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歌舞伎町ナンバーワンホストが10年以上続けた最強の話し方

プレジデントオンライン / 2020年5月18日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Alexeg84

ビジネスの場面で相手に大きな買い物をしてもらうには、どうすればいいのか。歌舞伎町で10年以上ナンバーワンホストを務めた信長氏は、「話の順番が大事だ。テレビショッピングのように、メリットを十分に説明して最後に値段を言うといい」という――。

※本稿は、信長『1分で相手の「心」を開かせる メンタルトーク』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■「営業職」と「ホスト」の仕事は似ている

セールストークにおける最大のポイントは、話の「順番」です。

いかに相手に、ストレスなくお金を使ってもらうか。これが最重要課題なのは「営業職」も「ホスト」も同じ。私も、ホストとして歌舞伎町でナンバーワンを獲り続けていたころは、常に話の「順番」に気を遣っていました。

「結論から話せ」。新人時代、上司からこう叱られた人は多いでしょう。

確かにビジネスシーンでは、結論から話すのがひとつのセオリーです。ただ、商談やプレゼンテーションの場では、結論から話すことが必ずしも有効ではない場合があります。

ホストがなぜ、あの手この手を使ってお客さまを楽しませようとするのか。結論をいえば、それは「お金を使ってほしいから」です。しかしお店に入るなり、ホストに「今日は100万円使ってください。なぜならば……」と結論から言われたら、お客さまはドン引きするでしょう。その後、どんなに接客を頑張っても、お客さまは「ああ、この人は私に100万円を使わせるために頑張っているんだ」としか思いません。

大きな買い物をしていただくには、話の「順番」が大事なのです。

■「テレビショッピング」を分析する

どのような「順番」で話を進めればよいのか。

参考になるのはテレビショッピングです。

たとえば高枝切りばさみを売るとして、テレビショッピングではいきなりその高枝切りばさみを見せたり、「お値段はこちら」と結論を言ったりはしません。

まずは「高い位置にある枝が切れない」と悩む、背の低い人や高齢の人が登場。従来の枝切りばさみを使って切ろうとしてもうまくいかず、四苦八苦します。

そこで満を持して、今回の売りものである高枝切りばさみの出番です。この高枝切りばさみを使うと、さきほどまで枝を切るのに苦労していた人も、らくらく切ることができます。

十分にメリットや機能を説明したところで、いよいよ値段を提示します。視聴者はすでに「なんて便利なはさみなんだ」と感動していますから、値段が少々高くても、「このはさみがほしい」と考えます。

■値段を先に出しても聞く耳を持ってもらえない

もしもテレビショッピングの冒頭で、いきなり値段を提示していたらどうでしょう。視聴者はきっと値段だけを見て、「普通のはさみより高いな」と感じるでしょう。その後でどれだけメリットや機能を説明しても、聞く耳を持ってもらえないおそれがあります。だからこそ「価格の提示」は「メリットや機能の説明」より後なのです。

そしてダメ押しが「おまけ」。「今ご購入いただいたら、さらにこちらもついてきます」と、高枝切りばさみと一緒に使うとさらに便利な、さまざまがグッズがついてきます。視聴者は「今買ったらお得」「むしろ、今買わなきゃ損」と感じ、電話をかけてしまうのです。

実によくできたパッケージです。

■期待値を上げるだけ上げて、価格の正当性を問う

実はホストも、テレビショッピングとよく似た「売り方」をしています。

固定の指名客と仲良くなってきたところで、「このシャンパンを入れてくれたらもっと仲良くなれる」「入れてくれたら一緒にディズニーランドにいこうか」「ディズニーシーでお酒を飲むのも楽しいかもしれないね」「なんならミラコスタに泊まろうか」と、シャンパンを入れてくれた後の楽しい未来をお客さまにイメージさせます。

するとお客さまは「シャンパンを入れたら、こんなに楽しい未来がある」と思い描き、その未来をつかもうと、シャンパンを入れてしまうのです。

一歩間違えば詐欺師同然ですが、実際に「シャンパンを入れてくれたら一緒にディズニーランドにいく」「ミラコスタに泊まる」という約束を守るのであれば、立派な取引です。

「ストーリー」を語り、期待値を上げるだけ上げて、「価格」が適正かどうかお客さまに判断してもらう。これは怪しいようで、実は「堂々とした売り方」なのです。

■「ネガティブ面」を事前に説明すると何がいいのか

また、商品やサービスの「ネガティブ面」を伝えるタイミングにも注意が必要です。

ある靴を売るとします。

その靴はおしゃれですが、耐水性が低い。快適に履き続けてもらうには、別売りの防水スプレーを使ってもらうしかありません。

この事実を「どのタイミングで伝えるか」で、お客さまの反応は180度変わります。

言うまでもなく、ベストなタイミングは「お客さまがその靴を買おうかどうか悩んでいるとき」です。「こんなネガティブ面がありますが、お客さまによくお似合いです。いかがですか?」と尋ねれば、お客さまは「なんて誠実な接客なんだ」と感じることでしょう。

ところが多くの販売員は、目の前の靴を売りたいがために、この「逆」をやってしまいます。お客さまに「お似合いですよ」と勧め、購入を決めた後にようやく、「でもこの靴、実は耐水性が低くて……」とネガティブ面を話し始めるのです。

たとえ「耐水性が低かろうが何だろうが、買う」と決めているお客さまであっても、心のどこかに「先に言ってくれよ」という引っかかりが芽生えることでしょう。まるでこの販売員が、耐水性が低いというネガティブ面を隠していたかのような気持ちになるからです。

■「ネガティブ面の先出し」は「ポジティブ面の強調」につながる

同じ「ネガティブ面」があっても、先に伝えればそれは「誠実な対応」となり、後から伝えればそれは「隠していた」とか「言い訳だ」と受け取られたりします。

ならば、先に伝えない手はありません。

信長『1分で相手の「心」を開かせる メンタルトーク』(KADOKAWA)
信長『1分で相手の「心」を開かせる メンタルトーク』(KADOKAWA)

私がかつてホストクラブの代表を務めていたときも、ネガティブ面を先に伝えるよう心掛けていました。

その店には一時、年齢層の高いホストばかりが在籍していました。「人を楽しませる」ことにおいて年齢は関係ありませんが、若いホストを求めるお客さまの需要には合わないのもまた事実です。

そこで私は、クラブについてこんな宣伝をしていました。

「うちの店は年齢層の高いホストが多いけれど、お客さまを楽しませることに関してはどこにも負けないよ」

単に「うちのホストは、お客さまを楽しませることに関してはどこにも負けない」では、店に入った瞬間に「でも、年齢層が高いじゃない……」と感じるお客さまも確実に出てきてしまいます。

しかし、あらかじめ「年齢層が高い」ことを受け入れて入店すれば、そこはもう「お客さまを楽しませることに関してはどこにも負けないホスト」揃いの店になります。

先に「ネガティブ面」を伝えることで、「ポジティブ面」をより強調することができるのです。

不利な事実ほど、先に出す。これが売上を伸ばす強力な武器になります。

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信長(のぶなが)
元歌舞伎町ナンバーワンホスト
1979年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。家庭教師のアルバイトをしながらホストの道に入る。当初は体重が100キロ近くあり、女性とまともに話せない三流ホストだったが、試行錯誤の末に入店4カ月で初めての指名をとった直後にNo.1になる。以後通算28回のNo.1を獲得。10年以上ナンバーワンホストとして君臨し続ける。著書に『歌舞伎町トップホストが教えるシャンパンタワー交渉術』(講談社)、『歌舞伎町No.1ホストが教える選ばれる技術』(朝日新聞出版)などがある。

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(元歌舞伎町ナンバーワンホスト 信長)

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