「吉村知事」の一人勝ちに震え上がる、無能確定の安倍自民
プレジデントオンライン / 2020年5月19日 11時15分
■吉村マンセー状態に動揺を隠せない他党
新型コロナウイルスへの対応で人気急上昇中なのが大阪府の吉村洋文知事だ。自身が副代表を務める日本維新の会の本拠地・大阪では名は知られていたものの、全国的にはほとんど知名度がなかった吉村氏は連日のようにテレビ出演し、キャスターやコメンテーターから絶賛コメントを浴びる日々を送る。コロナ危機下にメディアが「英雄視」する効果は抜群で、維新の政党支持率は立憲民主党を抜いて野党トップに躍り出ている。
他党からは「特定政党の幹部だけをメディアが持ち上げ、他の政党議員を出演させることもなく、ひたすら『吉村マンセー(万歳)』状態を垂れ流すのは不公平だ」との怒りの声もあがるが、維新には「吉村バブル」到来で悲願の「大阪都構想」実現に結び付けたいとの野望も透けて見える。
「評価していただくのはありがたい。一喜一憂するのではなく、コロナ対策に対してやらなければいけないことをやっているだけだ」。吉村知事は5月11日、自身や維新への評価が上昇していることを「あまり気にしていない」と受け流した。とはいえ、「吉村バブル」といえるほど急上昇した人気ぶりに他党の動揺は隠せない。
■後手後手な安倍に比べ、都道府県知事の動向に国民の関心は高い
毎日新聞と社会調査研究センターが5月6日に実施した全国世論調査で、吉村氏は「最も評価している政治家」のトップとなった。防衛相や自民党総務会長などを歴任して知名度が高く、コロナ対応で国を牽引する東京都の小池百合子知事(2位)と並び、その存在は際立っている。日経新聞の調査結果でも1位が吉村氏、2位は小池氏だった。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は12日の記者会見で「前線で戦っている吉村知事がいることが評価につながっているのだろう」と語ったが、別の野党衆院議員は「後手後手な安倍晋三政権の対応に比べ、より現場に近い都道府県知事の動向に国民の関心は高い。でも、ここまで露骨に特定政党の、特定の政治家ばかりを英雄視するのはやりすぎではないか」と批判する。実際、吉村氏に対するメディアの持ち上げ方は異例で、ワイドショーでは連日のように出演者が賛美する「かの国を思わせるような『吉村マンセー』状態」(自民党中堅議員)が続いている。
■あの田崎氏も吉村氏を褒めた!
専門外のことにも「無検証」のまま出演者がコメントするワイドショーの手法には、かねてから疑問の声があがっていたが、コロナ対応では安倍政権を批判する意見が相次ぐ一方で、吉村氏には美辞麗句のオンパレードが目立っている。「吉村知事の明快な発信力は、問題意識を共有しやすい。府民のやる気につながっている」(MCの坂上忍氏、12日のフジテレビ系「バイキング」)、「吉村氏と政府の違いは圧倒的にスピード感だと思う。決定的に違う」(キャスターの安藤優子氏、5月12日のフジテレビ系「直撃LIVE グッデイ!」)、「強いリーダーというと吉村知事なんかは民の声に耳を傾けて、と見える」(MCの石井亮次氏、4月30日のTBS・CBC系「ゴゴスマ GOGO!Smile!」)……。
安倍政権と「ツーカー」の関係ともいわれる政治評論家の田崎史郎氏は、かつて「吉村知事、発言のブレがちょっと激しすぎる」と吉村氏を厳しく批判していたが、最近では「説明が非常に分かりやすい。そこが強みで、いずれ国政に出て来られたらと思う」とすり寄る姿勢も見せている。
■“吉村推し”のヘビーローテーションが発生
民放テレビ関係者の1人は「そもそも『維新系』といわれる出演者、コメンテーターはテレビに多い。もちろん、『政治スタンスとは別』ということで出演しているが、吉村氏や維新をそうした人たちが批判することはほとんどない」と明かす。政治的中立や公平性という観点から各党の幹事長や政策責任者が並ぶ討論番組とは異なり、「コロナ対応」という番組構成ならば吉村氏が出演しても、「それに批判的な出演者、政党関係者を共演させる必要はない」(別のテレビ関係者)という背景もあるようだ。
元々、維新創業者で元大阪府知事の橋下徹氏や元維新衆院議員の東国原英夫氏、大阪府知事選へのラブコールを受けていたキャスターの辛坊治郎氏など、維新と「縁」のある人物の露出度は高く、「吉村氏が発言すれば橋下氏や東国原氏、辛坊氏らがコメントして、それがニュースになり、SNSでも取り上げられている」(ニュースサイト編集者)。こうした他党にとっては「ヘビーローテーション」といえる状態が続くことは、存在感の違いを浮き上がらせることにつながっている。
■立民を支持率でついに上回る。かつての近鉄「いてまえ打線」のよう
「吉村バブル」による恩恵は、政界ではあまり目立たない国政政党「維新」にも広がる。共同通信が5月8~10日に実施した世論調査によると、日本維新の会の政党支持率は8.7%で、野党第1党の立憲民主党(6.9%)を上回り、他の世論調査も同様の傾向が見られている。この勢いは、かつての大阪近鉄バファローズの「いてまえ打線」を彷彿とさせるもので、「安倍政権が終われば、いよいよ維新政権誕生」を期待する支持者もいる。大阪だけでなく、東京でも維新の松本光博杉並区議が同区の祭りをめぐり、商店街が東京都の補助金を不正受給していたことを問題視。領収書偽造や協賛金の未計上が発覚し、東京都は杉並区(田中良区長)に補助金の全額返還を求めたが、松本氏は田中区長などの説明責任を追及するなど注目を集めている。
沸きあがる「空中戦」に危機感を募らせるのは、他の野党だけでなく自民党も同じだ。元大阪府知事で自民党参院議員の太田房江氏は4月14日、ツイッターに「維新に疑問を持つ府民の方々からリプライが増えてきたことに変化を感じます」と投稿。4月25日には、松井一郎大阪市長(維新代表)が記者会見で「(女性はスーパーで)商品を見ながらあれがいいとか時間がかかる。男は言われた物をパパっと買って帰れるから」と語った一言に、「男性とか女性とか分断するようなコメントはどうなの?」とかみついた。
■特定の人物を持ち上げるテレビ局のスタンスはいかがなものか
自民党ベテラン議員の1人も「特定の人物をヒーロー扱いして、その背後にある政党の支持率アップに貢献している。テレビ局はこうしたことを認識しているのか。放送法の『政治的公平性』の観点からもどうなのかねえ」と神経をとがらせる。放送法を持ち出すのは自民党が焦りを感じている証左といえ、かつては高市早苗総務相が放送局に電波停止を命じる可能性に言及し、2014年には自民党の萩生田光一筆頭副幹事長(現文部科学相)が在京テレビ各局に「公平中立と公正」を求める文書を送ったこともある。それだけ「維新の戦略とペースにはまってしまっている」(自民党衆院議員の公設秘書)というわけだ。
維新創業者の橋下氏や松井氏と比べて「キャラ立ちしていない」ともいわれた吉村氏だが、大阪市在住の40代主婦は「今の維新はかつての荒々しい感じがなくなり、ソフトになった」と、「吉村世代」に好感を抱く。15年5月に僅差で否決された「大阪都構想」をめぐる住民投票では「悪顔の松井氏やケンカのイメージが強い橋下氏への嫌悪感がマイナスだった」との指摘もあるが、今年11月に予定される5年ぶりの住民投票は「公明党と組めている限り、ダメな理由がない」(維新支持者の大阪市の男性会社員)。大阪では、東京都で小池知事に反発する自民党東京都連という構図と同様に「府知事VS自民党大阪府連」の対立が続いているが、今度の住民投票は「吉村氏のソフトな印象が加わり、浮動票も取り込める」(前出の主婦)状態だ。世代交代を唱える松井氏の「ソフト戦略」も奏功し、今のところはじける気配が見えない「吉村バブル」到来で「このまま都構想もいってまえ」と維新支持者の鼻息は荒い。
コロナ対応で安倍政権と距離を置きはじめた自民党閣僚関係者は、ため息交じりにこう嘆いた。「自民党が本気で潰しにいかなければならない相手は立憲民主党ではなく、今や維新だ。大阪で踏ん張る自民党府連のことを考えた時、維新に甘い顔をしてきた菅官房長官はどう責任を取るつもりなのか。安倍政権の支持率は下降し、次期衆院選は『このままでは戦えない』となるだろう」
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政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。
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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)
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