報ステ富川アナのコロナ感染で「大揺れした」テレビ朝日の裏事情
プレジデントオンライン / 2020年4月28日 9時15分
■局内全体に“コロナ軽視”があった可能性
テレビ朝日系「報道ステーション」キャスターの富川悠太アナウンサーを含め、制作スタッフ4人の新型コロナウイルスの感染が確認されているテレビ朝日。4月17〜19日、同局では3日間で本社内の全館消毒活動を行い、以降スタッフは原則自宅作業の対策が取られている。4月21日現在、グループ会社勤務のスタッフを合わせると同局では5人の感染者が確認されており、今後新たな感染者が発覚する可能性は否定できない。
現在も世界を大混乱に陥れた新型コロナウイルスの影響と対策を「報ステ」などを中心に盛んに報じ続ける同局だが、肝心の自分たち自身は感染を最低限に食い止めるための対応ができていたのか。そもそも富川アナは発熱後も番組に出演し続け、その後、コロナ感染がわかった。テレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏はこのことについて「あえて出続けたのはちょっと、わだかまりがありますね」と富川アナを批判。視聴者からも疑問の声が相次いだ。渦中の富川アナは、報道関係者に向けて「発熱を軽視してしまい、上司や会社に的確に報告をせず、出演を続けたことを深く反省しています」と謝罪コメントを発表している。
だが、同局で勤務するスタッフに話を聞くと、問題は富川アナ自身というよりも局内全体の“コロナ軽視”にあった可能性が見えてきた。
■「4月頭までは自由に出社できていました」
たとえば、志村けんさんが新型コロナウイルス陽性と判明したのが3月23日。25日同局放送の「あいつ今何してる?」では「この収録は3月10日に行われたものです」というテロップが表示された。それから4日後の29日、志村さんは帰らぬ人となった。
だが、この期間も局内では「通常出勤しているスタッフは少なくなかった」と語るのは関連会社に勤務する30代男性だ。
「3月に入り、テレワーク勤務が可能という連絡は入ったものの、通常通りに収録は行われており、私が所属するデスクワークの部署も6割以上は出社していました。少なくとも、関連会社を含め4月頭までは自由に出社できていました。出社しても咎(とが)められることもなかったです」
同局では、スタジオ収録中での“3密”(密閉、密集、密接)が避けられないのは当然として、内勤のスタッフでも濃厚接触する可能性が高い環境に置かれていたという。
■「集団感染一歩手前の杜撰な環境でした」
「毛利庭園奥のテレビ朝日本社と六本木けやき坂通りに面しているEX TOWERを行き来しているスタッフが少なくなく、勤務中は六本木エリア内を歩くスタッフが目立っていました。3月中は“出勤するか否かは自由”という雰囲気だったので、私も3月は、週4日は通勤していました。本社6階の社食も通常営業していましたね」(前出、30代男性)
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、大手のカフェチェーン店では店内の席の間隔を空けるなどの対策が見られているが、そういった措置は同局ではギリギリまで取られていなかったという。
「2メートル空けるなどの措置も取られていませんでした。テレビ局は事務所関係者や制作会社など、不特定多数が出入りするのですが、社食もエレベーターもかなり混み合った状態。当時は3月末だったからよいものの、何もしなければ集団感染一歩手前の杜撰(ずさん)な環境だったと言えます」(同)
■テレ東のようにもっと早めに対策を打っていれば…
実は3月時点で六本木にはコロナの影が近づいていた。
別のテレビ朝日勤務の30代男性が語る。
「3月後半ごろ、六本木ヒルズ内の飲食店で若いスタッフがコロナウイルスに感染したことが発覚し、全社でこの期間内にこの店舗を訪れた人は会社に報告してください』というアナウンスがなされました。その時点で感染経路にテレビ朝日の関係者がいた可能性も否定できません。テレビ東京のようにもっと早めに対策を打っていれば、ここまで事態は大きくならなかったんじゃないかな」
現在、同局は多くの番組の収録を原則ストップしている状態。同局の深夜バラエティー番組を担当するディレクターは、窮地に陥っている惨状を次のように語ってくれた。
「3月後半から会議はリモートになり、富川アナの感染が発覚して数日後にようやく局内への出社は控えるよう発表されました。出社禁止はギリギリまで言われなかった。現在はすべての作業を自宅で行っています。しかし業務にはどうしても限界がある。映像をつなげるなど、テロップを入れる編集作業も自宅作業となったので、パソコンが重く、ネットもつながりにくい。生産性は3分の1以下に下がっています。ほとんどのバラエティ番組が5月放送分までは録り溜めしていますが、それ以降は白紙。本当の地獄はここからでしょう」
現在、生放送である「報ステ」はスタッフを入れ替えて放送を続けているものの、スタジオ収録では濃厚接触の環境が否定できない以上、さらなる感染拡大も懸念される。新型コロナウイルスの状況を連日報じ国民に警鐘を鳴らし続けた報ステ。警鐘を鳴らし続けていたところ、自分自身が感染してしまったニュースキャスター。
テレビ朝日は4月12日に富川アナの感染について発表した際、「当社では、既に社内で当該社員と接触したスタッフの自宅待機や消毒等必要な措置を行いました。引き続き保健所など関係各所と連携し社内および社外への感染拡大防止と番組出演者、業務にあたる社員・スタッフの安全確保に努めて参ります」などとコメントした。
過去のテレビ史においても前代未聞、まさに富川アナが令和の“激レアさん”になってしまったかたちだろう。一刻も早い収束が求められる「絶対に負けられない戦い」が今日も繰り広げられている。
(ライター 柚木 ヒトシ)
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