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ただのオタクから「プロの評論家」にクラスチェンジするブログの書き方

プレジデントオンライン / 2020年5月11日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tolgart

好きなことを仕事にするには、どうすればいいのか。ゲームジャーナリストのJini氏は、「ゲームをブログで熱く語り続けることで、TBSラジオにも呼ばれるようになった。好きなものの魅力を言語化できると、信頼を得られる」という——。

※本稿は、Jini『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■コロナ禍で次々見えたネットの悪しき側面

2020年2月、日本全国の店頭からトイレットペーパーが消えました。

原因は、SNSで流行したデマ。COVID-19、通称新型コロナウイルスの蔓延で、日本は未知のウイルスに対する恐怖に支配されていたのです。

特に、予防に有効とされたマスクやアルコール消毒液が次々に買い占められ、オークションサイト・アプリ等で高額で転売されました。それもあってか、TwitterやFacebookなどのSNSで「次はトイレットペーパーやナプキンが消える」と誰かがいい始めました。

むろん、これらはなんの根拠もないデマであり、経済産業省や業界団体が否定したにもかかわらず、買い占めは止まりませんでした。今まさに紙類を必要とする人たちは、寒空の下、かろうじて在庫があるスーパーで行列を作ったのです。

人々が自由に発信し、共有できる今の情報社会は、確かに人の生活を豊かにしました。しかし私たちは同時に、その豊かさの代償を思い知りました。2011年3月の東日本大震災でも、数々のデマによって被災の混乱は何倍にも攪拌(かくはん)され、悪質なデマの中には、特定の人種や性への差別を誘導するようなものさえありました。

■ソーシャルメディアが増幅する「悪」

SNSにおけるヘイトを煽(あお)るデマは日本だけの問題ではありません。2018年にはメキシコのある街で「子供を誘拐し、臓器を売りさばいた」というデマを信じた群衆により、2人の男性が民衆に殺害され、同じようなフェイクニュースによる民衆の私刑は、インドのアッサムやバングラデシュのダッカでも確認されています。

Jini『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』(KADOKAWA)
Jini『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』(KADOKAWA)

さらに、イギリスの選挙コンサルティング企業、ケンブリッジ・アナリティカは、SNSから得た個人情報をもとに有権者たちの心理に作用するプロパガンダ的な広告を作成。当初不可能に思えたドナルド・トランプの大統領選当選に寄与したとされ、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグが米議会の公聴会で謝罪する騒動にまで発展しました。

インターネットやソーシャルメディアを「夢の技術」と信じる人は既に少数派でしょう。

人の脆弱(ぜいじゃく)性に付け込み、無から憎悪や憤怒を生みかき立てる。ありもしない「月給を100倍にする方法」を売り込む。利用者の声と偽って、企業が雇ったサクラにレビューを書かせる。自分が登録した個人情報を不正利用する企業が、選挙の結果にまで影響を及ぼす——。

日常的にスマートフォンでユビキタスにつながる私たちでさえ、この極めて強大な技術が、純粋な善意や良心だけで作られていないことに気付いていることと思います。

■個人が「これが好き!」と語ることの威力が増している

しかし、インターネットと共に生まれ育ったデジタルネイティブ世代として、今急激に高まりつつあるネットへの悲観に対し、私はNOといいたい。確かに現状は課題が山積みです。間違った情報、ヘイトを煽る発信、直接的・間接的なハラスメントが満ちています。

それでも、誰もが発信できるネットなら、私たち自ら発信することで、この現状を変えることができるはず。ネットに対する落胆が反動として生まれ始めた2020年代だからこそ、改めて、私たちがネットをどう使うべきか考えてみたいと思います。

そして、私なりに考えたその答えが、「推し」です。推しとは、何かが好きだと発信することを指すネットスラング。私は○○推しだと発信することで、周囲に○○の魅力や価値を伝えることができます。推すものは、なんだっていいんです。

好きな映画、尊敬するタレント、いつも聴いているラジオ、行きつけの居酒屋……なんでも、SNSで「これが好きだ」と発信する。そしてただ発信するだけでなく、周囲に自分の推しに興味を持ってもらい、それを広めていく。

実は、任天堂もワークマンもタピオカミルクティーも、誰かがSNSで推したことで売れました。推しは自己満足に留まらず、自分が好きな、しかし市場的には売れていないものを皆に知らしめ、同じ感動を知ってもらうことさえできるのです。

■「推し」を他者に伝えられる人間は強い

私は2014年からブログで好きなビデオゲームを推し続け、そのブログが2500万回も読まれたことで、「あなたの推しを話してほしい」という依頼を民放ラジオや大手メディアからいただいています。自分が好きなものについて、客観的にどう素晴らしくて、何がそんなに人を惹き付けるのか説明する技術を売るだけで、食べていくこともできています。

国民の80%がスマートフォンを持つ現代、ネットの普及と同時にその限界も露呈してきました。でも、そんなヘイトやデマの蔓延する今だからこそ、私たちはネットで人とつながり、「好き」を積極的に共有できれば、それはとてもヘルシーなことだと思うのです。

何より、「好き」ほど生産的な情報はありません。

情報が溢れる現代だからこそ、本当に自分にとって必要なものを、他者に伝わる言葉で語れる人間、つまり「推せる人間」は強いのです。

YouTube、Twitter、Facebook、日常生活でさえ、推しの技術は役に立ちます。自分の推しを的確に言語化し、客観的にわかりやすく伝えられる人間は、どこでも唯一無二の情報源(ソース)として信頼されるからです。

■「3年目までに累計1000万PV」と目標を立てた

私が、大好きなゲームを論じるために作ったブログ「ゲーマー日日新聞」ですが、初期はとにかく苦戦の連続でした。なんといっても、まず誰も読んでくれないのです。

ブログを作った2014年当時、既にブログブームという言葉は古いものになりつつあり、YouTubeで動画を投稿するYouTuberやSNSで活動するインフルエンサーと呼ばれる存在のほうが注目を浴びていた時代。今さら、なんの肩書もない素人のブログを読んでくれる人はほとんどいません。

そこでまず、私は明確な目標を立てました。それは「自分が好きなゲームを推し、それを周囲の人に知ってもらう」こと。さらに具体的な目標として、3年目までに累計1000万回読まれるということ。そもそも目標もなく始めたから進むべき道がわかっていなかったことを反省し、ゲームを推すという緩やかな目標と、1000万回は読んでもらうという具体的な目標の二つを同時に立て、これを達成するために工夫をこらしました。

その工夫というのは、主に「アツく、冷静に」「複雑に、わかりやすく」「好きだからこそ、忖度(そんたく)なく」推しの魅力を伝えるということ。一見矛盾しているようですが、実はすべて説得力のある推しに必要なものです。

■自分がやったことは実は誰にでもできる

目標と工夫を明確にした私は、ほぼ週に1本、多い時で日に1本記事を投稿。それが着々とTwitterやはてなブックマークなどのSNSで話題になりました。そして4年で目標の2倍である2000万PVを突破した上、TBSラジオに出演したり、各地のメディアから寄稿の依頼を受けたりするなど、たった数年で、恐らくゲームを綴るブロガーの中で、私は最も有名なブロガーの1人に仲間入りできたのです。

ただゲームが好きなオタクが暑苦しくゲームを語っているだけでこれだけ活動の場を広げさせていただいた、というのは我ながら数奇な人生を歩んでいるなと思いますが、正直にいうとこれ、誰でもできます。

■「推せる人」が必要とされている

具体的な才能も、本格的な訓練も積まなかった私が、この短期間でここまで来られたという事実は、「推せる人」がどれほど現代で必要とされているかの証左でしょう。

だからこそ、みなさんにも、自分の好きなモノ・ヒト・コトを全力で推してほしいのです。

嫌いなものより、好きなものを。ムカつく奴より、かっこいい奴の話をしてほしいのです。

あなたの好きな何かを推し、誰かがそれに共感する。誰かが推した何かに、あなたが共鳴する。そうして私たちの「いいね!」でネットを埋め尽くすことこそが、露呈したインターネットの限界を打破することになると、私は信じています。

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Jini(じに)
作家、ゲームジャーナリスト
noteにて日本初となる独立型ペアウォールゲームメディア「ゲームゼミ」を主宰。1500人もの購読者を抱える。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」準レギュラーのほか、ラジオ、テレビ、雑誌でも活動する。

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(作家、ゲームジャーナリスト Jini)

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