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休校中の子供を健全に生活させるため、オンライン授業推進より大切なこと2つ

プレジデントオンライン / 2020年5月13日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/AzmanL)

休校が長引いている。他の先進国ではオンライン授業に切り替えて教育を継続する中、日本はプリントを渡して終わり、という学校も多い。この2カ月、学校や教育委員会は何をしていたのだろうか。オンライン授業ができない理由と、できない場合にやるべきことの提案2つ。

■プリントを渡して、あとはよろしく!?

休校(臨時休業)が長引きそうだ。5月中の休校を決めた自治体も多いし、執筆時点の情報では、全国的な緊急事態宣言は5月いっぱいまで続いている(一部の地域は今後解除される可能性もある)。

保護者のかたも気がかりな毎日が続いていることだろう。ぼく自身も小学生から高校生まで4人の子育て中で、3月以降在宅勤務が続いているが、家事・育児をしながら、仕事をするのは、そんな簡単な話ではない。Zoom(ウェブ会議アプリ)で会議中に子どもが騒ぎ出すなど茶飯事だし、そのうえ、家庭学習を見ろなんて言われても……。

ぶっちゃけ申し上げると、給食だけでも早く再開してほしい! ぼくは料理好きだけど、それでも1日3食作り続けるとなると、しんどい。

子どもの部活動もないし、こんなに家族がそろって長く過ごせるのは過去に例がなく、貴重だなとは感じるが、親子関係や夫婦関係などがギクシャクしているところではストレスフルだろう(幸い、うちは今のところ大丈夫)。

■学校は何しているの?

さて、そうした中、「学校は何しているの?」という感想、印象をもたれている方も少なくないのではないか。新型コロナウイルスの感染防止は大事だし、安全・健康あっての学習だから、休校措置にすることは一定の理解はできる。

だが、問題はそのあとだ。宿題プリントやドリル・問題集を渡して、「ここまではゴールデンウィーク明けまでにやってくるように。あとでテストします」といった案内(指示?)だけという学校もあるのではないだろうか。

■同時・双方向型オンライン指導を行う教育委員会は5%

学校種(小学校なのか、中学、高校なのかなど)によってもちがうだろうし、様々ではあるが、みなさんの周りの状況はいかがだろうか。文部科学省の調査によると、4月16日時点での休校中の取り組みとして、同時・双方向型のオンライン指導を行っている教育委員会は5%であった(図表1)。これは新聞などでも報道されたが、あまりにも消極的ではないか、と思われた方が多いと思う。

臨時休業中の家庭学習に関連する取り組みについて

データで確認できているわけではないので、断定はできないが、私立学校や大学、あるいは学習塾のほうがオンライン対応の動きは早い印象をもつ。「授業料を返還せよ」と言われかねないし、真剣だ。これに対して「公立学校、教育委員会はなんで、鈍いんだ、遅いんだ」とムカムカしている保護者も少なくないと思う。

■「全員に同じようにできないから、やらない」という発想

これには、いくつか理由、背景はあるのだが、教育委員会や学校に広く信仰されている「平等重視」もおそらく大きい。「ウェブを活用するものは、家庭にパソコン、スマホやネット環境がない子たちができないので、不平等になる。だからやらない」という理屈である。

たしかに、家庭の状況への配慮はとても重要だ。だが、そう言っている教育委員会等のうち、果たして何パーセントが、学校や図書館等のパソコンやネット環境をそういう子どもたちに開放しただろうか。自治体によってはポケットWi‐Fiを貸し出したところまであるが、管見の限りごく少数だ。

平等が大事だからといって、立ち止まっていては、進ちょくはゼロである。結局、家庭任せになると、家庭の経済状況や教育熱心さで格差が広がり、結果としては、もっと不平等になる。

公立学校であれば、なおさら、自宅で学ぶ環境がなかなか整わない子への支援を手厚く進めるべきだ。それは、パソコンやネット環境だけの問題ではなく、家が落ち着かない状態でとても勉強にならない家庭とか、保護者と子どもとの関係が悪いケースなどについても言える。

ついでに申し上げると、給食についても、せっかく施設・設備はあるのだから、テイクアウト販売をやってみてはどうか。感染拡大地域で職員が出勤するリスクが高いところは難しい話だが、そうではない地域では十分に検討できる話かと思う。これは子どもの貧困への支援という意味合いではなく、すべての児童生徒の家庭に対してしてほしい。お母さん、お父さんたちにとって、お昼ご飯の手間だけでも緩和されると、ずいぶんストレス緩和になるのではないだろうか?

■プリントもオンライン教材も「やらない子はやらない」問題

いま一番心配なのは、子どもたちのつながりが薄くなっていることだ。子ども同士のつながり、また児童生徒と先生たちとのつながりのこと。友達とも遊べない、家でずっとゲームしている。親もコロナ疲れや仕事のこともあって、イライラしている。担任の先生は発表されたけど、すぐ休校になったから話したこともない。

教育委員会や学校がまず向き合うべき問題は、子どもたちの孤立である。プリント渡してお終いではダメだ。

いま、巷にはたくさんの教材や授業動画がアップされてきている。“オンライン授業”という言葉で、メディアも煽りぎみな風潮が一部にある。だが、いくらコンテンツと環境(ネット環境等)があっても、一番の問題は、子どもたちの学習意欲や好奇心があるかどうか、高まるだろうかという点ではないだろうか。

要するに、プリントをたくさん学校からもらった。ネット上もたくさん動画等はある。ネットじゃなくても優れた参考書もいっぱいある。でも、やらない子は、やらない。オンラインかオンラインじゃないかの問題ではないのだ。

■オンライン授業よりもまずすべきこと

子どもたちの学習意欲は、おそらく、つながりの希薄化が大きく影響する。先生からの励ましやフィードバックがほとんどない。周りの友達もどうしているかわからない。だから、なかなかやる気が出ない、続かない、あるいは宿題の答えを丸写しするだけ、といった子も少なくないだろう。

個々の先生たちが時間とエネルギーを最も割くべきことのひとつは、ここ、動機付けとフィードバックだと、ぼくは考えている。

授業動画は、ほかのうまい人やサービスにやってもらってもいい(もちろん、よく見知った先生のほうが興味がわくという子もいるから、教師が独自動画などを作ること自体がムダとは言わない)。だが、学習意欲等が低い子のモチベーションを上げるのは、たぶん今のところの科学技術、AIや既存サービスだけでは難しい。顔の見える、信頼のできる人でないと、効果は薄い。とりわけ、家庭がしんどい子なら、なおさらである。

具体的には、ZoomやTeamsなどを活用して、やるべきは授業よりも先に、先生との雑談や児童生徒同士のちょっとした交流のほうだ。朝の会や2者面談(生徒と教師)をオンラインで進めたい。ネット環境等のない子には支援策を講じてほしいが、整備されるまでの間は、別の手段(電話、家庭訪問等)でフォローアップしていきたい。

保護者も、そういう意味で、まずはつながりをつくっていくことを学校や教育委員会に求めていってはいかがだろうか。保護者に言われてやっと動くような教育委員会等ではいけないとは思うが、よかったら、この記事を送り付けることから始めていただいても結構だ。

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妹尾 昌俊(せのお・まさとし)
教育研究家、学校業務改善アドバイザー
徳島県出身。京都大学大学院修了後、野村総合研究所を経て、2016年から独立。全国各地の教育現場を取材し、講演・研修、コンサルティングを行っている。中央教育審議会委員、スポーツ庁、文化庁において部活動のあり方を検討する委員等も務めた。主な著書に『教師崩壊』(近刊)、『こうすれば、学校は変わる!「忙しいのは当たり前」への挑戦』、『学校をおもしろくする思考法―卓越した企業の失敗と成功に学ぶ』、『変わる学校、変わらない学校』など多数。高1、中2、小6、小3の4人の子育て中。

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(教育研究家、学校業務改善アドバイザー 妹尾 昌俊 写真=iStock.com)

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