「コロナ後に日本が一人勝ち」の未来に、世界の投資家注目している
プレジデントオンライン / 2020年5月18日 11時15分
■巨額の金融緩和による、マネーが行き場を探している
世界は早くも経済活動を再開し始めています。アメリカでは4月の失業率が14.7%と戦後最悪の数字となったにもかかわらず、株式市場では株価が大幅に上昇しています。この実態経済と株式市場の乖離(かいり)は不気味ではありますが、各国が行っている、巨額の金融緩和による、マネーが行き場を探しているという見方ができます。新型コロナにより、大きなダメージを受けた世界経済を「金融市場」が引き上げる可能性が高まっています。虚構と言われやすい「金融」ですが、金融により経済を持ち上げることができれば、経済不安から自ら断つ命も救えます。アフターコロナで生き抜く未来を、必死で各国の中央銀行が描いているのです。
新型コロナウイルスは厚生労働省の5月8日のデータによると、世界の感染者は370万人を超え、死者数は26万7900人以上にのぼってます。その中で日本は、新型コロナウイルス感染者の死亡率が圧倒的に低いことが注目され、中国人がアフターコロナで旅行したい国NO.1は日本だと言われています。この“独自の光を放つ”日本は、さまよう巨額のマネーの「買い対象」になる可能性があります。機関投資家の投資対象による、日本株の上昇は、日本経済を支えることにつながり、アフターコロナの世界で日本が有利になる可能性があるのです。
■日本の死亡率の低さが注目されている
5月13日時点で日本の感染者数は1万5908人、死者数が687人で死亡率は4.3%であり、全人口に占める感染率は0.01%にすぎません。5月7日時点での各国の死亡率は、フランス18.8%、イタリア13.8%、スペイン11.7%、米国6%、中国5.6%となっています。また、5月4日に発表された、「専門家会議委員記者会見資料」のデータによると、人口10万人あたりの新型コロナ死亡者数は、日本は欧米の10分の1以下となっています。
日本では、PCR検査数の数の少なさが問題視されていますが、肺炎を起こすような症例については積極的にCTスキャンを活用しており、重症例や死亡例等での見逃しは少ないといえます。感染者数に関しては、PCR検査数を増やせば上がる可能性があり、死亡者数は現状の数字からの乖離は小さいと考えられ、さらに、死亡率が低下するともされています。この死亡率の低さに、年間950万人が日本に訪れる、中国人が大変注目しているのです。
■中国人がアフターコロナで旅行したい国NO.1、日本
中国人に最も人気の旅行先、不動の1位であったタイを抑え、日本がいま1位になっています。4月10日、中国メディアである東方網が、新型コロナウイルスの世界的な感染が収束後に中国人が最も行きたいと思う国が「日本」であるとの調査結果を報じています。
なぜ日本? 新型コロナウイルス感染初期の頃、各国が中国批判を強めるなかで、日本は多くの支援物資を送るなどし、中国人のなかで日本への感謝の気持ちが強まっているのです。2月上旬に、在日中国大使館は日本政府や地方自治体、企業などから計約272万枚のマスクや、約38万着の手袋などが寄付されたとの集計をホームページで公表しています。そして、あらためていま、「安心」「信頼」という観点からも、日本人気が高まっているのです。
■日本の強さ、医療現場にも
コロナショックでインバウンド業界は特にダメージが大きく、旅行の需要は戻りにくいと言われています。が、インバウンド最大級のマーケットである中国人が、日本に旅行したいと思っている事実は日本経済にとって朗報でしょう。ただし、需要はあっても、受け入れることができなければ消費は生まれません。水際対策として外国人の入国を拒否する措置が続いていますが、入国制限をいつ解除するのか、感染拡大防止と経済の入り口を開けるタイミングとのバランスをとるのが非常に難しいのが現状です。中国人の日本旅行のマインドが冷めないうちに、インバウンド需要を取り込むべく、国による出口戦略に期待が寄せられます。
さて、英国の医療人材派遣会社IDメディカル社による2019年度の医療制度ランキングでは、医療費(GDP比)、病院ベッド数、医師数、看護師数、平均余命など医療に関する指標を数値化してランキング化した結果、日本が1位となっています。
■質が高く、経済格差の溝が浅い
新型コロナウイルスをめぐっては、全米各地で黒人の死亡率が高いことが報告されています。英BBCによると、イリノイ州シカゴでは人口の約30%が黒人であるものの、死者に占める割合は70%に達しています。イリノイ州全域では、黒人の比率が14%であるものの、死者で占める割合は41%になっています。
アフリカ系米国人は基礎疾患として、心臓病、糖尿病、がんなどを患っている数が多いうえに、感染リスクが高い仕事に従事している傾向が高いのです。また、無保険者が多いことなどが死亡率の格差につながっているようです。こういった健康格差は貧富の格差から生まれていると考えられます。日本は国民健康保険制度で長い年月の中で医療に守られている国であり、医療格差が元々ないことも、今回の致死率の低さに関係している可能性が出てきています。貧富の差と、医療に日頃からアクセスできていたかどうかが、数字を通して顕著に表れています。あらためて今、日本の国民皆保険制度・医療の質の素晴らしさについて、各国からの見直しが進むでしょう。
■日本は衛生状態においても他国に比べて水準が高い
4月6日にMedRxivに投稿されたリポート「Association of BCG vaccination policy with prevalence and mortality of COVID-19」(プレプリント)では、136カ国を対象として、BCGワクチン接種と新型コロナウイルスとの関係が検証されています。本リポートについて、フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の中村孝也氏は「ワクチンを定期接種している国、かつて定期接種していたが現在はしていない国、ずっと定期接種していない国に分けて解析した結果、BCGワクチン接種と新型コロナウイルス感染症による発症率および死亡率とは有意な関係があることがあることがわかった」と指摘しています。
また、中村氏は「その国の全体的な衛生状態、人口当たりPCR検査の回数、民族的な遺伝的背景、SARSの発症率、緩和・抑制政策の強さ、政策に対する国民の遵法意識、文化・生活様式(握手やハグ、マスク着用、手洗いなど)など」も発症率、死亡率に関わっている可能性があるとも分析しています。
日本は国の全体的な衛生状態は他国に比べて水準が高く、政策に対する国民の遵法意識も高いと言えます。また、偶然ではあるものの、握手やハグの習慣はあまりなく、マスク着用や手洗いなどの習慣を持っている国民性です。今回の死亡率に関して、何か1つだけが答えということはなく、さまざまな要因が重なり死亡率の低さにつながっていると言えます。
■株価がV字回復しているユニクロの大株主は誰か
コロナで一時期株価を落としたが、その後V字回復しているファーストリテイリング(ユニクロ)。この会社の大株主は誰か。それは日銀です。日銀は間接的に約20%保有しており、日銀の買い支えもあり、ファーストリテイリングの株価は4月以降V字回復しています。日銀は今年3月に、ETF(上場投資信託)の買い入れ上限額を年間6兆円から12兆円に拡大しました。この買い入れ額拡大で1回あたり1200億円前後のETF買いが株式市場に流入しており、相場の下支え役を果たしています。日銀はETF買いを通じて、日本株に対する国内最大の買い手となっています。GPIF(年金積立金管理運用独立法人)や日銀が本気で買い支えしているマーケットは崩れにくく、海外の機関投資家からも魅力的な市場であることは、想像がつくでしょう。
アフターコロナの世界では、日本の死亡率の低さから、信頼度の高い国であると再考察される可能性があり、また、機関投資家が継続して購入を続ける日本株、日本経済はアフターコロナでも輝き続ける可能性が高いでしょう。
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テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。
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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)
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