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コロナ恐慌下で大増税をぶち上げた進次郎大臣の頭の中

プレジデントオンライン / 2020年5月20日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou

■減税に関する質問を小馬鹿にする麻生太郎

「100人を超える国会議員の方が本気で消費税減税を考えるのなら他にもいろいろなやりかたがあるのではないか」

これは5月14日参議院財政金融委員会で、NHKから国民を守る党の浜田聡参議院議員が自民党の減税勢力の国会議員グループを名指して揶揄(やゆ)した質疑の締めの言葉である。浜田議員は実際に参議院法制局とともに消費税減税法案を独自に作成する動きを見せており、その法案の骨子案をインターネット上で公表したことがある人物だ。

この日、浜田議員は、100人超の自民党議員が所属する「日本の未来を考える勉強会」および「日本の尊厳と国益を護る会」が3月に消費税減税を求める合同記者会見を行ったことなどを受けて、麻生太郎財務大臣に対して今後の消費税減税の可能性があるのかを問う質疑を行った。

この質疑に対して、麻生大臣は、浜田議員を小馬鹿にしたような無礼な態度を取りつつ、「御党と違ってうち数多いんですよ。何百人もいれば何百といろいろ異なった意見が当然。そう思っていつも対処しています」とバッサリと切り捨てた。国会中継の映像を見る限りでは議場の中には笑い声さえ生じているありさまであった。

■口ばかりの自民党“減税派”議員たち

もちろん、浜田議員の所属政党は2名しか国会議員がいないため、消費税減税法案を議員立法として国会提出する要件を満たしていない。そのため、同議員が法案を作成・公表しても参議院の採決が行われる可能性はない。しかし、麻生大臣と自民党議員たちは、消費税減税を求める国民の憤りの高まりが同議員の質疑に込められていることを再認識するべきだろう。

自民党には上記の2つの減税を求める議員グループが存在しており、コロナ禍に対して3月に各グループで消費税減税などを求める最初の提言を行っている。そして、3月30日には減税勢力誕生の合同記者会見するに至り、その模様はメディアでも大きく報道される運びとなった。

彼らの提言の内容は、公明党の働きかけもあり一律給付金などは第一次補正予算において一部実現している。ただし、3月末の記者会見の中で、日本の未来を考える勉強会の代表の安藤裕議員が述べた「消費税減税は6月から実施する」という言葉とは裏腹に、現在、安倍政権が6月中旬成立を目指す第二次補正予算の中に消費税減税の文言は盛り込まれる見込みはない。また、日本の尊厳と国益を護る会代表の青山繁晴議員が5月ゴールデンウイーク明けに行われた同会総会において、消費税減税法案作成の方向性を再確認したものの、同法案の具体的な成案が公表されるに至っていない。

■増税大好き! われらが安倍晋三

非常に厳しい経済状況の中で、昨年末から10%に引き上げられた消費税は日本経済に深刻な打撃を与えている。安倍政権は消費増税を2回実行したレガシーを掲げる政権であり、同政権における減税への道は政治的に極めて困難であることは理解できる。

そのため、通常国会の残り約1カ月は、自民党減税勢力の国会議員にとって本気で消費税減税を実現しようとする意志と能力が問われる期間だと言えるだろう。

冒頭の質疑の中で、浜田議員が現状の与党減税勢力の姿について消費税を巡って所属政党との意見の違いから離党者が出た事例を引き合いにしながら、非常に厳しい苦言を呈している。

「100人を超えるグループが消費税減税を掲げて記者会見などで訴えても補正予算に全く消費税減税が関連していない状況を揶揄する表現として、インターネット上では『頑張ったふり』という指摘があります」と。

■結局増税にむけて歩み始める安倍晋三

一方、安倍政権の税制の方向性は、減税どころか増税を示唆する動きを見せ始めている。最も筋悪なシナリオは「コロナ増税」であろう。政府がさまざまな財政出動政策を実施したところで、後で増税されて回収されるのではないかという懸念が国民の間に急速に広がっているのだ。

懸念が拡大したきっかけは政府が新型コロナウイルス対応のため政府が設置した「基本的対処方針等諮問委員会」に、経済の専門家を4名追加したことだ。その専門家メンバーの過去の発言などが消費増税に対して積極的なコメントを行っていたことから、「事実上の増税準備」の始まりとして、東日本大震災の時のように復興増税のような形でさらなる増税が待っているのではないかという懸念がTwitterなどのSNS上で拡大してしまったのだ。

これらの懸念に対し、西村康稔経済再生担当大臣・新型コロナ対策担当大臣は火消しに追われることになり、自らのTwitterで「コロナ対策の諮問委員に任命した#小林慶一氏は財政再建至上主義者との評価がありますが、任命に際し本人と何度も話しました。最近の氏の論文では、今は財政再建にこだわらず国債発行してでも厳しい状況にある人の支援を行うべきと、財政支出の重要性を主張しています。経産省の後輩でもあります。」と釈明の弁を述べる羽目に陥った。

■そして小泉進次郎が国民の息の根を止める

しかし、西村大臣がどのように取り繕ったところで、国民に一度持たれてしまった懸念は簡単に払拭(ふっしょく)されることはない。むしろ、株式市場などが増税の可能性を織り込むことは避けがたいだろう。世論は政府の新型コロナウイルスの一挙手一投足に注目しており、今後、アフターコロナを見据えて景気をV字回復させることを図る中、政府の同諮問委員会の人選はいささか軽率なものだったと言えるだろう(もちろん、政府の本音がコロナ増税にあるなら話は変わってくるが)。

実は、現在、安倍政権はこの他にも大型の増税のための仕込みを行っている。こちらはコロナ増税のような懸念ではない。国民が新型コロナウイルスと自粛で苦しんでいる中、実際に新たな国民負担を増加させるための調査研究の入札が実施されている。

それは小泉進次郎氏が所管する環境省が行った「令和2年度カーボンプライシング検討調査委託業務」(入札提出期限2020年4月8日)、「令和2年度カーボンプライシングが地域経済に及ぼす効果・影響に係る情報収集等委託業務」(入札提出期限20年3月19日)の2つの入札案件である。

■進次郎がいま、やろうとしていることとは…

カーボンプライシングとは、炭素税や排出量取引などにより炭素に価格を付けること、を意味している。要はCO2対策を名目とした大幅増税のことだ。日本でも炭素税同様の税制が既に導入されており、地球温暖化対策税として約2600億円の負担が毎年徴収されている。この増税が行われるのか、新税が導入されるのかは今のところ定かではない。

欧州は炭素税として日本よりもはるかに高額な徴税を行っており、同税に対する住民の過激な抵抗運動が度々発生している。燃料税(炭素税の一種)の引き上げを企んだフランスのエマニュエル・マクロン政権が黄色いベスト運動に増税計画を粉砕された姿は日本でも報道されたことがあるので、目にしたことがある読者もいるだろう。

安倍政権は19年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定し、カーボンプライシングに関して「国際的な動向や我が国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえた専門的・技術的な議論が必要である」と明記しており、環境省の20年税制改正要望にも同様の内容を盛り込んでいる。

■安倍政権にはさらなる大増税に向けた空気

環境省としては昨年からの流れとして、同調査研究のための入札を発注したにすぎないのだろうが、経済危機の中でさらなる増税の準備を着々と進める政府の増税根性に閉口せざるを得ない。

黄色いベスト運動の際、マクロン大統領は「ガソリンを買う現金がなければ、電気自動車を買えばいい」というニュースが出回って評判を下げた。新型コロナウイルス対策に伴う経済恐慌の中で、環境省がもくろむ大増税にはマリー・アントワネットも驚くに違いない。何かを言っているようで何も言っていない「進次郎構文」に照らし合わせれば、「必要性が高まっているので、増税が必要です」ということだろうか。

国民が期待を寄せる消費税減税の見通しが依然として立たない中、安倍政権にはさらなる大増税に向けた空気すら漂い始めている。減税に向けた取り組みをしっかりと応援し、さらなる増税には断固としたNoを突き付けなければ、日本は令和の時代に再び失われた○○年を繰り返すことになるだろう。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。

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(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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