現役歯科医爆笑座談会「荒稼ぎインプラント歯医者はなぜ、沖縄へ逃げたのか」
プレジデントオンライン / 2020年5月14日 15時15分
■歯医者が患者に「よくしてあげる」とこうなる
昔からの仲の友人が歯医者をやっておりまして、彼にはいつも無料で治療をしてもらっていました。その代わり、最低でも月に1回は来院すること、レセプト(医療報酬の明細書)は彼の自由にさせ、一切口出しをしないことが条件でした。タダで治療するのと引き換えに、あることないことレセプトに書いて国から診療報酬を巻き上げるためです。
また、歯医者で虫歯を治すとなると、何回も通院するイメージがあったのですが、「本当をいうと、1回で全部治療することもできるんだ」と彼に教えてもらいました。
当時、私は虫歯が4本あり彼の歯医者で治療をしました。すると彼は、「病院が終わった営業時間外に来てくれ」といったんです。その日のうちに、虫歯は4本とも治療が済んでしまいましたよ。
冒頭の男性の話を聞けば納得がいくだろう。これが友人にだけ見せた治療の裏側だ。歯医者たちは「こうでもしないと食っていけない!」。なぜこんなことになってしまったのか、3人の現役歯科医たちがその全貌を語る。
■歯医者がコンビニよりも多くなった呆れた理由
【歯科医A】「歯医者の数はコンビニよりも多い」。当事者としては恥ずかしい限りだけど、一般人の間でも周知の事実というくらい当たり前の話になってしまったよね。実際に歯科医の数は10万人を超えている。それだけ忙しいのかといわれると、まったくもってそういうことではない。
【歯科医B】歯科医は増えているのに、治療する歯の数は減っていますからね。1人平均DMF歯数というものを見れば一目瞭然です。う蝕(歯の実質欠損)数は全年代で減少傾向にある。これがどういうことだかわかりますよね。
【歯科医C】少ないパイを大量の歯医者で奪い合うことになるのは必至ですよね。そうなると、目先の利益に惑わされて正常な判断ができなくなる歯科医も出てきます。悲しいけど、これが現実です。
【歯科医A】ではなぜ歯医者はここまで増殖してしまったのか。これは順を追って話していくとわかりやすい。非常に単純な仕組みだね。正直いうと、歯医者というのは現在食えない職業と認めてもいい。でもひと昔前は年収5000万円の歯科医なんてザラだった。かくいう私も好きな高級車を気軽に買えるくらいには稼いでいた。
【歯科医B】銀座のクラブで毎晩のように派手に遊びまわる歯科医グループなど、そういう人たちがたくさんいましたよね。合コンも頻繁にやって、とにかく女遊びに明け暮れる人が多かった印象です。金をばらまいていました。すると、お役人さんが歯医者に目を付け始めて、診療報酬は上がらない、予算は下りないで、歯科医たちの立場が弱くなっていきました。
【歯科医C】お金を持っている医者になびく女性というのは、やはり多いと思います。そういう女性たちが歯科医たちと結婚していくケースが多かった。
【歯科医A】すると当然、自分の子供も歯医者にしたいから、歯科大学が激増し、それにともない歯科医師国家試験の合格者がどんどん増えていってしまいました。当時からそのことを懸念している人も多かった。その結果が、歯科医10万人突破ということ。日本歯科医師連盟が多額の政治献金を繰り返した理由は、歯科診療費を少しでも上げてほしかったから。とにかく今の歯医者は金にならない。
【歯科医B】歯科学生の質の低下も目立ってきましたね。歯科医になっても稼げないのなら高い金を払って歯科大学に子どもを入れる意味がないと親が考え始めた。私大の歯学部などは大幅な学費減額に踏み切っているところもあります。
【歯科医C】大手予備校のデータによれば、私大の半数以上が偏差値50を切っている年もあります。
【歯科医A】ある歯科医から聞いた笑い話だけど、その人は国家試験の会場で偏差値が低いことで有名な某私大の歯科学生から、「10万円でカンニングさせてくれないか」と持ちかけられた。もちろん断ったみたいだけど(笑)。
■なんでもいいから治療しないと金にならない
【歯科医B】若い歯科医だと年収300万円も珍しくないですよね。歯科医の収入は出来高制なので、なにか歯に手を加えないことにはお金が入ってこない。特に問題のない治療済みの歯を、あたかも問題があるように見せかけて、詰め物や被せ物を取ってまた付ける。これは詐欺の常套手段です。
【歯科医A】大義名分を付けて、ただ削ったり被せたりしたいだけなんじゃないかな(笑)。
【歯科医B】実際に銀歯との間にできた隙間から菌が侵入してなかで虫歯が進行しているケースもあります。でもそれって、そもそも銀歯の形が患者に合っていないから起きる。銀歯は基本的に歯科技工士が造るものですが、金がもったいないからといって自分で粗悪品を造っている歯科医もいる。「セラミックに変えておきましょう」と患者から金歯を回収して業者に売っていることもある。
さらにいうとセラミックに変えるのは自由診療なので、歯科医としては金にもなって一石二鳥ですね。ある意味、この自由診療があるからこそ歯科医がなんとか食えているという側面もありますが。自由診療の代表格といえばやはり、インプラントと審美歯科でしょうか。
■歯医者は保険診療だけじゃ食っていけない
【歯科医C】インプラント治療の黎明期は本当にひどかったようですね。日本歯科医学会の調査によれば、インプラントを行う歯科医の6割が患者とのトラブルを経験したことがあるとされています。本音をいうとインプラントの手術は非常に難しい。でもこれって、法律的には歯科医であれば誰でも行っていい治療になっています。インプラントに関する講習は、実際にインプラントを製造している業者が行っていることもありますが、それを受けただけで治療してしまっている歯科医もいるということです。
【歯科医A】たしかにインプラント治療の黎明期は、いま考えると恐ろしい時代だったね。これは聞いた話だけど、当時都内でインプラント治療をやりまくって荒稼ぎした男性歯科医がいた。その歯科医は治療をしている時点で後々、患者の歯に問題が生じることをわかりながらやっていたんだ。クレームや訴訟から逃げるために、レントゲンなどの資料を全部河原で燃やして、沖縄に逃げたって聞いたよ(笑)。
【歯科医B】インプラント1本で20万~30万円はしますからね。歯を極力残しながら──という治療方針ではお金にならない。抜いてインプラントにしちゃうのが利益率で考えたらダントツですからね。
【歯科医C】稼げないからといって、技術もないのに難しいインプラント治療をすれば、トラブルが起こるのは当然のことです。それで生まれた合併症は保険診療になってしまう。つまり国民の税金で「できない歯科医」のミスをカバーしていることになるんです。
【歯科医A】自分でいうのもなんだけど、医者と歯科医の間には大きなヒエラルキーの差ができてしまった。収入にも大きな開きがある。ある歯科医がいっていたことが妙にいまでも頭に残っているんだ。「歯科医は医者じゃなくて大工だ」ってそいつはいっていたよ。
【歯科医B】でもそれは私たちも意識を改めないといけませんね。生活において口腔内の健康はとても大事なこと。歯医者は「壊れたら治す」だけから「壊れないように見守る」立場になることが一番大事だと思います。
(プレジデント編集部)
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