人を動かすには「怒り」よりも「悲しみ」を伝えたほうがいい

プレジデントオンライン / 2020年5月26日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pixdeluxe

相手の言動に怒りを感じたとき、どのように気持ちを伝えるのが正解なのか。アンガーマネジメントに詳しい戸田久実氏は、「怒りをぶつけても相手は委縮したり反発するだけ。怒りの感情の裏側にある、不安や悲しみなどを伝えるのがいい」という――。

※本稿は、戸田久実『アンガーマネジメント』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。

■「なんで同じミスを繰り返すんだ!」とどなる上司の胸の内

怒りは第二次感情と言われています。

どういう意味かというと、怒りという感情の裏側には、一般的にネガティブと言われている感情が潜んでいるということです。

不安・心配・困惑・落胆・悲しさ・虚しさ……というようなネガティブな感情を、第一次感情と呼んでいます。

怒りという第二次感情の裏側には、いまお伝えした第一次感情があるのです。氷山をイメージするとわかりやすいでしょう(図表1)。水面上に見える氷山の水面下には、氷の塊が潜んでいますね。同じように、怒りという第二次感情の裏側には、第一感情が潜んでいるということです。

事例を挙げて解説します。

たとえば、部下が何度言っても同じミスを繰り返したとします。そのとき、上司が部下に対して「なんで同じミスを繰り返すんだ!」「何度言ったらわかるんだ!」という怒りをぶつけたシーンをイメージしてください。

このとき、怒りを表現している上司の感情の裏側には、第一次感情が潜んでいるとイメージしてほしいのです。

人によってどんな第一次感情を抱いているのかは違うと思いますが、たとえば、

「同じミスを繰り返されて、とても困惑している」
「誠意を持って教えているのに、その努力が無になったようで悲しい……」

と感じる人もいれば、

「このまま大事な仕事を任せていいものか、不安を抱えている」

という人もいるのではないでしょうか。

■第一次感情を表現できると相手は受け止めやすくなる

本来は、「悲しい」「悔しい」「寂しい」といった感情(第一次感情)を素直に表現できたほうがいいのですが、怒りのエネルギーのほうが強力なために、

「何をやっているんだ!」
「いいかげんにしろ!」

と、つい怒りの態度をとってしまう人が多いのです。

こうなると、相手は萎縮するか、反発してしまうかのどちらかになってしまい、本当に相手に知ってほしかった思いは、伝わりません。

一方、素直に第一次感情を表現できた場合はどうでしょうか。

「同じミスを繰り返されてしまうと、次に大事な仕事を任せて大丈夫か、とても不安になるんだよ」
「同じミスを繰り返されてしまうと、さすがにわたしも今後どう指導していいか、いまとても困っているんだよ」

このように言われると、部下も「そんなふうに思わせてしまったのか……」と反省したり、言われたことを受けとめやすくなると思いませんか。

■面談時に激昂してしまった事例

ある30代前半の男性の話です。自分の半年間の評価を、部長や50代の上司との面談でやりとりするときに、激昂してしまった人がいました。

半年間、一心不乱に頑張ってきたので高い評価をつけてもらえると思っていたのに、部長が示した評価がかなり低かった。それで、思わず頭にきて、頭が真っ白になった瞬間に「なんでわたしがこの程度の評価なんですか!」と上司に食ってかかってしまったというのです。

そのとき、少々短気なその上司が「わたしの評価に文句があるのか!」と怒ったことに対して、「わたしだって半年間尽力してきましたよね!」とさらに言い返してしまい、最終的に面談が非常に険悪なものになってしまいました。

相談をしてきた彼に、その対話時にどんな第一次感情があったのか尋ねたところ、こんなことを言いました。

「いままでちゃんと評価してくれると信じていた上司がこんな評価をつけるのだと、とても悲しい気持ちになって、これからどうしたらいいのだろう」
「これほど低い評価をつける上司の下で、これからどうやって仕事をしていけばいいんだろうと困惑もした」

彼は、アンガーマネジメントの考えを知ったあとに、

「『いままで頑張ってきたので、この評価を見て非常に困惑しています』『一生懸命頑張ってきたことが、このような低い評価で、じつはとても悲しい気持ちです』ということを言えばよかったんですね」

と振り返っていました。

■「こうしてほしかった」「いまこう感じている」の2点を伝える

自分のなかにある「こうあるべき」という思いが破られたときに怒りが生まれます。

戸田久実『アンガーマネジメント』(日本経済新聞出版)
戸田久実『アンガーマネジメント』(日本経済新聞出版)

怒りを感じたときに、もし言葉にして伝えるならば「こうあるべきだ」よりも、「こうしてほしかった(ほしい)」という要望と「いまそれによってどんな気持ちになっているか」という、この2つを伝えることを、わたしは勧めています。

先ほどの上司との面談の例で言うならば、

「半年間、わたしなりに成果を上げてきました。ですから本当はその成果に見合った高い評価をしてほしかったのです。このような低い評価になさったその理由を教えていただけませんか。正直に言うと、非常に困惑しております」

といった言い方をすれば、相手を不快にすることなく、こちらの思いを伝えることができます。

ミスを繰り返す部下に対する上司側の発言の場合なら、

「こんな小さなミスでも、繰り返すことによって、次に引き継ぐ人の仕事を遅らせてしまうことになるんだよ」
「お客様に出す資料は、小さなミスでも不信感を与えてしまうこともあるんだよ。だから今後こうしたミスをしないように、再度見直してから資料を出してほしい。あまりこういうことを繰り返されてしまうと、わたしも次に大事な仕事を任せていいのか不安になるからね」

と伝えることができますね。

怒りの仕組みがわかっていると、いざ怒りを感じたときに、相手にどう伝えたらいいかもわかるようになります。反対に、誰かに怒りをぶつけられたときにも、相手の第一次感情がわかるようになります。そうすると、自分の怒りにも、相手の怒りにも振り回されなくなっていくのです。

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戸田 久実(とだ・くみ)
アドット・コミュニケーション代表
日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学文学部卒業後、服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーションを設立。研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任する。著書に『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』など。

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(アドット・コミュニケーション代表 戸田 久実)

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