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「コロナ連休」でも親子が煮詰まらずに過ごせる3つの方法

プレジデントオンライン / 2020年4月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anurakpong

新型コロナウイルス感染拡大を受け、5月の大型連休も外出自粛となった。だが、ストレスをためてしまえば子育てに深刻な悪影響が及ぶ。どうしたらいいのか。東洋大学の高山静子教授(教育学・子ども環境学)に「親子が煮詰まらずに過ごすための3つの方法」を聞いた——。

■小さな子を持つ親たちが悲鳴をあげている

4月7日に発令された緊急事態宣言により、該当する自治体の保育園や学童保育が「原則休園」や「保護者が休めない職業である場合のみ預かる」などの対応に変わった。その直後から筆者のSNSには、小さな子供を持つ親たちの悲痛な叫びが次々に届いた。

「テレワークするっていっても、2歳と5歳が家にいて、まともに仕事できない」
「体力があり余った2歳児、家の中でどうやってエネルギー発散させたらいい?」
「休校の小学生に加えて、3歳児も……。仕事が進む気がしない」

3月から始まった休校措置では、一人で留守番させるには心配な小学校低学年の子供がいる共働き家庭で戸惑いの声が上がったが、学童保育が受け皿になってくれた。また、一部の自治体では小学校での預かりも行われ、なんとかしのぐことができた。しかし、今回は学童にも、そして、未就学児のいる家庭は保育園にも頼ることができなくなった。

小学生なら、まだなんとかなるのだ。学校から出された宿題をしたり、読書したり、ゲームしたり、それなりに自分で時間を過ごしてくれる。だが、乳幼児はそうはいかない。目が離せないし、こちらの事情に忖度(そんたく)してくれる年齢ではない。「これから(オンラインで)会議だから、書斎には入らないでね」と頼んでも、2分後には書斎に乱入し、嬉々として会議に参加しようとすることもある。

■「家庭に閉じ込められた子供たちは家庭内暴力の被害者に」

仕事はあきらめて遊び相手をしようにも、外出自粛の要請が出ている中で、遊ぶ方法は限られる。本当なら公園で友達と遊んでいるのを見守りつつ、ママ友とおしゃべりに興じたいところだが、今はそれもはばかられる。

ストレスをためないようにといっても無理な話で、普段なら笑って許せる場面で子供にきつく当たるケースや、つい手を上げてしまうケースもあるだろう。実際、新型コロナウイルスの対策で外出自粛が叫ばれる中、ユニセフ(国際児童基金)は「家庭でのストレスレベルも上昇し、家庭に閉じ込められた子供たちは家庭内暴力や虐待の被害者やその目撃者になるでしょう」(4月15日発表)と警鐘を鳴らしている。これとは別に、ユニセフは世界保健機関(WHO)と「児童虐待の危険性が高まっている」との共同声明も出している。

そこで、外出自粛のいま、小さな子供を持つ親が煮詰まらずに過ごす知恵はないか、保育の専門家である東洋大学の高山静子教授に聞いた。

■作戦その1:子供がやりたい放題できるスペースを確保しよう

在宅で仕事をする親にとって何よりもありがたいのは、子供が「一人遊び」に没頭してくれることだ。高山教授はまず、外出自粛期間限定で室内に「やりたい放題できるキッズスペース」を用意するといいという。たとえば、親がリビングのダイニングテーブルで仕事をするなら、ソファ周りの一角は子供に明け渡そう。

「マンションなら振動吸収マットなどを敷き詰めて、おもちゃ箱を置いて、子供の遊びコーナーをつくりましょう。ここだけは片付けの“治外法権”にして、どんなに散らかっても気にしないようにしてください。とくに1、2歳の子供は、物を持ち歩いて“巣”をつくるのが遊びなので、家中のものが移動して散らかっても仕方ないとあきらめましょう」

父と息子が一緒に積み木遊び
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

おもちゃ選びにもコツがある。キャラクターもののおもちゃの多くは遊び方が限られているため、子供は、最初は食いついても、すぐに飽きてしまうこともある。

「子供は、手を使うもの、試行錯誤できるものだと長く遊ぶ傾向があります。積み木やブロック、粘土など、遊び方の自由度が高いおもちゃを用意してあげましょう。いろいろ用意して、遊ばないようなら手を替え、品を替え、お子さんが夢中になるものを探してあげてください」

■子供が集中して一人遊びをするヒントになる「モンテッソーリ教育」

なぜ子供は、「手を使う」おもちゃだと長く遊ぶのか。

それによって指が上手に使えるようになったり、発見したりするからだという。子供には本能的に「成長したい」という強い欲求があり、それを満たしてくれる活動に没頭する。

たとえば、お座りできるようになった赤ちゃんはティッシュペーパーを夢中になって引っ張り出すことがあるが、これは指でつまんで引き出す動作を練習しているのだ。

子供の年齢や性格などによって適したおもちゃは異なるが、高山さんはその一案として「モンテッソーリ教育(※)の教具(おもちゃ)を与えてみるのもいい」と提案する。下記に示した販売サイト(※※)では、同教育のブロックやパズル、積み木、ひも通しで縫う練習をする道具といった指先を使うシンプルな教具が売られている。

※イタリア初の女性医師であるマリア・モンテッソーリ(1870-1952年)が子供の欲求や発達段階に合わせて、手を使えるおもちゃを開発。モンテッソーリは遊びのことを「お仕事」と捉え、子供が自分で選んだ「お仕事」を思う存分にさせる方法を教育として体系化。

筆者もモンテッソーリ教育を行う都内の幼稚園を取材したことがあるが、2歳、3歳の幼い子供が長い時間、集中してひたむきに「お仕事」に取り組む姿には感動した。この姿が、外出自粛中の家庭で再現されたら、在宅ワークや大型連休中の親の「救い」となるに違いない。

「モンテッソーリ教育の教具は、しっかりと作りこまれているため、金額は安くありません。なので、手作りしてみるのも手です。100円均一の商品などを組み合わせて手作りできます」

※※高山教授おすすめのモンテッソーリ教育に関するサイト・書籍
☆学研 保育用品Webカタログ
☆Montehippo
☆モンテママのたからもの
☆相良敦子『モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」』(文春文庫)
年齢にあわせた手作りおもちゃが紹介されている。Amazonのプライム会員なら、kindle版が無料で読める。ほかにも書籍や個人のブログなどに、モンテッソーリ教具に倣った手作りおもちゃが紹介されているのでチェックしてほしい。

なお、モンテッソーリ教育では、数多くの天才が輩出されている。近年ではアマゾンの創立者ジェフ・ベゾス、グーグルの共同創立者セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、ウィキペディア創設者ジミー・ウェールズなど、時代の寵児が名を連ねる。15歳でプロ棋士となった藤井聡太さんも幼稚園時代にこの教育を受けている。

■子供に「家事」のスキルを伝授してエネルギー発散させよう

高山教授は、子供は大人がやる家事にも興味津々なので、お手伝いをさせることも子供の「エネルギー消費」には有効だという。

「この機会に掃除・洗濯・皿洗い・料理などできる範囲で教えてみてはいかがでしょう。最初は手間に感じても、一つひとつ丁寧に説明しながらお手本を見せてあげると、子供は一生懸命に観察して自分でもやろうとします。自分でやり出したら、大人は必要以上に手を出さずに子供に任せましょう。あっと言う間に習熟して、家事の貴重な戦力になってくれるはずです」

ちなみに、前出モンテッソーリでは、子供が扱いやすいサイズのホウキやお盆、包丁などを日常生活の教具として与えている。使い方のお手本を見せて、子供がやり出したら、大人は下がってそっと見守ることがポイントだ。

■作戦その2 意識的に「運動する時間」をつくってエネルギーを発散

犬は毎日のお散歩が不可欠だ。これと同じことが、人間の子供にも言える。

「人間の子供は、犬よりもずっと多様な運動を欲していて、運動が不足するとグズったり、キーキー叫んだり、聞き分けのない子供になってしまうことがあります。そうなると親御さんも制御ができなくなってしまう危険性が高まるので、毎日、意識して運動する時間をつくりましょう」

冒頭で触れたように、リビングのソファ周りに振動吸収マットを敷いたキッズスペースをつくったら、ソファの上でダンスしたり、ジャンプしたり、思いっきり体を動かせるようにしてあげよう。布団の下に敷くマットがある家庭は、それを敷きっぱなしにして、そこで運動させると全身運動ができる。筆者宅も、この外出自粛の期間限定で布団を敷きっぱなしにしたところ、子供たちはこれ幸いとレスリングや相撲、ドッジボールをしている。いささか騒々しいが、目をつぶっている。

ベッドの上で飛び跳ねるきょうだい
写真=iStock.com/xavierarnau
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xavierarnau

家で行う運動は、ユーチューブを頼ろう。

「テレビの子供向け番組の体操では、運動量が少なめです。オススメはケロポンズの『エビカニクス』やDA PUMPの『U.S.A.』といった運動量の大きいダンスをまねして踊ってみること。どちらもユーチューブを検索すればすぐに出てきます。親子で一緒に体幹トレーニングしたりするのもいい。楽しめる運動をいろいろ探してみてください」

また、外出自粛要請中の今も「3密」にならなければ、外でジョギングしたり、散歩したりすることは推奨されている。

「子供の場合は、遊具を触って感染する危険性があるので、そこは親が注意します。遊具を触ったあとは、すぐに手を洗いましょう。ベストなのは遊具のない広場を選ぶことです。また、ストライダー(ペダルなし自転車)に乗せてお出かけすると、両手はずっとハンドルを握っているので、いろんな物を触ることを防げます。家にずっとこもっているとストレスがたまってしまうので、注意しながら外遊びをさせてあげましょう」

■テレビ視聴、スマホ、タブレットの使用は控えめに

「運動メニュー」を探すのにユーチューブ動画は便利だが、「テレビやユーチューブ動画の長時間の視聴は避けてほしい」と高山さんは言う。

「3歳未満の子供の長時間の映像視聴は、脳自体を変えてしまう可能性があるので、専門家としては絶対に勧めることができません。とくに子供は、テレビを眺めて受動的に過ごす時間が長くなると、自分で主体的に遊べない子供になってしまいます。テレビを切った途端に親へ『遊んで遊んで』とまとわりつく子供になるので、あとが大変です。なるべくテレビやスマホに頼らない子育てを心がけましょう」

見せるなら、なるべく短時間にすること。見た後には、体を動かして、脳と目を回復させることが必要だとアドバイスする。

母と息子が一緒にタブレットを使用している
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

「もし視聴させる場合も、子供向けの料理番組や工作番組、体操番組など、見た後に実践したくなるようなものを選びましょう。また、主人公の話す言葉のバリエーションが豊かなアニメや、言葉がわからないため推測が必要な英語のアニメなどもおすすめです」

■作戦その3 親自身が気の持ち方を変える

親自身が考え方を変えることで、子供のケアがラクになることもある。

「今は非常事態なので、部屋をキレイに片付けないといけないと考えなくてもいい。いつも通りにできなくてもいい、と自分を許してあげましょう」

部屋を散らかされたら、「子供は手をしっかり使った」「脳が育った」と考える。兄弟ゲンカしている時も、「人間関係について学んでいる」と考えよう、と高山教授は提案する。

「子供がおとなしく静かにニコニコしていてほしいというのは、大人の欲求ですが、それでは子供は育ちません。心と体を目いっぱい使っている時、家の中は嵐のようになるかもしれませんが、子供は確かに成長しています。お父さん、お母さんは、そんな好奇心旺盛なお子さんを育てたことに誇りを持ってください」

■ストレスを味方につけよう

現状、新型コロナウイルスのワクチンも薬もないので、感染したら、自己免疫で治すしかない。だからこそ、高山教授は、「規則正しい生活を心がけ、栄養たっぷりの食事をおいしく食べて、子供とたくさんストレスと上手に付き合おう。栄養素はビタミンCを多めに」という。

「ストレスを感じると、それに対処するために愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシン(※)が分泌されます。それが分泌されることによって、『誰かに支えてほしい』『愛する人にそばにいてほしい』という感情がわくことがわかっています。考え方によっては、ストレスは家族の絆を強めてくれる作用もあるということです」

※下垂体後葉から放出されるホルモン。オキシトシンが分泌されると、母性的な行動の促進、不安減少、好奇心の高まり、痛みの感覚の減少など、情緒の安定と心を癒やす働きがあることがわかっている。

さらに、オキシトシンは人に思いやりを示すことでも分泌されるという(※※)。つまり、わが子をうんとかわいがったり、新型コロナウイルスの影響で売上が落ちて困っている生産者の方からオンラインで商品を買ったり、電話で友人を励ましたりといった行動をすることでも、自分自身が幸せを感じ、心の健康を保つことにもつながるのだ。

※※参考動画 ストレスと友達になる方法 ケリー・マクゴニカル

「今は大変ですが、こんなに子供と長く一緒に過ごす機会は後にも先にもないかもしれません。10年後に、あの非常事態はいい経験になった、子供と一生の中で最も濃厚な時間を過ごした、たくさんの思い出を作ることができたと思えるようになるといいですね。みんなで頑張りましょう」

(プレジデントFamily編集部 森下 和海)

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