1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

橋下ゴジラvs吉村ガメラ、日本を救う「総理」はどっちだ!

プレジデントオンライン / 2020年5月14日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SakuraIkkyo

■厚労省が突如公表した新たな指針に、国民は憤った

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の期限が延長され、国民の苦闘は「第2クール」に入った。いまだ多くの経済活動は制限され、外出自粛は継続、子供たちの「学びの場」も閉じたままだ。この間に国民生活は疲弊し、お粗末すぎる国の対応によって医療現場は振り回され、その後始末に首長たちが頭を抱える「負の連鎖」が続く。今月半ばには一部の自治体で宣言が解除される見通しとなったが、二転三転する安倍晋三政権の対応による混乱は続いている。

あれは一体なんだったのか――。5月8日夜、厚生労働省が突如公表した新たな指針に、国民の多くは憤ったに違いない。同省は2月に受診の目安として「37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」と示していたが、この表記をいきなり削除したのだ。高熱や強いだるさ、息苦しさなどの症状があれば相談すべきとの表現は維持したものの、誰もが記憶した「体温」については外した。この目安により「自分は37度程度だから大丈夫」と相談や受診を控えてしまった人々は少なくないだろう。

■保健所に罪をなすりつける加藤厚労相の、救いようのなさ

加藤勝信厚労相は記者会見で「(当初の目安が基準のようになったのは)我々から見れば誤解」と釈明したが、国民民主党の小沢一郎衆院議員は5月9日のツイッターで「『誤解があった』と厚労大臣。あれだけ病院に行くなと言っておいて、誤解の訳がない。非は絶対に認めない。この基準でどれだけの方が犠牲になったことか。しれっと変えて、誰も責任はとらない。政権の手口に国民が慣れてしまったとしたら、また同じことが繰り返されるだろう」と批判。落語家の立川志らく氏も11日のTBS系「グッとラック!」で、「謝りもせず、この方が大臣というのが日本の悲劇のような気すらしてくる」と怒りをぶつけた。

加藤氏は、当初の目安は「検査機関に対するものではない」とも説明したが、国による「目安」設定は、感染の有無を調べるPCR検査や診断の「障壁」になっていたと指摘されている。元大阪府知事の橋下徹氏は「保健所が誤解していたなんてことを大臣が言ったら、保健所も怒り狂う」(10日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」)と指摘している。

■安倍政権による方針転換で自治体、保健所、医療現場が大混乱

安倍政権による方針転換で自治体や医療現場、保健所などの混乱を招いたのは、これだけではない。象徴的なのは感染者の「自宅療養」についてだ。

国は3月1日付で都道府県や保健所を設置する市、東京23区に対して「感染が拡大した状況では、無症状者及び軽症者については、自宅での安静・療養を原則とする」ことを通知した。厚労省が5月6日に発表した感染者の療養先に関する全国調査の結果によれば、4月28日時点で8711人のうち「自宅療養」は1984人に上っている。だが、4月2日付では「宿泊療養中または自宅療養中の軽症者等にPCR検査を実施する体制をとることにより、重症者に対する医療提供に支障が生じるおそれがある場合には、宿泊療養又は自宅療養を開始した日から14日間経過したときに、解除することができることとする」と通知。4月23日には、加藤厚労相が軽症者はホテルなど宿泊施設での療養を基本とする方針に転換し、施設療養を優先する通知を出した。

■「多くの都民は自宅待機者が大勢いたと知らず」

「自宅療養→施設療養」「PCR検査陰性2回→軽症者は14日後解除」。こうした経緯は当然、都道府県や保健所を設置する市、東京23区に共有され、メディアでも報じられているが、「現場」には事実誤認や混乱をもたらせている。東京都内でも感染者数が多い杉並区の田中良区長は4月16日に配信された「文春オンライン」のインタビュー記事で、「多くの都民は自宅待機者が大勢いたと知りませんから、驚いたと思います」としている。繰り返すが、「自宅療養」の原則は3月1日付で通知されていたものだ。

厚労省は4月2日付で「軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」と通知し、それに基づいて東京都は7日からホテルへの患者移送を開始することになったが、田中氏は16日配信の同じインタビューで「(ホテルへの移送を)いきなり発表するのではなく、検討しているのなら区にも教えてほしかった」とも指摘している。

■国の法律による分かりにくい仕組みが混乱を招いた

ここで、厚労省通知と東京都内の保健所の関係を少し整理しておきたい。なぜならば、メディア報道でも誤った表現が見られているが、東京都内の保健所には他道府県にはない特殊事情があるからだ。感染症対策の実施が保健所設置自治体にあるのは全国共通だが、保健所の設置主体は指定都市やその他政令市などになっており、東京都内の場合は都が設置主体である多摩地域など6つの保健所の他に、特別区である23区と八王子市、町田市にそれぞれの区市が設置主体となった保健所がある。国の法律によって分かりにくい仕組みがコロナ対策で混乱を招き、メディアの理解不足が生じる源にもなっている。

感染症法64条には、保健所を設置する市や特別区に関する規定があり、それを踏まえれば同法にある「都道府県知事」という箇所は、それぞれ「市長」「区長」となる。先の杉並区で例えると、杉並区長は「まん延を防止するため必要があると認めるときは、感染症の患者に対し特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院すべきことを勧告することができる」(同19条1項)とあり、勧告に従わない場合には入院させることができる(同3項)。2月に指定感染症となった今回のコロナ対策では、東京で言えば23区や八王子市、町田市もその責務を担っているが、「国―東京都」のラインとは別に「国―23区と八王子市、町田市」というラインがあることも対応を複雑化させている。

■「大阪モデル」が注目を浴びた

厚労省は全国の感染者情報を1人ずつ集計していたが、都道府県がホームページで公表している情報と大きく異なり、東京都内の死亡者数にいたっては都の公表と10倍近い「誤差」を生じさせてしまうなど、その能力には疑問符がつく。米紙ニューヨーク・タイムズはコロナ発生届をファクスで求めていたと日本政府を酷評している。

最近では、大阪府の吉村洋文知事が緊急事態措置を段階的に解除する際の独自基準として示した「大阪モデル」が注目を浴び、「PCR検査陽性率」の動向にも国民の関心が向いている。官僚の犬となった霞が関の政治家とは異なり、政治家の本来あるべき姿を体現した。多くの府民に希望を与えたであろう。東京でも同じことを、と願う都民も多いだろうが、東京は先の特殊事情に加えて約80の民間医療機関による検査も行っており、「それらを合計した数字にはある程度の時間がかかる」(都の担当者)のが実情だ。だが、コロナ危機下では理解不足からワイドショーなどで「事実誤認」が垂れ流されることも少なくない。

テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」では、東京都が発表した感染者数についてコメンテーターの玉川徹氏が「土日は民間医療機関の検査の件数。行政機関の検査は休み」と発言したが、もちろん行政の機関では休むことなく検査を実施しており、4月29日には謝罪に追い込まれた。

■ネット情報を鵜呑みにするテレビコメンテーター

ようやく厚労省は4月23日に患者情報を一元管理し、国や自治体の職員が閲覧できるようにする新システム導入を発表したが、国と都の関係や東京の特殊事情への勉強不足をうかがわせるキャスターやコメンテーターらの発言は他のワイドショーでも目立っている

コロナ危機下で「トンデモ厚労省」ぶりも取材している民放テレビ記者の1人は、匿名を条件にこう語った。「テレ朝の玉川氏は事実誤認の経緯として『記者の取材メモの解釈を間違い、コメントしてしまった』と説明したが、テレビ出演しているコメンテーターや著名人の中には、ネット情報を鵜呑みにしたり、法律や制度、記者会見などの内容を理解しないまま発言したり、とにかく批判しておけば良いという姿勢があるのも事実。厚労省の通知がやたら多い点も理解不足を招いているが、専門外のことを発言する時は国民の命がかかる問題だけにきちんと理解してからすべきだろう」。

■橋下ゴジラvs吉村ガメラ、日本を救うのはどっちだ

橋下氏は前述の番組にて、「トンデモ厚労省」の一連の対応について「権限と責任があいまいで、日本の行政は動かない」とも批判した。さて、橋下氏が拙稿「これが対コロナ最強布陣「橋下総理、小池長官、吉村厚生相」」をきっかけに「#橋下総理」がツイッターのトレンド入りをはたした。一方、吉村氏に関しても、これまた拙稿「安倍晋三に絶望…自然発生的「吉村総理」待望論、強まる」は配信直後にプレジデントオンラインのアクセスランキングで1位(1時間)を36時間ほどとり続けた。橋下総理、吉村総理、その賛否はさておき、この現状に国民の対する危機感を表している。

失礼を承知で、吉村知事はどことなく顔がガメラに似ている気がする。そして橋下氏はゴジラのように。知らない人のために簡単に説明しよう。人類の敵・破壊神として知られるゴジラだが、映画会社の都合で、第5作「三大怪獣 地球最大の決戦」以降、地球侵略を企むガイガンと対峙するなど、正義の味方としての戦いを見せている。橋下知事・市長時代も「既得権益の壊し屋」としてメディアから袋叩きにあったものの、その後、大阪は、地下鉄民営化など目に見えて発展を遂げた。ガメラは、ライバル会社がつくったゴジラに対抗する形で誕生した。ゴジラ同様に凶暴な一面を持ち合わせていたが、子どもには優しい一面を持っており、「悪を倒す正義の怪獣」になった。

ゴジラもガメラも同じようなものではないかという人もいるかもしれないが、現在の印象としては、平成年代に入って破壊神に戻ったゴジラと、人類の味方でありつづけるガメラと対称的なキャラ設定となっている。橋下氏は自身を「無責任なコメンテーター」と評し、ときに実現ハードルの厳しい意見を臆することなく提言するのに対し、吉村氏は現役の知事であることからポジティブな物言いが多いという部分も、それぞれがゴジラ・ガメラと被るイメージがある。

いずれにしろ、ポスト安倍の有力候補の二人。切磋琢磨して、よりよい社会を実現していってほしいものだ。

橋下ゴジラvs吉村ガメラ、日本を救うのはどっちだ!

----------

麹町 文子(こうじまち・あやこ)
政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。

----------

(政経ジャーナリスト 麹町 文子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください