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「銃殺してしまえ」…コロナ禍の中国で深刻な黒人差別が始まった

プレジデントオンライン / 2020年5月8日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Naeblys

■中国・広州市を中心に、アフリカ系住人と中国人の間で軋轢

湖北省武漢市の保健当局の発表によると、4月26日に市内のコロナウイルスによる入院患者がゼロになったという。かの国の政府発表やメディアにどこまで信用性があるかはさておき、中国社会は危機的な状況から脱しつつありそうだ。だがこうしたなか、中国南部の広東省広州市(北京、上海に並ぶ中国三大都市の一つ)を中心に、アフリカ系住人と中国人の間で軋轢が生まれている。

発端は、不良外国人の問題行動がきっかけだったと見られる。3月22日、ホテル内の隔離施設に移送された外国籍の男が、スタッフの目を盗んで逃走。地元政府から出国命令の処罰を受けた。また、4月1日にはコロナに感染したナイジェリア人の男が、広州市の病院内で看護師の指示に従わず噛みつくという事件が発生した。

看護師への暴行事件は、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」などで拡散。まぶたが腫れ、出血した女性の画像とともに、こんな書き込みがあった。

「広州市のICU看護師がコロナに感染したナイジェリア国籍の男に殴られた上にまぶたを噛まれ、怪我を負った。その男は3月21日にナイジェリアから広州の空港に到着し、29日に検査の結果コロナウイルス陽性と診断され、31日に感染が確定していた」

■「こんなことをするヤツらは、銃殺してしまえばいい」

「こんなことをするヤツらは、強制送還にするより、銃殺してしまえばいい。無料で治療してやった結果がこれかよ」

4月6日には、ネット上で「広州の黒人コミュニティーが崩壊 中国人にも感染者」「2名の子どもが感染」「黒人の多いエリアはロックダウンされたらしい」「黒人がウイルスを広めている。広州は第二の武漢になってしまうのか?」「広州には30万人の黒人が居住している」などの情報が錯綜。翌日には、地元当局が「そのような事実はない。デマである」と発表するに至った。

また4月上旬には、動画サイトで「隔離措置を受けたナイジェリア人がパスポートの提出を拒否。ナイジェリア大使館の職員が駆けつけて警察官からパスポートを奪い返し、自国民に返却した」とされる動画が拡散した。事実かどうかは明確ではないものの、動画にはアフリカ系男性が防護服をきた中国人(医療従事者か警察関係者と思われる)からパスポートらしきものを取り返すシーンが映されている。

これに対し、ネット上では不満の声が噴出。中国人男性歌手の楊暁川はクルマの運転席にて自撮りで動画撮影を行い、次のような主張を展開した。男性歌手はアメリカ在住で、流暢な英語を織り交ぜてとうとうと語った。

■アメリカ在住中国人歌手「差別がイヤなら母国に帰れ」

「最近YouTubeで非常にムカつく動画を見つけました。ナイジェリア人の領事館職員が路上で中国の警察関係者に対して罵声を浴びせていたんです。『広州に住むナイジェリア人の生活が脅かされた』というんです。はじめに言っておきますが、私はアフリカ人に対して何の差別もないし、アフリカ系アメリカ人とアフリカ人が違うということも知っています。私は20年間アメリカで生活し、黒人とともに成長するなかで、彼らの血はやはり似ていると感じます。海外に住む華僑と中国人はやはりどこか似ているのと同じかもしれません。

(90年代の)改革開放初期に中国に来た黒人たちは電子機器や衣類などの貿易を行っていましたが、広州の地元の人々の優しさを知ったのでしょう。黒人好きでエッチが好きな地元の女性たちもいるし、治安も良いので居住を続けることになりました。それから20年以上がたち、子供も産まれている。ただ、彼らの70%はオーバーステイだと言われている。あなたたちは一体いくら税金を納めているのか。われわれはなぜあなたたちに収容施設や食事を提供せねばならないのか? 中国人がいまだ苦しんでいるときに、なぜあなたたちの面倒を見ないといけないのか?

広州で20年の生活をして、文化面あるいは経済面で、あなたたちは何か貢献をしたのか? 広州の人たちはあなたたちを愛しているというのに。この困難な時期に、中国のために何か貢献をしたのか?

■「オレの○○は中国人のよりでかい。だから怖いものなんてない」

街中で大声をあげるなら、アメリカに来てこっちの警察のやり方を見てみろ。中国の警察はあなたたちに非常に良い対応をしている。世界中どこにでも差別というのはあるものだが、差別だとか制度がおかしいとか、不公平とか思うなら、自分の国に帰ればいいんだよ。誰もあんたらに中国にいてくれとは頼んでいない。『オレの○○は中国人のよりでかい。だから怖いものなんてない』『お前の女を奪ってオレの虜にしてやる。中国人はホラ吹きばかりだから、広州の女はオレのカッコよさにすぐ惚れる』『オレたちのデカくて立派なぶっといアレを見せたら、女たちはもうやめられなくなるんだ』。こんな話を聞かせろとは頼んでいない。

仮にナイジェリア人が中国で罪を犯せば、中国人と同じように処罰されるべきであり、言い逃れは一切できない。世界中で隔離が進むなか、広州の警察官があなたたちに帰国を命令するのであれば、それはあなた自身の安全のためだし、中国人の安全のためだ。自分たちが中国人よりも一段高いところにいるとは思わないでくれ。あなたたちは他人の場所にいるんです。オレは今アメリカに住んでいるが、社会的地位は黒人より低い。あなたたちもそういう現実を直視してほしい。中国人というのは非常に謙虚で優しく、おもてなしの精神がある。だから挑発するようなマネはやめろ。外国人に対する永住権を認める条例を支持するかどうかと聞かれたら、その答えはまた今度話そう」

■マクドナルドは「黒人お断り」

男性歌手は最後に吐き捨てるように「Peace&Love!」と言い放ち、動画は終了した。発言の随所でレンズに向かって人差し指を突き出し、問い詰めるような口調で迫ってくる。ピースやラブはあまり感じられなかったが、中国の公的な隔離措置に従わないことに強く反発する意識が伝わってくる。また、アフリカ系=男性器がデカいというイメージは、中国にもあるらしい(偏見のような気もするが、筆者には実際どうなのかはよく分からない)。

こうした流れのなか、広州市内のマクドナルドでは4月中旬、「黒人は入店禁止」と英語で書かれた掲示物が貼られた。掲示物には「Notice(注意)」と標題があり、次のような文言が書かれていた。

「We've been informed that from now on black people are not allowed to enter the restaurant. For the sake of your health consciously notify the local police for medical isolation. Please understand the inconvenience caused.(黒人は入店お断りです。自身の健康を守るため、自発的に警察に申し出て隔離措置を取ってください。ご不便、ご理解ください。)」

■中国のアフリカ系差別はなぜ生まれたのか

米マクドナルド本社はこうした問題について謝罪し、中国外交部は「われわれはアフリカの兄弟を差別することはない」と発言。火消しを図っている。

筆者もかつて中国・上海で中国人と食事をした際、雑談をするなかでアフリカ系住人についてどう思うか話を聞く機会があった。そのとき目の前の中国人女性が「彼らは不潔で汚れている。黒すぎる」と臆面もなく語ったのを、はっきりと覚えている。明らかな差別発言だったが、平然と語る彼女の前に私は絶句してしまった。アフリカ系住人に対する中国人の差別意識は、日本人以上かもしれない。

広州で広がりつつあるアフリカ系住人への差別、あるいは中国人との軋轢は、なぜ生まれたのだろうか。これまでの経緯をざっと見てみると、事実とデマがごちゃ混ぜになり、人々の危機意識や恐怖感をベースに煽られるものだと言えそうだ。「差別意識はない」というのは、差別する側の常套句だろう。日本社会もギスギスした空気が続いているが、理性的な判断を心がけたいものである。

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西谷 格(にしたに・ただす)
フリーライター
1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。主な著書に『この手紙、とどけ! 106歳の日本人教師が88歳の台湾人生徒と再会するまで』『中国人は雑巾と布巾の区別ができない』『上海裏の歩き方』、訳書に『台湾レトロ建築案内』など。

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(フリーライター 西谷 格)

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