穴場」な地域は54.9人の滋賀県で、次いで、青森県55.6人、島根県56.2人と続く。

都道府県別、人口10万人あたりの歯科医師数

「論理的に考えれば、開業して成功したかったら、人口に対して歯科医師数が少ないところを選びますよね。しかし、そのような地域の歯科医師数が一向に増えないのはなぜか。実際のところ、例えば自分が東京出身の場合、縁もゆかりもない地方で開業しようという考えには、やっぱりならないのだと思われます。ですから、地方出身者が地元で『Uターン開業』をするパターンはありますが、ライバルが少ないからという理由で、地方で開業する人は、実はほとんどいないですね。そのため、都道府県別の開業分布は10年後もほぼ変わらないと思います」(松谷氏)

図3の歯科医師数、図4の従事先施設を見ると、現在は男性が7割超を占め、従事先は診療所の開設者または法人の代表者、つまり「開業医」が最多となっている。松谷氏は、「歯科医師の女性比率は年々高まっており、今後男女差はさらに縮まっていくと考えられます。そして、女性の場合は開業するケースが少なく、歯科医師同士で結婚し、夫が開業した医院で働く場合が多いです。よって、開業医の割合は今後減っていくと考えられます」と言う。

歯科医師数/従事先施設

■今後は歯科衛生士が稼ぐ時代に!

年収についてはどうなのか。図5を見ると、医師と歯科医師の年収は2倍近くも差がついている。

医療職種別年収(フルタイム)/医療職種別時給(パートタイム)

「医師と歯科医師の給与差は、残念ながら10年後もあまり変わらないと考えられますが、歯科衛生士の給与水準は間違いなく上がるはずです。これは歯科衛生士が中心的に行う予防歯科が重視されるからですが、このことは患者さん、医院双方にとってよいことです」(同)

歯周病の患者は年々増えており、国も歯周病治療に診療報酬の点数を大きく配分している。それによって歯科衛生士を雇いたいと考える歯科医院が増えており、時給も上がってきているのだそうだ。今後10年ぐらいかけて、歯科衛生士の労働条件はどんどん上昇していくという。歯科医師は、歯周病の勉強は行っているが、歯周病治療・予防歯科自体は歯科衛生士が主に行うため、より必要性が高まると予測される。

従事先別年収/年齢・性別年収/利益率

図8の年齢・性別年収について、30代以降、女性歯科医師の年収が男性歯科医師よりも低くなっているのは、結婚・出産に伴い非常勤勤務の割合が高くなっていく(勤務時間の相対的な減少)ためだと松谷氏は分析する。

次に利益率だ。図9によると、個人開業と医療法人では利益率に大きな開きがあるように見えるが、医療法人の場合、院長の収入が法人からの給与として経費部分に入っているため利益は少なくなる点に注意だ。厚生労働省が2017年に実施した「第21回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、医療機関の利益率は科目別にかなりばらつきがあり、最も高い耳鼻咽喉科は41%、最も低い産婦人科は15%。利益率を見ると、歯科は突出して高くも低くもない。

歯科医師数予測/患者数予測

最後に、図10と図11が10年後の歯科医師数と患者数の需給予測だ。予測値の算出にあたっては、厚生労働省「平成30年(18年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」などを使用した。30年時点の24歳から41歳までの歯科医師数のシミュレーションは、18年時点の医療施設に従事する歯科医師数が維持されると仮定した。29歳から41歳の歯科医師数は、歯科医師国家試験の合格者数が大幅に増減しないことを前提にしている。42歳以降の歯科医師数のシミュレーションは18年時点の歯科医師数がそのまま移行すると仮定した。歯科医師の年齢の上限は98歳とした。なお、死亡率は加味していない。

■歯科医院数は減少する可能性が高い

以上の設定において予測を行うと、30年時点の歯科医師数は11万8400人程度となり、現在よりも1万6600人程度増加する可能性が高い。一方、24歳~65歳の「現役」と考えられる世代の歯科医師数は、18年時点で8万5066人なのに対し、30年時点では7万2000人程度に減少すると予測され、実質的な歯科医師の供給数、あるいは歯科医院数は減少する可能性が高い。

つまり、65歳以下の歯科医師数が減少し、65歳以上の歯科医師数が増加すると考えられる。24歳~40歳までの勤務医層・開業医層の歯科医師数は現在よりも減少するため、勤務医採用の難化と開業数の減少が予測される。開業数が減ると、医院1カ所あたりの患者数は増加するが、保険点数の削減傾向、労務費の増加により、利益は減少すると予測され、経営が容易になるわけではない点には留意が必要だ。

患者数実績において、15年から17年の2年間の減少率は98.85%。仮に今後、2年後の患者数が98.85%の割合で減少すると仮定すると、30年時点では、125万人程度と予測される。

患者数より現役世代の歯科医師数のほうが減少率が高い分、競争環境の厳しさは緩やかになるかもしれない。ただ、先述した通り利益の減少が予想されるため、患者を集めやすくなることが利益の増加につながるわけではない。

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松谷直樹(まつたに・なおき)
船井総合研究所
歯科医院コンサルティング歴15年。開業クリニックから日本有数規模の医療法人グループまでコンサルティングを行っている。歯科医師会、各種団体での講演実績も多数。部門内には一般歯科から訪問歯科、財務、労務、採用、海外まで分野別歯科コンサルティングの専門家30名が在籍。
 

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(ライター 万亀 すぱえ 図版作成=大橋昭一)

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