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「その出社、必要ないのに」若手社員の在宅勤務を阻む3つの壁

プレジデントオンライン / 2020年4月28日 15時15分

大企業若手中堅有志による団体「ONE JAPAN」は加盟企業54社1406人を対象に働き方に関するアンケート調査を実施した。その結果、新型コロナウイルスの感染拡大で、約4割が在宅勤務をはじめて利用したことが分かった。その一方で、在宅勤務の定着を阻む「3つの壁」も見えてきた——。

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調査概要:ONE JAPANが加盟企業54社1406人にアンケート調査を実施
期間:2020年4月13~19日
男女比:男性74%、女性26%
年齢:全体の76%が20~39歳以下(20~24歳73人、25~29歳338人、30~34歳341人、35~39歳316人、40歳以上338人)
役職:非管理職(総合職・一般職など)82%、管理職18%

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大企業若手中堅社員1600人の声「97がコロナで働き方が変わった」

新型コロナウイルス感染拡大により、いま大企業の現場で何が起きているのか。

大企業の若手中堅有志による団体「ONE JAPAN」は、新型コロナウイルスの感染拡大により変化を迫られる「働き方」について、加盟企業54社1406人に緊急アンケート調査を実施した。

アンケート結果によると、「働き方に変化を及ぼしている」という回答は96.8%だった(Q1)。懇親会やイベント、社内外の打ち合わせ、出張、時差出勤とさまざまな変化が起こっているが、今回の変化の象徴となるのが「在宅勤務(テレワーク、リモートワーク)」の実施である(Q1‐1)。

大企業社員の約9割が「在宅勤務」を実施

「新型コロナウイルスにより在宅勤務・テレワーク・リモートワークは推奨されたか」という質問に対し、「強く推奨された」という回答は71.2%だった(Q2)。「推奨された」の18.3%と合わせると89.5%の大企業社員に在宅勤務が推奨されたことになる。そのうち政府の緊急事態宣言が出た後、ようやく在宅勤務に踏みきった割合は19.5%だった(Q2‐1)。「推奨されたが実施できていない」という回答は5.5%(Q3)で、準備が整っていない大企業があることも分かった。

「新型コロナウイルス」発生を機に「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク」は推奨されましたか?

「在宅勤務制度はもともとあった」と回答している人が91.7%(Q3)であることから、在宅勤務はほとんどの大企業で制度として設けられていることが分かる。しかし「以前から利用」が27.1%、「過去に利用」が18.3%とこれまで利用したことがある人は45.4%で、「今回はじめて利用」の44.7%と大差ない(Q4‐1)。

「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク」制度は、もともとありましたか?

在宅勤務を阻む3つの壁

なぜ制度として設けられているのに、大企業の在宅勤務は利用されてこなかったのか。

アンケート結果から、在宅勤務には「インフラ」「ハンコ」「意識」という3つの壁が立ちはだかっていることが分かった(Q4‐2)。

「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク」制度を利用していない方に伺います。あてはまるものを、すべて選んでください。

「インフラの壁」については、自由回答でこんな声があった。

「在宅勤務トライを行ったが、社内のITツールやインフラが整っておらず、社員全員の在宅が不可能ということが判明。車通勤者は原則、在社勤務となった」(25~29歳男性・製造)
「テレワークのシステムがパンク状態。できる仕事に大きな制限」(35~39歳男性・運輸)

「ハンコの壁」については、こうした声があった。

「ハンコを押すために出社しなければならない」(男性30~34歳・製造)
「書類に押印のない各種申請を認めないのがルールで、経理の領収書承認取得、人事の登録資料承認取得のために会社に出勤している」(男性40歳以上・製造)

安倍晋三首相は4月22日、民間の企業活動について「紙や押印を前提とした慣行を改めるように」と指示している。「人との接触8割減」を実現するには、オンラインで契約などができる電子システムの構築が早急に望まれるだろう。

■「3密でも従わざるを得ない状況」

最後は「意識の壁」だ。

「当社社員がテレワークになっても、ビジネスパートナーのテレワークが進められないと意味がないと感じる」(男性35~39歳・情報通信)
「居室自体が3密に当てはまるにも関わらず、緊急事態宣言後も通常勤務体制を強いられている。社会的にはおかしいと思いつつも、会社方針に従わざるを得ない状況」(男性30~34歳・製造)

ただ、工場や研究所、店舗など、「在宅勤務」が実施できない職場もある(前ページ・Q4‐2)。

これについてONE JAPANは「在宅勤務が実施しづらい職場でも、出社時間の柔軟な変更や時差通勤の実施、ハンコに象徴される社内承認システムや手順の変更、社内会議や取引先との商談のオンライン化など、変えられることから直ちに取り組むべきです。企業には体制構築の強化を求めます」と述べている。

■約7割は在宅勤務で仕事に支障がない

次は、「在宅勤務」の賛否について見ていきたい。

アンケート結果では、賛成が96.8%と圧倒的だった(Q5)。その理由として、感染リスクを減らすこと以外に、「通勤時間の削減により仕事時間をより多く確保できる」「無駄な会議が減り、業務効率化に繋がる」など仕事の効率化を理由にあげる人も多かった(Q5‐1)。

「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク」制度に賛成しますか?

自由回答ではこんな声があった。

「社長・役員が参加する会議がオンライン化され、資料もペーパレスとなり準備負荷がだいぶ下がった」(男性40歳以上・情報通信)
「無駄な会議の削減、会議時間の短縮により企画書作成など集中できる時間が確保できる」(女性40歳以上・金融保険)
「以前はメールでの報告連絡が多かったが、今はオンラインでの朝礼があるため会話でのコミュニケーションが増えた」(女性40歳以上・製造)

一方で、仕事の生産性が「上がった」「とても上がった」という回答はあわせて32.4%で、「下がった」「とても下がった」という回答の30.7%と大差ない(Q6)。仕事の生産性が上がったという32.4%と「変わらない」の37.4%を合算すれば、約7割は在宅勤務で仕事に支障がないと考えていることわかる。

残りの約3割は仕事の生産性が下がったと感じているが、それでも在宅勤務に賛成していることが分かる。この層は「インフラの壁」がなくなれば生産性が向上する可能性もあるだろう。

少数ではあるが「賛成しない」と回答した人は「職場の一体感がなくなる」「メンバーの異変などに気付きにくくなる」「誤解や勘違いを避ける」などコミュニケーションの負担を理由にあげている(Q5‐2)。

「賛成しない」と回答された方に伺います。あてはまるものを、すべて選んでください。

自由回答を見ても「雑談ができない」「立ち話で些細な質問ができない」「話す人がいなくて気分転換ができにくい」などの声が多く、「仕事とプライベートの境目がわからなくなる」「メリハリがない」など公私の切り分けに苦労しているようだ。

なおマネジメント層(管理職)からは、「在宅勤務などで社員の動きが見えにくくなるため、評価が難しい」(男性35~39歳・商社)という声があった。

■子育て世代の「柔軟な働き方」を実現

子育て世帯の場合、在宅勤務の影響はどうだったのか。自由回答では以下のような声が寄せられている。

「夫婦で家にいる時間が増え、子育てについて協力体制ができた」(女性30~34歳・運輸)
「以前は仕事を優先して家事を週末にため込んでいたので、在宅勤務により隙間時間に家事をこなして生活の質が上がった。子供の教育もタイムリーにサポートできているので、仕事か生活かと二択で考えなくて済むようになった」(女性40歳以上・製造)
「家族と一緒に食事を取ることができるようになり、子供の寝かしつけが終わった後、また仕事に戻るという、これまではできなかった柔軟な働き方ができるようになった」(男性35~39歳・製造)

■オンラインでコミュニケーションを促進させる

大多数の人が在宅勤務を指示しているが、今後、定着していくのだろうか。

アンケート結果を見ると、8割以上が「制度に課題・支障がある」と回答している(Q7)。これまで見てきた通り、在宅勤務の導入に立ちはだかる「インフラ」「ハンコ」「意識」という3つの壁についての回答が多かった(Q7‐1、Q7‐1‐1)。

「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク」制度を利用している方に伺います。制度に課題・支障はありますか?

その課題に対して、すでにリモート会議のノウハウを学ぶ、業務報告やコミュニケーションの仕方を変えるなどの対応をはじめている人もいる(Q8)。

「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク」制度を利用している方に伺います。ご自身で工夫したところはありますか?

自由回答には「営業職であるが、書類は全てクラウド上で管理」(金融保険 男性25~29歳)、「毎日オンラインで朝礼と夕礼を行い、チームメンバー間でコミュニケーションを取ることで、疎外感がなくなった」(製造 女性40歳以上)、「ZOOM飲み会をやってみた。仕事から離れるが、関係性の円滑化には使えそうな気がする」(男性40歳以上・情報通信)などさまざまな工夫が見られた。

課題を残す一方で、9割以上が在宅勤務により仕事や生活に変化を感じている(Q9)。上位2つは「職場でしかできない業務の中に、自宅でもできることがあると気づいた」「配偶者・家族とのコミュニケーションが増えた」というポジティブな変化であるものの、「困ったときに気軽に相談しにくくなった」「孤立感を感じるようになった」などのネガティブ要素を回答する人も多かった(Q9‐1)。

「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク」制度を利用している方に伺います。仕事や生活に変化はありましたか?

■「制度定着」に向けた契機と捉え直す

いろいろと課題はあるが、在宅勤務の定着を望む人は95.4%と圧倒的だ(Q10)。また在宅勤務実施で感じた変化を踏まえた上で、ムダな社内会議や打ち合わせの抑制、フレックス制度の導入や時差通勤の徹底など、さらなる「働き方」の変革を求める声も多かった(Q11)。

「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク」について今後、制度がより定着し、一般化されることをのぞみますか?
 
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今回の調査結果を受けて、ONE JAPANは「これを契機に企業活動を『改革』する方向に舵を切るべきだ」というメッセージを出している。

「今回、大規模に実施された『在宅勤務』は、制度をはじめて利用した人が4割を超えることから、この短期間で劇的に普及したといっても過言ではありません。『働き方改革』という言葉が強く叫ばれて数年。理念や概念こそ浸透しても、なかなか実行、実現に踏み切れなかったことが新型コロナウイルスの感染拡大という危機的状況への対応によって導入されました。このことを企業は緊急対応の一時的なしのぎ策ととらえるのではなく『制度定着』に向けた契機ととらえ直し、文字通り、企業活動を『改革』する方向に舵を切るべきだと考えます」

すでに在宅勤務をはじめている大企業から「改革」が進めば、日本全体の働き方も変わっていくだろう。今後の展開を注視したい。

(プレジデントオンライン編集部 データ提供=ONE  JAPAN)

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