6月からの一斉出社を阻止!昭和な会社から、コロナ収束後のテレワーク継続を上手に勝ち取るコツ2つ
プレジデントオンライン / 2020年5月19日 11時15分
■読者の半数以上がリモートワーク中
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で働き方のパラダイムシフトがやってきました。今回日本は2つの「初めて」を経験しています。1つは「在宅勤務を全員で長期間やる」こと。もう1つは「家庭における仕事と家庭の両立」です。
それまではテレワークの制度がある会社でも、テレワークは選択肢の1つにすぎず、こんな働き方は想定していなかったでしょう。だからこそ混乱が生じます。
アンケートによるとプレジデントウーマン読者の約半数は在宅勤務にシフトしています(図表1)。パートナーも在宅勤務をしている人が多く、お子さんの面倒を見ながらの在宅勤務をしている方もいます。
この2つの初めての状況が重なっているわけですから、最初からうまくいかなくても当たり前とまずは腹をくくってください。お子さんが在宅で一緒にいる人については、「成果が落ちる」のは致し方ないと思います。そこは緊急事態ということで会社にも理解を求めましょう。
また今まで女性が担っていた「子育て」をパートナーにもシェアする良い機会です。これほど「家庭」と「仕事」が近接したことは今までにないことです。「子供と父親が今までにないほど仲良くなった」という声もあります。もし問題が多いとしたら、それは今までもあった課題が顕在化していること。夫婦で過ごす時間が多い間に、ぜひ対話を深めましょう。
■6割が「今後もテレワークを望む」
「LINEリサーチ」第4回調査の結果(4月23日)では、「最も早く緊急事態宣言が発令された東京・神奈川・埼玉・千葉に絞って、在宅勤務やテレワークの推奨/義務化状況を調べたところ、53%が勤務先から在宅勤務やテレワークを推奨または義務づけられている」とのことでした。3月後半で、170万人が初テレワークという調査結果もあり、食わず嫌いが多かった「テレワーク」を強制的に経験した人が多いのです。
緊急対応なので、制度がないところに無理な在宅勤務を入れている企業も多く、一般のアンケートでは「今後もテレワークを続けたい」という声は約5割という結果が多いのです。
一方、プレジデントウーマン読者は前向きです。「今後もテレワークを望む」という声が6割を超え、「労働時間が減った」という人も4割います(図表2)。もともと「成果が見えやすい仕事」についている人も多いのでしょう。
それから「お子さんがいない」人が約半数と、一般にくらべると高率。会議や社外との打ち合わせも減り、一人で集中して成果を出せる人には、リモート環境は生産性が高いのです。その意味で、一般的に見てもコロナ収束後に子どもが学校や保育園に戻った際の自宅やコワーキングスペースでのテレワークの推進は積極的に進めるべきでしょう。
■“アフターコロナ”の柔軟な働き方につなげる2つのコツ
さてこの働き方のパラダイムシフトを、アフターコロナの「柔軟な働き方」につなげるには、今何をするべきでしょうか?
まずはしっかりとデータを取ること。何がうまくいって、何がうまくいかないのか、その課題を整理します。課題はさらに「ハード」と「ソフト」にわけてみます。
ハードとは「ITインフラや椅子や机も含めたもの」です。「自宅にWi-Fiがない」「慣れない椅子で腰を悪くした」などの課題は、ハード面を整備することで解決していきます。リモート慣れした海外では「椅子やモニターなどを自宅に運ぶ」サービスがありました。個人のリモート環境整備と、会社のデータのデジタル化、紙やハンコでの承認の撤廃などももちろん必要です。デジタルサインに切り替える動きも出てきています。仕事はハード面の整備が進めば大幅に効率化されます。
そして本当に重要なのは「ソフト」の問題です。管理職層の多いウーマン読者には「部下のモチベーションを保つことができるか」という課題もあります。ソフト面の課題を整理すると「管理」「コミュニケーション」「評価」が浮かび上がります。
最初は「管理」がないと不安でしょうが、性悪説から性善説型の管理に変わっていくべきです。社員への信頼がベースで、社員は信頼に応えて、成果で評価される。上司は「チームとしての目標やゴールを設定し、各人の役割を明確に指示」する必要があります。
そこで必要とされるのが今までよりも「丁寧なコミュニケーション」です。
「コミュニケーション」は、メンバーの「孤独感」を解消するためのポイント。オンラインランチをしたり、ビジネスチャットで風通しの良いコミュニケーションを心がけます。
こうして「他律的」な「メンバーシップ型」の仕事のやり方から、自分の裁量の範囲が広い「自律型」の「ジョブ」になっていきます。
■「リモートは無理」という固い頭を捨てる
リモートと相性が悪いと言われているのが「営業」です。今は「接触を要する客との仕事はストップ」している企業も多い。焦らず顧客の悩みに向かい合い、電話でもいいので接触しましょう。逆にリモートに興味を示してくれる顧客とは「リモート会議のデモ」を申し入れて、感謝されたケースもあります。
今回「リモート化」できないと思われていた仕事も、かなりの部分リモートに移行できることがわかりました。コロナ終息後に元に戻るのではなく、リモート化=効率化につながる部分は追求していく。今までの忙しさのうち、どれが本当に「成果に直結していたのか」を見直す良い機会です。
また「リモート不可」の部分をどうするか、もしかするとビジネスモデルのシフトが必要かもしれないと見直す時期です。例えば自動車販売なども、接触しない非来店型になる可能性があります。新しい営業スタイルは、今まで来店しなかった顧客を取り込むチャンスにもなります。
■「心のケア」を忘れずに
先の見えない事態ですが、皆様のようなリーダー的な立場にある人に一つお願いしたいことがあります。今「コロナハイ」とも言われる状況が少し落ち着いて「疲れ」が出る時期です。不安や恐れを抱いている人はいませんか? 出社するメンバーの不安、在宅のメンバーの不安、経済的な不安。それを無視してはチームは前に進めません。不安や恐怖は「生きるための正常な反応」として受け入れること。人によって度合いは違うので、きちんとフォローすること。そしてまずは自分を労うこと……。「心のケア」問題を疎かにしないようにお願いします。
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相模女子大学客員教授、昭和女子大学客員教授、ジャーナリスト
相模女子大学客員教授。慶應義塾大学卒。働き方改革、ダイバーシティ、SDGs、女性活躍、ジェンダーなどがテーマ。「男女共同参画会議専門調査会」専門委員、「働き方改革実現会議」有識者議員などを務める。『ハラスメントの境界線 セクハラ・パワハラに戸惑う男たち』(中公新書ラクレ)、『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』(PHP新書)など著書多数。
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(相模女子大学客員教授、昭和女子大学客員教授、ジャーナリスト 白河 桃子 写真=iStock.com)
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