休校中に「今日の学習スケジュール」を細かく決めてはいけない
プレジデントオンライン / 2020年5月13日 9時15分
■いきなり「自分から勉強する」のは無理
「早く勉強しなさい!」
「宿題は終わったの?」
「今日は算数と国語をやっておきなさいね」
なかなか自分から勉強を始めないわが子を見て、つい言ってしまうアレコレ。「自分から進んで勉強してくれたら、どんなにラクだろう……」と多くの親は思っていることだろう。そして、「今はまだ幼いから、私が声をかけないと始められない。でも、いずれ大きくなったら自分から勉強するようになるはず」と、期待を抱いている。
だが、親の指示がなければ動けない子が、ある日突然自分から勉強をするようになるという夢物語はそうそうない。なぜなら、自分から行動を起こせるようになるには、幼い頃からの積み重ねが不可欠だからだ。
■「ダンゴムシをじっと見つめる子」を褒める
小さい子供は好奇心の塊だ。自分の身の回りにあるさまざまなことに興味・関心を抱く。公園でダンゴムシを見つけたら、それを飽きることなくじーっと眺めていたり、小さな石を集めては延々と並べてみたり。何がおもしろいのか大人には分からないようなことに、子供は夢中になって取り組む。
だが、いつも時間に余裕があるわけではない。そんな姿を見てしびれを切らした親は、「早く行くわよ!」「いつまでやっているの?」と子供の好奇心を遮ってしまう。これが子供の自主性を奪うことになるとは気づいていない。
同じ場面でこう声かけをしたらどうだろう?
「よく見つけたね!」
「へぇ~、おもしろいことを考えたね!」
「わぁ、こんなに頑張ったんだね!」
このように、子供自身が率先してやっている行動を認め、褒めてあげると、子供は「積極的にやることはいいことなんだ」と実感し、自分で行動できるようになる。だから、子供が何か自分から始めたら、親はちょっと大げさでもいいくらいに褒めてあげてほしい。幼少期にこうした経験をたくさん積ませることが、自主性を育む。
■朝ごはんで聞く「今日は何をやる?」
自分から行動できる子にするには、幼い頃からの親の関わりが大切になる。とはいえ、何か特別なことをする必要はない。朝起きて、朝食を食べている時に、「今日何やりたい?」と聞くだけでいい。
はじめは「今日何やりたい?」と、子供にやりたいことを聞く。次第に「今日は何をやる?」に問いを変え、子供自身にやることを決めさせる。やることが増えてきたら、「今日は何をやるほうがいい?」と、子供自身に自分の行動を選択させる。ここで大事なのは「何をやるか」という中身ではない。「これをやる」と子供自身に決めさせることだ。
字が書けるようになったら、「今日やること」をメモする習慣をつけておくといいだろう。その際、やり残しがあっても、叱らないこと。「じゃあ、明日はどうしたらいいかな?」と問いを投げかけ、子供自身に考えさせる時間を渡してほしい。そうやって、失敗をくり返しながら、修正をし、子供は成長していく。
■親が何でも決めると、子供のやる気はなくなっていく
だが、多くの親はそれを待てない。「うちの子は幼いから」と思い込み、子供の行動にいちいち指示を出してしまう。
小学生になると、子供の日常に「勉強」が加わる。子供が幼いときはおおらかな気持ちで接することができたのに、なぜか「勉強」になると、厳しくなる親が多い。だが、自分から勉強する子にしたければ、子供の行動を待つことだ。子供には子供自身のやる気のタイミングがある。それを無視して先走り、「早く勉強しなさい!」と言われると、途端にやる気をなくしてしまう。こうしたことが続くと、子供は自分から行動しなくなる。そして、親がうるさいからと、仕方なく勉強をするようになる。
中学受験の勉強は4年生から始まり、入試本番まで3年間かけて準備を進めていく。私は中学受験専門のプロ家庭教師として、長年多くの子供たちの指導にあたってきたが、最近特に感じるのは、指示待ちの子供が増えていることだ。中学受験の勉強は、小学校で習う内容よりもはるかに難しく、また学習範囲も膨大だ。そのため、子供だけの力で勉強を進めていくのは正直難しい。そこで、親が学習スケジュールを管理するようになる。
「今日は算数と理科を勉強しなさい」
「明日は国語と社会をやること」
そうやって、親が何でも決めてしまうと、やがて子供は「今日は何をすればいい?」と指示を待つようになる。これでは、子供の自主性は育たない。
■中学受験からでも、自主性は育てられる
このとき、幼い頃から自分の行動を自分で決めてきた子は、今日勉強したいことを書き出すことができる。幼い頃の親の関わりが、ここで大きな差を生むのだ。だが、多くの場合、このような関わりをせずに、中学受験の勉強が始まってしまう。受験勉強が始まると、毎日の課題をやることで精一杯だ。ここは気持ちを切り替え、長い目で自立を促していくほうが賢明だろう。
例えば、学習スケジュールを決める時も、親としてはやってほしい課題を挙げつつも、「できそうかな」「ちょっと無理そうだったらやらなくてもいいよ。どうしようか?」と選択肢を与え、最終的に子供自身に決めさせる。そして、それができたら、「1日にこんなにできたなんてすごいね! 頑張ったね!」と褒めてあげる。くれぐれも、「自分で決めたことなのだから、できて当然」と思わないこと。すると、子供は「お母さんに褒められた!」とうれしい気持ちになり、もっと頑張ってみようかなと思うようになる。こうしたやりとりを辛抱強く続けていく。
すぐに成果は出ないかもしれない。特に小学生にとって負担が大きい中学受験の勉強は、塾からの課題を終わらせるだけで精一杯だからだ。だが、できるだけ、子供が自分で自分の行動を決められるように、意識してほしい。
■中学生になったら、一緒にテスト戦略を立てる
親子二人三脚で取り組んできた中学受験から解放されると、多くの親は「今までは私が付きっきりで見てきたけれど、中学生になったら自分で勉強させなくちゃ」と、いきなり手放そうとする。だが、これまで常に指示を出されてきた子供が、中学生になったからといって、突然自分から勉強できるようになるはずがない。
中学生になると、学校からの指示は出されない。特に難関中学は、自主性を重んじるため、あれこれ説明もしてくれない。例えば中間テストの前に範囲表が1枚配られるだけ。これを見て、ついこの間まで小学生だった子供が自分で計画を立てながら勉強を進めることなんてできない。そもそも範囲表の読み方もわからないだろう。そこで、まずは親が教えてあげる。
「どういう問題が出そうかな?」
「何をすればいいと思う?」
「ここに何ページの問題って細かく書いてあるけど、こういう問題はきっと出ると思うな」
■長い目で見れば、中3までに自立できれば十分
そうやって、中学生になったらどういう勉強のやり方をするといいかアドバイスをし、限られた情報の中でどのような戦略を取ったらいいのか、親子で一緒に考えてみる。その時、親は指示をするのではなく、あくまでもアドバイスにとどめておくこと。そして、最後は自分でやることを決める。はじめはうまくいかないかもしれない。でも、少しずつ自分で考えて計画を立てられるように、親は徐々に距離を離し見守るスタンスに変えていく。最終的に中3までに自分で計画を立てて勉強できるようになればいい。
自分から進んで勉強をする子に育てたければ、親は幼少期の関わりを大事にしてほしい。それは手遅れという場合は、長い目で自立を促す。大事なのは、「うちの子は無理」と決めつけず、わが子の力を信じることだ。
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プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。
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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)
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