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「五輪やるべし」だった小池知事を「コロナ対応が早い」と評価する都民のナゾ

プレジデントオンライン / 2020年5月6日 18時15分

5月5日、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の延長決定を受け、記者会見する東京都の小池百合子知事 - 写真=時事通信フォト

■全国民の心をつかんだ「ステイホーム週間」という言葉

いまや小池百合子東京都知事が、テレビや新聞に登場しない日はない。新型コロナウイルスの対応で連日、記者会見を開き、感染防止や最新情報を発信。その存在感は、安倍晋三首相をはるかに上回る。

2カ月後に迫った都知事選は、圧勝も予測されている。ただ、彼女は事実上の「信任投票」のような形で再選するほどの実績を積み上げているのだろうか。冷静に考えてみる必要がある。

ことしのゴールデン・ウイークは「ステイホーム週間」という言葉がすっかり定着した。元キャスターで、発進力のある小池氏が記者会見などで呼びかけた言葉だ。環境相時代はクールビズを導入。自ら広告塔となり定着させた。今回のコロナ対応でも小池氏は、東京都民だけでなく全国の心をつかみ「ステイホーム週間」を広めた。

4月7日、緊急事態宣言を発出する前後、商業施設などの休業要請をただちに行いたい都と、当面は外出自粛による効果を見定めたいとブレーキをかける国側が激しく対立した。小池氏は「(自分が)代表取締役社長だと思っていたら、中間管理職だった」と、国が横やりを入れてきたことを痛烈に批判。結局、休業要請は11日から行われることになったが、この対立について国民は、圧倒的に小池氏を支持した。

■都連とも手打ち、現状は圧勝モードだが…

都知事選に向けた構図を確認しておきたい。小池氏は進退を明言していないが、出馬するのは確実だ。

小池氏は、前回2016年の知事選では、自民党などが推す増田寛也元総務相を破って勝利。その後、小池氏と自民党都連の間では、長くしこりが残ったが、今年に入ってから党本部の二階俊博幹事長が間に入って「手打ち」し、自民党が小池氏を推す流れになっている

都連関係者の中には「『手打ち』は東京五輪の前に都政を混乱させるわけにはいかないという理屈での『休戦協定』だった。五輪が1年延期になった今、再び主戦論が台頭するかもしれない」という声もあるというが、五輪よりも重大なコロナ対応が続く中、小池氏と自民党が再びたもとを分かつことはないだろう。

■今後4年間、都政を預かる「適任者」といえるのか

野党側は統一候補擁立を模索している。れいわ新選組の山本太郎氏が有力候補として語られることも多いが、野党内には山本氏に対するアレルギーも少なくない。山本氏は4月30日の記者会見で、自らが出馬する可能性は排除しないものの、「(小池氏が)日常的にテレビ露出しているわけなので、緊急事態が続けば続くほど、圧勝のムードは盛り上がるだろう。対抗馬として立つのはなかなか難しい」と事実上の不出馬宣言をした。

前都知事の舛添要一氏がリベンジを目指しているという観測もある。舛添氏はコロナ対応をSNSやテレビ番組などで安倍政権や小池氏のコロナ対応を厳しく批判しているが、今の小池氏の勢いを止めるのは難しいのではないか。

無投票になることはないだろうが、事実上の信任投票のような形で小池氏が勝つ。これが永田町の見立て。現状を見る限り小池氏は再選に向けて死角がない。

だからといって、小池氏が今後4年間、都政を預かる適任者といえるわけではない。

■五輪延期を見届けてから、手のひら返しでコロナ対応へ

まず、コロナ対応。冒頭に記したように4月以降の彼女の立ち居振る舞いは目立っている。だから忘れられてしまいがちだが、その前の出足は鈍かった。

3月12日に小池氏は首相官邸で安倍首相と会談したが、東京五輪に関しては「中止という選択はないのではと思う」と述べていた。さらに3月19日の定例記者会見では「以前から申し上げているように、中止も無観客もありえない。開催都市として、いかにして安心安全な大会にできるか」と予定通りの日程、規模での開催を強調していた。

今回の感染拡大は3月20、21、22日の3連休で国民の自粛ムードが緩み、多くの人が街に出て「密」をつくったことが原因とされる。その3連休前、小池氏はほとんど発信をしていない。五輪問題で頭がいっぱいだったのだろう。

小池氏がコロナ問題で前面に出始めたのは3月25日。都民に対し、平日の自宅勤務や、不要不急の外出自粛の要請をした時だ。その前日の24日、東京五輪の1年延期が正式に決定している。五輪延期を見届けてから、手のひらを返したようにコロナ対応へ乗り出した形だ。

■山中伸弥教授「東京では検査数の実態がわからない」

本腰を入れ始めてからの対応も、問題はある。連日記者会見などで発信しているので情報公開が進んでいるような印象を受けるが、実際はそうではない。例えば日々のPCR検査数など基本的なデータがよくわからないこともある。

京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は自身のウェブサイトで「(都道府県別の実効再生産数・Rtを測定しようとしたが)東京では、新規感染者を見つけるための検査数の実態を知ることができなかったため、計算は断念しました」と記している。

感染拡大が始まってから小池氏同様、大阪府の吉村洋文知事が目立っているが、吉村氏が大阪府内の感染状況を積極的に公表している。これと比較すると東京都は心もとない。

国との連携の悪さも、しばしば指摘される。緊急事態宣言を出す前後の国との足並みの乱れは先ほど触れたが、その後も、国のコロナ対応の担当者、西村康稔経済再生担当相との「相性」は、明らかに悪い。

■4年前の都知事選で掲げた「7つのゼロ」はどうなったのか

都知事として4年間の仕事にも触れておきたい。小池氏は4年前の都知事選で「7つのゼロ」を掲げて戦った。待機児童ゼロ、介護離職ゼロ、残業ゼロ、都道電柱ゼロ、満員電車ゼロ、多摩格差ゼロ、ペット殺処分ゼロ。「ペット」などは成果をあげたが、多くの項目は十分な成果をあげていない。「満員電車」ゼロは、コロナの影響で期せずして今は、実現しているが、これは小池氏の功績でないことは、いうまでもない。

知事の4年間の実績とコロナ対応。都知事選では、この2つがきちんと検証される必要がある。再選に向けて「死角」はないが、その「資格」があるとは言いがたいのだ。

最後に1つ、流動的要素があることを指摘しておきたい。都知事選が予定通り7月5日に行われない可能性があるのだ。地方選の延期は法整備が必要だが、2011年、東日本大震災の後には被災地の地方選が延期になったこともある。コロナ禍が続けば都知事選も延期になるかもしれない。

そうなった場合、小池氏のコロナ対応が冷静に検証され、投票日のころは彼女に逆風が吹いている可能性がある。「再選」確実の空気は一変するかもしれない。

(永田町コンフィデンシャル)

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