どれだけ女性に嫌われても傷つかない人間だけがカリスマホストになれる
プレジデントオンライン / 2020年5月20日 17時15分
※本稿は、信長『1分で相手の「心」を開かせる メンタルトーク』(KADOKAWA)を再編集したものです。
■「相手の心配」より「自分の心配」
私の著書である『1分で相手の「心」を開かせる メンタルトーク』の中でお伝えしている「メンタルトーク」とは、「自分が傷つかず、かつ相手を不快にさせずに、自分の欲望を叶える方法」です。
私がメンタルトークを磨き上げるにあたり、何よりも重要視したのは「自分が傷つかず」の部分です。
もともと人間嫌いで打たれ弱かった私は、周りから批判されたり、誘ったのに断られたりすると大きなダメージを受け、そのまま自分の殻に閉じこもってしまうところがありました。
しかしホストという職業上、相手から何か言われるたびに傷つき、自分の殻に閉じこもっていては、すぐにクビになってしまいます。「相手をいかに楽しませるか」以前に、「自分がいかに傷つかずにすむか」が大切だったのです。
なるべく傷つかずにすむには、どうすればよいのか。さまざまな本を読んでいる中で発見したのが、「メタ認知」を利用する方法です。
■「もうひとりの自分」をつくる
メタ認知とは、「自分」という存在を俯瞰して見る「もうひとりの自分」をつくることです。
ロールプレイングゲームで考えてみましょう。
ゲームを始めてすぐ、主人公に名前をつけることになります。ここでは便宜的に、自分の名前をつけることにしましょう。私の場合は「のぶなが」です。
ほどなくして「のぶなが」は、冒険の旅に出ます。旅の途中ではさまざまなモンスターが登場し、「のぶなが」に戦いを仕掛けます。
戦いの中で、「のぶなが」は敵の攻撃を食らい、ダメージを受けます。しかしゲームをしている私・現実の信長はダメージを受けません。どうすれば「のぶなが」が窮地を脱し、戦いを逆転できるかに思いを巡らせます。
メタ認知も、これに近い考え方です。
「誰かに話しかける自分」とともに、「その自分を俯瞰して見る、もうひとりの自分」をつくる。そして仮に相手に拒絶されたとしても、それは「自分」そのものが否定されたのではなく、「そのときの自分の話し方」が悪かったのだと考えるのです。
すると、「自分の人間性が否定された」と絶望することなく、「行動をどう改善すれば相手に受け入れてもらえるのだろう」と、前向きに修正策を練ることができるようになります。
「自分」を俯瞰して見る「もうひとりの自分」という視点を持つと、あらゆる批判や助言を前向きにとらえることができるようになります。加えて、思い切った行動もとれるようになります。
■人生をゲームのように考えてみる
ホストクラブに入りたてのころの私は、無駄にプライドが高く、お客さまを盛り上げるためにバカを演じることができませんでした。
しかし「メタ認知」の考え方を取り入れることで、「バカを演じる信長」と「それを俯瞰して見るもうひとりの信長」、2つの視点を持てるようになりました。
「バカを演じる」のは、ロールプレイングゲーム風にいえば、「バカを演じる」という魔法が有効な状況で、その魔法を使うようなもの。そう考えると、お客さまのために一時的にハメを外すことにも抵抗がなくなったのです。
確かに、人生はゲームではありません。ただ「ゲームのように考える」ことで心が軽くなり、「自分」が守られるのもまた、心理学的に正しいことなのです。
■「断られたら次」の「次」を持つ
「傷つかない自分をつくる」から、もう一歩ステップアップしてみましょう。
「傷つかない自分」をつくり、かつ相手より精神的に優位に立つ方法があります。
「依存先」を増やすことです。
パーティーで、気になる女性をひとりだけ見つけたとします。デートに誘ったら断られてしまいました。あなたは落ち込むでしょう。
なぜ落ち込むのか。それは「その女性に断られたら終わり」という状況で断られてしまい、「断られたら次へいく」という切り替えができないからです。
もしも気になる女性が複数いれば、「仮に断られても、次へいけばいい」と前もって予防線を張ることができるため、誘いを断られても落ち込みません。それどころか、「仮に断られても、次へいけばいい」という心の余裕がプラスに働き、適度な軽さで誘うことができて、デートの誘いにOKが出やすくなりさえします。
「断られたときの心理的ダメージが少なくなる」「心に余裕ができて、デートの誘いが成功しやすくなる」。これが「依存先」を増やすことによる2つの効果です。
■ホストさえ手玉にとる、ある女性のふるまい
「依存先」を増やす。
これは単純でありながら、なかなか強力な作戦です。タイミングによっては、恋愛が「本職」であるはずの私たちホストも手玉にとられます。
私の知り合いの女性は、ホストクラブを5軒ほど股にかけています。
ある夜はクラブAでお酒を飲み、ホストに「あなた今日、アフター(お店の営業時間後にお客さまとデートすること)できる?」と聞きます。ホストが「ごめん、今日はアフターできない」と答えると、「じゃあいいや。クラブBにいくから」と店を出るそぶりを見せるのです。
クラブAのホストからすれば、「常連さんが自分を指名してくれた。売上が立つ」と思った瞬間、その「売上」をクラブBのホストに取られると考えます。だから必死にスケジュールを調整して、その日のアフターをOKにしてしまいます。
しかし現実には、その女性は、クラブA~Eという5つのお店で、まったく同じ手を使っているのです。
「よっぽどのお金持ちなのだろう」と思いきや、さにあらず。彼女はアフターではびた一文出しません。ホストのほうが「彼女にお店でお金を使ってほしい」「彼女を手離したくない」と考えてしまいますから、お店の外では自らお金を出してしまうのです。
もしもクラブAのホストが彼女に愛想を尽かし、「もういいよ。店に来ないで」と付き合いを切ったとしても、彼女にはまだクラブB~E、4つの「依存先」が残っています。たいしたダメージではありません。
しかも、依存先が多いことで、ホストたちは彼女の誘いに「重さ」を感じません。「こじれたら変なことになりそうだな……」と身構えることなく、気軽にアフターに付き合うことができます。
結果、彼女にとって得にしかならない関係性が、ここにできあがっているのです。
■まずは「入口」を広げる
「依存先」を増やすために有効なのが、「入口」を広くとることです。
ビジネスの世界でいえば、「新規入会者限定キャンペーン」や「初回限定割引」などのサービスがこれにあたります。とにかく「依存先候補」を多くつくり、その中で縁のあった人を「依存先」としていく考え方です。
![信長『1分で相手の「心」を開かせる メンタルトーク』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/e/200/img_8eb6e45f5b0431ea416eddcbef7a901b478712.jpg)
ホストの世界にも「初回」と呼ばれる限定サービスがあります。
新規のお客さまを「3000円、90分飲み放題」などの低料金でもてなすのです。
ありていにいえば、ホストは「安いお酒を高く売る」のが仕事です。「イメージ」と「雰囲気」が勝負の世界ですから、基本的には、安売りは御法度とされています。
ただし「初回」は別。まずはハードルを下げて「ホストクラブ」という場所と「ホスト」である私という人間を知っていただき、「2回目以降はこれくらいお金がかかるんだよ」という価格設定も知っていただいた上で、それでも気に入ってくれた人に、2回目以降も来てもらう。よくできたサービスだと私は思います。
「安売りはブランドイメージが崩れる」と言い、どんな相手にも決してハードルを下げない人がいます。
しかし私は、この考え方に賛同できません。
新しく顧客になってくれる人をこちらから絞ってまで保つブランドイメージに、果たして何の意味があるのでしょうか。
まずは「入口」を広げ、低料金でもてなす。2回目以降は正規料金。売りものが本当に「いいもの」であれば、これでも十分、ブランドイメージは保つことができます。
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元歌舞伎町ナンバーワンホスト
1979年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。家庭教師のアルバイトをしながらホストの道に入る。当初は体重が100キロ近くあり、女性とまともに話せない三流ホストだったが、試行錯誤の末に入店4カ月で初めての指名をとった直後にNo.1になる。以後通算28回のNo.1を獲得。10年以上ナンバーワンホストとして君臨し続ける。著書に『歌舞伎町トップホストが教えるシャンパンタワー交渉術』(講談社)、『歌舞伎町No.1ホストが教える選ばれる技術』(朝日新聞出版)などがある。
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(元歌舞伎町ナンバーワンホスト 信長)
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