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「GWに感染拡大」で外出自粛は6月以降もダラダラと続くはずだ

プレジデントオンライン / 2020年4月24日 18時15分

埼玉県川越市の川越八幡宮で2020年4月5日、新型コロナウイルス鎮静祈願祭が行われた。市内の観光名所では最も遅咲きのしだれ桜が咲く中、猛威を振るうウイルスの早期終息と住民らの健康を願った - 写真=時事通信フォト

■人の動きを制限しても、地方にコロナは広がってしまう

新型コロナウイルスの感染防止に向けた「緊急事態宣言」の効力は、現時点でゴールデンウィーク(GW)最終日の5月6日までです。政府は経済への打撃を最小限にするため、この日で緊急事態宣言を終わらせ、感染者を減少方向に向けるように対策を急いでいます。

その中で重要なのがGWに人の移動を全国的に抑制することです。すでに交通機関は移動自粛を前提に動いています。航空会社ではJALがGWの国内線を6割、ANAが8.5割の減便を行います。JRは特急列車の減便を計画しており、高速道路会社はGWの休日割引をしない方針です。

安倍首相はGW中は実際に帰省するのではなく、ビデオを使った「オンライン帰省」で済ますよう呼びかけています。実際に4月16日時点で、GWの東海道新幹線の予約数は例年の1割弱にとどまっているそうです。

このように人の動きを抑えることで、首都圏、関西圏、福岡圏から地方への感染拡大を防ごうとしているのです。しかしそれでもGW中に感染が拡大してしまう恐れがあります。ここではコロナ対策の「3つの死角」について指摘したいと思います。

■地方の宿泊施設ではキャンセル料が発生

1つ目の死角はキャンセル料です。大手航空会社や大手旅行会社の多くは、GWの旅行に関しては特例的にキャンセル料を取らないという対応をしています。一方で、地方のホテルのように新型コロナで大打撃を受けている宿泊施設では、通常通りのキャンセル料を請求せざるを得ないところも多いようです。

実は私もGWに軽井沢への旅行を予定していました。自家用車で関越自動車道を経由して現地に向かうつもりでホテルだけ押さえていたのです。予約した時点では当然のようにいいホテルはGWの割高料金で、宿泊先を探すのにそれなりに苦労もしました。

その予約をキャンセルしたのは3月14日だったのですが、その時点でのGWの新型コロナの見通しはまだ不透明でした。ギリギリまで待って、という考え方も「あり」の時期ではありました。しかし私自身の経済予測でコロナ自粛は長期化することを織り込んでいたこともあり、かなり早めに旅行中止を決めたのです。

■旅行客7割減でも、700万人が日本列島を行き来する

もし私がそこでキャンセルを決めていなければどうなっていたか。政府の態度は、3月中旬まで「新型コロナはまだ日本ではたいした広がりを見せていない」というものでした。思い出してください。この時点まではなんとしても7月のオリンピックを開催したかったので誰もそんなことを言い出せなかったのです。

空気が一変したのは3月24日にオリンピックの延期が正式に決まって、その直後に感染者数が急増してからです。3月末ごろには緊急事態宣言の発令がなされるべきだという声も多かったのですが、そこで政府がなかなか決断をしなかった。結局、緊急事態宣言を発令する意向を固めたのは4月6日でしたが、その段階でGWまで30日を切っていました。キャンセル料の発生期間に入ってしまったわけです。

そのためホテルを予約した側からすれば「多額のキャンセル料がかかるのであれば、旅行に出かけたい」という気持ちが働くようになります。国や自治体としてもキャンセルの強制や補償が難しい。おそらく例年と比べて6~7割近く旅行客は減ると思います。それでも一定規模の人数が予定通りGW中に、地方の観光地に移動することになるでしょう。

JTBの調べによると一昨年のGWの国内旅行人数は2375万人でした。つまり旅行客が7割減ったとしても実数としては700万人以上が日本列島を行き来することになる。ここが1つ目のリスクです。

■地元の住民「連休中は近くに出かけてみよう」

2つ目の死角は、地方では外からやってくる旅行客以上に多くの地元の住民が観光地や名勝に出かけるという事実です。

グーグルのリポートによると、コロナショック以後、東京では繁華街や娯楽に関する外出は53%も減っています。一方で、鹿児島県は16%減、山口県は23%減といった状況で、地方はおおむね2割前後しか人の動きが減っていません。

47都道府県で唯一感染者がゼロ(4月22日時点)の岩手県は同じ指標で外出は12%減と、1割程度しか抑制されていません。その状況で地方都市が5連休を迎えることになります。さらに悪いことに、気象庁の予報を見ると今年のGWの後半は天気がよさそうです。

ここまでの外出自粛やテレワークで気持ちがふさいでいるため、地元の住民は「じゃあ連休中は近くに出かけてみようか」となりそうです。実際、東京でも主立った公園の人手は自粛前よりも増加していました。地方でも繁華街は閉まっているので、外出の目的地は観光地になり、そこで大都市圏からの旅行客と行動がかち合ってしまうことが危惧されるのです。

たとえば一昨年の北海道の観光客数は訪日外国人が312万人、東京や大阪など道外から607万人であるのに対して、道内からは4601万人と圧倒的に地元の観光客のほうが多いことで知られています。

そうして人気の観光地で地元観光客の「密」が発生しているところに、首都圏や関西圏から無症状の感染者が旅行者や帰省客としてやってきて同じ場に居合わせることになる。これまで相対的に感染者が少なかった地方の都道府県でこの悪いシナリオが重なった場合、地方での感染拡大は5月2日から6日までの5連休に起きることになります。

■6月3日まで緊急事態宣言は解除できない理由

そして3つ目の死角はその感染から発症までのタイムラグです。

私は政府の緊急事態宣言は5月6日には解除できないと見ています。ロックダウンが先行しているニューヨーク市でも具体的に感染者数が目に見えて減るようになってから2週間、パリでは3週間は様子を見ると言っています。日本の場合も5月6日に「あと2週間様子を見てみたい」と政府が判断するのではないでしょうか。

ではその2週間後の5月20日ごろはどうなっているか。厚労省によると新型コロナウイルスは感染から発症までの潜伏期間は1日から12.5日とされています。つまり、GW後半に感染した人の発症タイミングと、政府が緊急事態宣言解除を検討する次のタイミングが一致してしまうのです。そうなるとさらに2週間、6月3日まで緊急事態宣言は解除できない状況が続くことになります。

このようにGWには感染拡大のリスクが横たわっています。そのことを考えると、日本型の新型コロナ感染対策に決定的に欠けている視点は「強制力のなさ」だと言えそうです。

学校の休校、企業のテレワーク、国民全体への外出自粛要請などは2月後半からずっと続けてはいます。しかし、感染拡大のピークが少しずつ後ろにずれているだけで、感染自体は止まっていません。社会全体への強制力が足らないことから効果は限定的です。

■経済的に生死にかかわる危機水準へ

外出自粛がダラダラと長引くと、経済への打撃が拡大します。収入が途絶えたフリーランスから、営業再開できない中小事業主まで、日本は文字通り経済的に生死にかかわる危機水準へと向かっています。それがこのGWに拡大しそうです。

新型コロナが日本経済に与える影響については、私のnoteでも無料で情報発信しています。経済の先行きについて不安な方も多いと思います。経済評論家としてみなさまの参考になる情報を発信していきますので、あわせてご覧ください。

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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経営コンサルタント
1962年生まれ、愛知県出身。東京大卒。ボストン コンサルティング グループなどを経て、2003年に百年コンサルティングを創業。著書に『仕事消滅AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』など。

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(経営コンサルタント 鈴木 貴博)

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