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コロナ自粛の期間中は「子どものワガママ」を怒ってはいけない

プレジデントオンライン / 2020年5月15日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

子どもが甘えてきたり、わがままを言ってきたりしたときは、どうするのが正解なのか。アメリカで塾を経営する船津徹氏は、「それらは不安を抱いているサイン。コロナウイルスによる社会の変化で、子どもも不安を抱えている。子どもの甘えには親がしっかり応えてあげてほしい」という——。

■まずは親が変化に適応しなければならない

新型コロナウイルスのパンデミックは世界中の人たちの暮らしを一変させました。それまで当たり前であったことが、当たり前でなくなったとき、人々は混乱し、不安に陥ってしまいます。しかし、人類の歴史を少し巻き戻して考えると、社会が何事もなく平穏としていた時期は、実はほんの少ししかありません。

日本を見てみると、わずか150年ほどの間で、明治維新、日露戦争、第一次世界大戦、関東大震災、世界恐慌、第二次世界大戦、原爆投下、オイルショック、バブル崩壊、阪神淡路大震災、東日本大震災など、数十年単位で社会の大変動を経験し、その都度、人々は乗り越えてきたのです。

新型コロナウイルスについても、中長期的には厳しい状況が予想されますが、人類は乗り越えていくことでしょう。大きな「変化」に直面すると人々は不安になり、思考や行動がネガティブになりがちです。しかし、変化を拒絶するのでなく、変化を受け入れ、変化に適応する態度が、次世代を生きる子どもを育てている親には強く求められるのです。

■人間の脳は「変化」を拒絶するようにできている

ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンは、心理学者エイモス・トベルスキーとの共同研究で「人間は変化を受け入れることで大きな利益が見込める場合でも、現状を維持したがる」という現状維持バイアスの存在を発見しました。

変化にはリスクやストレスなどの「不安」がつきまといます。また、それまでに積み上げてきた知識や技能が役に立たなくなるという「損失」も伴います。現状維持バイアスとは、簡単に言えば、変化に伴うリスクや損失を避け、身を守ろうとする自己防衛本能です。多くの人は、この脳の働きにより、現状を維持する選択を無意識に行っているわけです。

今、私たちは大きな環境の変化に直面しています。この変化を乗り越え、飛躍していくためには、現状維持バイアスを打破し、勇気を持って新しい世界に適応していかければなりません。

そのために、今、親がすべきことは、家族の絆を強めることです。家族がお互いをいたわり、尊重し、支え合うことで、家庭の「安心感」が大きくなります。安心感が大きくなれば相対的に不安が軽減されますから、現状維持バイアスの影響を受けにくくなるのです。

■「自分は価値がない」と思いがちな日本人

親が子どもを尊重し、愛し、受け入れると「自分は価値ある存在だ」「自分は愛されている」「自分は受け入れられている」という自信が大きくなります。自信が大きくなれば、不安は小さくなりますから、心が明るくなり、思考が前向きになり、行動が積極的になっていくのです。

国立青少年教育振興機構が、日本、韓国、中国、米国の高校生を対象に2018年に行った意識調査があります。この中で、「私は価値のある人間である」という質問に「YES」と答えた割合は、日本人は44.9%でした(韓国は83.7%、中国は80.2%、米国は83.7%)。

日本人は謙遜しますから多少色をつける必要がありますが、「自分は価値がある」と答えた高校生が44.9%というのは低すぎる数字です。裏返せば、「自分に価値がない」と感じている高校生が半数以上いるということです。

■不安が大きい今こそ「子育ての原点」に戻る

自己に対する「自信」が小さいと「失敗するのではないか」という「不安」が目の前に大きく立ちはだかり、恐怖で一歩が踏み出せなくなり、新しい挑戦がしにくい、人生に対して消極的な態度が形成されてしまいます。

今子育てをしている親の多くは、バブル経済崩壊後に社会人になった人たちであり、高度経済成長期の社会が持つ楽観性や明るさを経験していません。日本社会が自信を失い、未来への夢や希望が描きづらい環境で育ってきた世代ですから、子どもの将来にも漠然とした「不安」を持っています。

それに加えて新型コロナウイルス騒動です。先の見えない時代への「不安」が増幅され、何を信じて子育てをすればいいのか、子どもにどう接すればいいのか、どんな教育を与えればいいのか、すっかりわからなくなっているのです。

子育ての不安が大きいときは「子育ての原点」に戻ってください。時代、国家、民族、文化を越えて、世界中の子育てで大切にされてきたことは、子どもに愛情を伝え「自信」を大きく育てることです。

■環境の変化をいかに乗り切るかが自信を左右する

人は誰もが「愛され受け入れられたい欲求」を持って生まれてきます。この欲求が十分に満たされると、あるがままの自己への自信を持つことができます。「自分は親から受け入れられている」「自分は親から愛されている」という自信が心の支えとなり、失敗、困難、ストレスに立ち向かっていける前向きな態度が育つのです。

もちろんどの子も、赤ちゃんの頃は、親から大切に育てられますから、愛され受け入れられている自信を得ることができます。ところが子どもが成長し「環境の変化」や「習慣の変更」を迫られるようになると、この自信がグラついてくるのです。

例えばトイレトレーニングは、どの子も乗り越えなければならない壁です。慣れ親しんだオムツから離れ、自分の力で排泄をコントロールするというのは子どもとって「習慣の変更」であり、大きな「不安」を伴います。

この変化をうまく乗り越えることができれば「自分はできる」という自信が大きくなります。反対に失敗して恥ずかしいという経験が多くなると「また失敗するのではないか」という不安が大きくなり、自信は減退していきます。

子どもは環境の変化や習慣の変更に直面したとき、必ず「怖いよ」「助けて」というサインを発信します。このサインに親が適切に応えて、サポートを与え、安心させてあげることが子どもの自信を大きく育てるポイントです。

■今は家族の愛情を増やすことが特に重要なとき

子どもは「不安」のサインを「甘え」や「反抗」という形で発します。急にまとわりついてきたり、わがままを言ったり、赤ちゃん返りしたり、反抗的になるのは全て「不安」を訴えるサインです。このサインに親は「甘えさせる」という行為で応えてあげることが大切です。

「ママ抱っこ!」という甘えに対して「かわいい◯◯ちゃんが大好きよ」と言って抱きしめて、キスしてあげれば、「ママはボクことが好きなんだ!」と実感できます。子どもの甘えに親が適切に応えてあげると、不安が軽減され、自信が大きくなるのです。子どもは成長の過程で繰り返し「不安」のサインを出しますが、その都度、親は応えてあげてください。

船津徹『世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)
船津徹『世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)

子どもを安心させる一番の方法がスキンシップです。「愛しているよ」と言葉で伝えるだけでは、子どもの精神は安心できないのです。親の愛情を実感させるには、抱っこ、抱きしめ、添い寝、頰ずり、手足のマッサージなど、親の皮膚と子どもの皮膚の心地よい触れ合いが最も効果的です。

小学生になった子どもでも、変化に直面すると「不安」のサインを出します。もちろん小学生でもスキンシップが有効です。一緒にお風呂に入ったり、添い寝をしたり、マッサージをしてあげると、子どもの不安は小さくなり、心に勇気とやる気が満ちあふれてくるのです。

コロナウイルスのパンデミックにより、今、多くの子どもが「不安」に陥っています。この不安を軽減できるのは「親の愛情」です。親にとっても大変厳しい状況ではありますが、こんなときこそ家族の絆を強め、子どもを安心させることに配慮してください。子どもの明るい笑顔は、実は、親も救ってくれるのです。

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船津 徹(ふなつ・とおる)
TLC for Kids 代表
明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て、幼児教育の権威である七田眞氏に師事し英語教材の制作などを行う。その後独立し、米ハワイ州に移住。2001 年、ホノルルにTLC for Kids を設立。英語力、コミュニケーション力、論理的思考力など、世界で活躍できる人材を育てるための独自の教育プログラムを開発する。著書に、『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)、『世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方』(大和書房)ほか。

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(TLC for Kids 代表 船津 徹)

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