なぜ女性の地位が世界最低レベルなのに、日本男性の幸福度は異常なほど低いのか

プレジデントオンライン / 2020年5月20日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/liza5450)

世界各国の男女平等度を表す「ジェンダー・ギャップ指数」で、昨年日本は121位と過去最低を記録。先進7カ国の中では最下位という結果でした。社会学者の筒井淳也先生が、その理由を解き明かします。

■政治分野への女性進出に極端な遅れ

世界経済フォーラムが発表した2019年の「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は153カ国のうち121位となり、前年の110位からさらに後退しました。これだけ見ると、日本の男女格差がさらに広がったのかと思うかもしれませんが、実は順位の決め手になるスコア自体は少しずつ改善しています。

それでも日本の順位が低いのは、他国のスコアの上昇度が日本より大きかったから。日本の男女平等度も昨年に比べれば改善はしましたが、他国ではさらに早いスピードで改善が進んでいるのです。

ジェンダー・ギャップ指数では、経済、政治、教育、健康の4つの分野において、それぞれの男女格差の度合いをスコアで表します。各分野のスコアを見ると、日本は教育と健康ではトップクラス。経済分野では中間クラス、そして政治分野では最低クラスです。

ここからわかるように、日本のジェンダー・ギャップ指数は政治分野が大きく足を引っ張っています。衆議院議員に占める女性比率も女性閣僚の比率もかなり低く、首相に至ってはまったくのゼロ。この分野での女性進出は、他の先進国に比べて極端に遅れていると言っていいでしょう。

■女性の政治家が増えない理由

なぜ日本には女性政治家が少ないのでしょうか。現状では、政治家のほとんどを中高年の男性が占めています。彼らが引退し、世代交代が進めば女性も増えてくるかもしれませんが、果たして国民がそれを望んでいるのかどうか。今のところ、国民の間で「女性政治家を増やそう」という声はそれほど大きくなっていないように思います。

2018年には、女性の政治進出を促そうと「政治分野における男女共同参画推進法」が成立し、男女の候補者数をできる限り均等にすることが決まりました。しかし、これはあくまで努力目標です。政治家と国民が一体になって「何としてでも女性政治家を増やそう」と思わない限り、真の均等が実現するのはまだ先になるでしょう。

■経済分野の問題点は男性的な働き方

一方、経済分野ではどうでしょうか。スコアでは中間クラスに収まっているものの、「管理職ポジションに就いている男女の人数の差」では世界に遅れをとっており、企業における女性リーダーが相変わらず少ない様子が見てとれます。

政治分野に女性リーダーが少ない理由としては、世代交代が進んでいないこと、女性政治家を望む国民の声がまだ大きくなっていないことなどが考えられました。しかし、経済分野の理由はまた少し違います。

現在の日本企業では、労働時間が長い、転勤が多いなど、いまだ専業主婦ありきの働き方が主流になっています。この働き方のままで、管理職ポジションに女性を送り込もうと思っても無理でしょう。実際、女性からも「家事育児と両立できないから管理職はやりたくない」という声が上がっています。

こうした旧来的な働き方を変えることができれば、女性の管理職比率も変わってくるはずです。なのに、現状では「○年までに女性管理職を○人に」と数値目標だけを設定して、働き方は変えない企業がほとんど。これでは、一度は数値をクリアしても後が続かないだろうと思います。

海外の企業では、女性管理職を増やすよりも、男性的な働き方を抑制していくことによって男女の人数差を縮めてきました。日本はこの点に気づくのが遅く、数値目標の達成や女性支援にばかり力を入れてきた経緯があります。本来なら、男女共同参画をうたい出した時点で、まず働き方改革に着手すべきだったのではないでしょうか。

この点、これまではなかなか進まなかったリモートワークや時差出勤が、新型コロナウイルスの感染拡大で一気に取り入れられるようになりましたから、コロナ後に元に戻すのではなく、これらの柔軟な働き方を維持・発展させていけるかどうかが重要なポイントになってくるでしょう。

■ジェンダー・ギャップが女性より男性を不幸にするワケ

さて、ジェンダー・ギャップ指数からは、日本の政治・経済分野への女性の進出度が低いことがわかりました。では、幸福度はどうでしょうか。これは男性が低く女性が高いという結果で、しかも他の国々に比べて圧倒的な高低差があります。

日本の女性の幸福度は、他国に比べてものすごく高いというわけではありません。これほど高低差があるのは、男性の幸福度が異様なほど低いからなのです。ジェンダー・ギャップ指数とは真逆の結果であることを考えると、日本の男性には、社会進出を果たしている分「稼がねばならない」というプレッシャーが大きくのしかかっているのではと思います。

だからこそ、女性だけではなく、男性も含めた全員の働き方を変えるべきなのです。日本では、ここ30~40年ほどで出来上がったガラパゴス的働き方がいまだ主流です。新卒で採用し、長期間かけて育てた「人」に対して仕事や勤務地を割り振る「メンバーシップ型雇用」もそのひとつ。長時間労働や、意に沿わない転勤を生む原因にもなっています。

それに対して、欧米では仕事や勤務地に対して人を割り振る「ジョブ型雇用」が一般的。仕事の範囲が明確で長時間労働につながりにくく、柔軟な働き方も比較的実現しやすいのが特長です。

近年はこの特長に着目して、ジョブ型雇用を取り入れる企業も増えてきてはいますが現状ではまだまだ少数派です。

■ジェンダー・ギャップ解消は男性のためでもある

日本のジェンダー・ギャップ指数を向上させるには、最も足を引っ張っている政治分野と、二番目に足を引っ張っている経済分野で女性リーダーを増やしていくしかありません。

そのためには、政治分野では前述の通り国民の意識変化が必要でしょう。そして経済分野では、各企業における「男性的な働き方の抑制」が重要になります。こうした真の働き方改革が進めば、日本の男性の幸福度も徐々に改善していくはずです。

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筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授
1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。

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(立命館大学教授 筒井 淳也 写真=iStock.com)

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