「地獄が始まった韓国経済」通貨大暴落! 頼み綱の日韓スワップも締結至らず
プレジデントオンライン / 2020年4月30日 9時15分
■高まる反日感情。しかし、日韓通貨スワップ協定を匂わせる謎
4月現在、韓国経済が新型コロナウイルスの感染者数の拡大により“泣きっ面に蜂”状態であることは前回述べました。
韓国は引き続きドルが不足していることに変わりありません。最近、韓国政府は日本に通貨スワップを暗に求めてきましたが、締結には至っていません。しかし、依然国内では反日感情を持つ国民が一定数いるにもかかわらず、同国が日韓通貨スワップの要望を言い続けているのはなぜでしょうか。
その背景には、文在寅政権に政治的な思惑があります。4月15日に行われた韓国の国会議員選挙(総選挙)は、与党が圧勝という結果となりました。
先に文政権が勝利した理由を先に述べます。勝利の理由は、選挙を実施したタイミングがコロナ禍の“今”だったからです。総選挙前の文政権の言動を振り返ると、ドル不足に苦しむ国内の金融界や企業の要望に対し、文政権は“理解を示す姿勢”を取り続けていました。
その根拠として彼は日韓通貨スワップ協定を匂わせていました。ただ、今回の選挙は、経済や安全保障の問題よりも新型コロナウイルスの対策が争点となっていたのです。
■スワップ協定締結を持ち掛ける姿勢に変化はない
文政権は、感染拡大の抑制にある程度成功しており、韓国国内でも一定の評価を受けていました。つまり、その時点で、革新系与党である「共に民主党(ともにみんしゅとう)」の勝利は堅く、日本に頭を下げてまで、文政権は通貨スワップ協定の締結にこぎ着ける緊急性はないと判断したのでしょう。
また、ウォンの大幅下落に対しても、米国FRBとのスワップ協定にはこぎ着けており、いったんは日韓通貨スワップの議論は終息の模様を見せています。ただし、韓国でのドル不足状態は変わりなく、大量の外貨をドルで供給してくれそうな日本に対して、通貨スワップ協定の締結を持ち掛ける姿勢に変わりはなさそうです。
この日韓通貨スワップ協定についてですが、韓国政府は複雑な立場にあります。
前述のように、財界・経済会などには日韓通貨スワップ協定は“ウケる”一方で、反日感情の強い支持層には、通貨スワップの必要性には“反発”がある。つまり反日感情を持つ韓国民にとっては「日本に助けられる」ことを意味するため、スワップを支持したくないのです。よって、今回の選挙勝利は、皮肉にも新型コロナウイルスの被害により生まれたと言えるのです。一方で、落ち込んでいる韓国経済に対する処方箋として、最も合理的な日韓通貨スワップ協定についてはあまり議論されませんでした。
■南北統一を掲げて反日感情は煽れるのか
そんな中で、文政権が選挙の公約で大きく掲げていたのが対北和解(南北統一論)です。これはなぜか。
その背景には、深刻な韓国の人口問題があります。現在の韓国は、日本以上の少子高齢化が深刻化する可能性があるのです。韓国統計庁のデータによれば、早ければ2019年の5165万人をピークに韓国の総人口は減少に転じる見通しです。
南北統一は、北朝鮮にとっては所得水準が高まり、韓国にとっては新しい市場の開拓の可能性があることを意味します。閉塞感が強まる中で、韓国経済が勢いを取り戻すための秘策なのです。反日感情を高める“支持者”を満足させるという意味では、南北統一論は日韓通貨スワップ協定に代わるいい経済対策だったのです。
ただ、前述したとおり、文政権は日韓スワップ協定を結びたいのが本音と考えられ、財界の望みでもあります。文政権は日韓スワップ協定締結を検討する姿勢を見せて財界の支持を保ちつつ、反日感情を高める市民から一定の支持を集めるべく、南北統一論を持ち出したのです。
■韓国経済、5G関連でとばっちり受けないか戦々恐々
さて、ウォンの大暴落以外にも韓国経済には大きな課題があります。それは「5Gの覇権争い」です。
5Gの覇権争いは、米中貿易摩擦の原因の一つになっています。米トランプ政権は中国政府の影響下にあるファーウェイ社に対し、「自社の通信機器を悪用してスパイ行為を行っている」と主張し、制裁を課しました。この制裁に関して実は、韓国も「明日は我が身」と感じ、警戒をしています。
ドイツのデータ分析会社「IPリティックス」のデータによると、5G標準必須特許出願企業のシェアは、ファーウェイ(15.5%)、ノキア(13.8%)、サムスン(12.7%)、LG電子(12.3%)、ZTE(11.7%)となっています(19年3月時点)。韓国勢であるサムスン、LG電子は全体の25%のシェアを占めていることがわかります。5Gの覇権を制するためには、この5Gの特許シェアをいかに握るかが重要です。しかし、中国のように米国からの“中華製品排除”の動きが韓国でも起きれば、これは大きな打撃となります。韓国は米国の同盟国とはいえ、いつ何を言い出すかわからないトランプ政権下では全く油断できません。そういった経緯から、現在韓国は、中国への経済依存度がかなり高くなっています。
■お得意さまの中国がまさかの宣言で韓国はお先真っ暗
そこで中国とは良好な関係を維持したいところですが、中国は25年までに世界の製造強国の仲間入りを目標にしており、18年は15.5%にすぎない半導体自給率を25年までに70%に引き上げるという計画を示しています。
5Gの普及で必要となってくるのが半導体であり、この国内生産体制を整えることがカギとなっています。2019年の半導体市場におけるメーカーの所属国別シェアは、トップが米国の55%、2位が韓国の21%、3位が欧州の7%、4位が台湾と日本の6%、6位が中国の5%という順になっていますが、韓国の今の地位が危うくなっているのです。
つまり、国民感情を二分する日韓通貨スワップ協定締結の難航、国内の反日感情、中国への貿易依存リスクという三重苦を抱えた状態で、文政権は5年任期の後半を迎えることになったのです。
単なるコロナショック以上に、現在の韓国には根深い経済問題があります。日本と外交上では何かとトラブルが多い韓国。それでも、一番近い、お隣の国でもあります。あなただったらそんな韓国のスワップ要求、応じますか?
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テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、株式会社フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。ロイター・ブルームバーグ・yahoo!ファイナンス、雑誌プレジデント、テレビCMなど多数出演。
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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)
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