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オンライン飲み会で「やってはいけない」3つのNG行動

プレジデントオンライン / 2020年5月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Evgenii Mitroshin

外出自粛の呼びかけが続くなかで、飲み会を「オンライン」で行う人たちが増えている。自らもオンライン飲み会に興じる落語家・立川談慶さんは「オンライン飲み会は慣れないうちは疲れる。しかし、それは己を磨くチャンスでもある」という——。

■昔から日本人は厳しい環境を利用するのがうまかった

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための「緊急事態宣言」から、早くも1カ月以上がたちました。外出自粛が求められる過酷な環境下でも、なんとかやりくりをして現実との接点を見いだそうとみなさん必死であります。

一部の落語家も、ユーチューブでの配信を開始しました。本来はお客さんを前にしてやるべき芸能なのに、「無観客」という慣れない条件をのむ格好で、涙ぐましく活路を見いだそうとしています。

いや、落語家だけではありません。やはり生のお客さんありきの外食産業も同様でしょう。甚大なる痛手を食らいながらも、テイクアウトやデリバリーやら、今まで手を染めることのなかった業態に知恵を振り絞って取り組んでいます。

私の行きつけの西川口の和食店でも、おいしい磯魚料理のテイクアウトを始め、本来ならばお店に行かなければご相伴に預かることができなかった自慢の刺し盛りを、先日は一家4人で味わうことができました。思わぬコロナ禍の恩恵を家族みんなで楽しんだものです。

そういえば、かつて子供用自転車が普及していなかった時代には、いわゆる「三角乗り」がはやったことがあります。大人用自転車に跨り、サドルに腰掛けず三角のフレーム部分にむりやり斜めに身体を合わせて、立ち漕ぎするスタイルです。

こうした幼少期の風景を顧みても、日本人は厳しい環境を上手に処理するすべに長けているのかもしれません。

■あんパン、カツカレーが生まれた理由

この「三角乗り」は、昨今の「オンライン飲み会」に似ているのではないでしょうか。

無論、Zoomなどを用いたオンライン飲み会は、日本で始まったものではないはずです。しかし、「気の置けない人たちと飲みたい」という欲求と、外出自粛、自宅待機という過酷な現実との妥協点をうまい具合に結び付けているという点では、非常に日本人的な匂いを感じるのです。

妥協とは、調和でもあります。砂糖醤油のバランス、あんパンやカツカレーを生む精神性など、日本人は調和力に秀でた国民なのかもしれません。

この国が発展してきたのも、長年継続してきた伝統文化を重んじながらも、海外由来の新しい文化を、拒絶せず上手に取り込む風土があったからこそでしょう。和とは「調和」の和でもあり、「和み」でもあります。

以前、宗教学者の釈徹宗先生と対談させていただいた際、土着の宗教に外来宗教である仏教がうまい具合になじんだからこそ、日本人には原理主義が発生しにくいのではという卓見に触れました。

外出自粛の中、そんな釈先生を交えてのオンライン飲み会を私も含めて数回やりました。そこで得た知見から、これからは「こんな作法が必要なのかも」という展望をいくつか述べてみたいと思います。

■オンライン飲み会にある最大のメリット

まず、オンライン飲み会のメリットは、「飲食代金が節約でき交通費がかからない」点でしょう。自分の好きな飲み物とつまみを用意すればよく、お酒の飲めない人でも肩身の狭い思いをしなくて済みます。飲めない側としては、「アルコールを一滴も飲んでいないのに割り勘かよ」という釈然としない思いに駆られることもありません。

また、平成の前半頃までは、「上司や先輩から勧められた酒は断っちゃいけない」という昭和の風潮が、確かに残っていました。オンライン飲み会なら、この心配も無用です。これらの意味を踏まえると、「飲み会への敷居が低くなる」というメリットも挙げられます。

さらに家で飲むということは、「終電の心配がない」ことを意味します。空間を共有できないのはネックかもしれませんが、その代わりに「時間の共有ができる」。ここが一番のメリットだと思います。まだまだ続きそうなコロナへの不安が、パソコンやスマホの画面を通して時間を共有し合うことで和らぐのは、本当にありがたいものです。

そんな気持ちがあるからでしょうか、例えば「10人で企画した飲み会で、3人だけのメンバーで盛り上がった」みたいなオフラインでは起こり得る事例は発生しにくいのかもしれません。これは誰もが同じ画面に同列に映し出されているがゆえの効果でしょう。

■オンライン飲み会で「やってはいけない」3つのNG行動

今度はオンライン飲み会のデメリットを3つほど挙げてみます。まず、「酔った感じがなかなかしないこと」です。これは家で飲んでいるから当たり前なのでしょうが、やはり直に乾杯できる喜びはコロナ終息後まで待たなければなりません。

次に、「他のグループなどとの交流がしづらいこと」です。たまたま隣のテーブルで飲んでいた人たちと盛り上がるようなことが起こり得るのは、居酒屋というリアルな空間共有あればこそです。コロナ以前には何でもない偶然の出会いが、実は途轍もなくうれしい出来事だったのですね。

最後は、「オンとオフの切り替えがしづらいこと」です。多くの人が自宅でリモートワークをしているので、スーパーなどでもアルコール飲料の売り上げが増加しているそうです。昼間からでも飲めてしまうこの状況下では、仕事とプライベートの切り替えに苦労している人も多いのではないでしょうか。

これらのメリット、デメリットを踏まえて、オンライン飲み会に必要とされる作法を私なりに考えてみます。

①時間を決めよう
オンライン飲み会は切り上げ時が難しいですが、何事もだらだらやっていては楽しくありません。2時間なら2時間と時間を決めれば、メリハリが生まれます。それでももっと飲みたい人は、飲みたい人同士で盛り上がりましょう。

②無理強いをしない
特に世代の違う人を誘う場合は注意しましょう。また、みんなリモートで仕事を抱えていますから、「出入り自由」を基本にしましょう。

③プライベートには触れない
画面背景を見て、室内が散らかっていたり、あるいは小さな子供の泣き声やトイレの流す音が聞こえてきても、当人がそのことに触れないかぎり大人の対応をしましょう。特に相手が女性の場合は、セクハラ案件になる可能性だってあります。「その人の家にお邪魔している」感覚が大切なのかもしれません。ちなみに私は出オチですが「電波少年」のバーチャル背景を使用しています。

■人間の心象風景を想像する絶好のチャンスに

以上の作法を参加者が身に付ければ気持ち良いオンライン飲み会ができるでしょう。それでも、オンライン飲み会にある種の疲労感を感じているのは私だけではないはずです。それは、参加者全員が同じ話題に聞き入る、相槌が入れづらいなどさまざま理由がありますが、一番はこれほどまでに「自分の顔が常に自分に向けてさらされている飲み会」がなかったからだと思います。

しかし、不慣れなことで疲れてしまうと悲観する必要はありません。いつだってピンチはチャンスと背中合わせです。「自分は喋っている時、こういう表情になるのか」というチェックを積み重ねることは、自分自身を磨く材料になる可能性を感じます。

そして、ここからが落語家流のアドバイス。落語はこのコラムでも何度も語ってきたように、「他者目線」が基本です。何人もの登場人物を演じつつ、お客さんの反応を読み込みながら次のセリフをつなげていく芸能です。

みなさんも画面に映った飲み会の参加者の顔色を見ながら、「Aさんはどんな気持ちでいるのだろうか」「Bさんにこんな言葉を伝えたら喜ぶかもなあ」と、相手の立場になって挑んでみてはいかがでしょうか?

これは人の心象風景を想像する絶好の訓練になるはずで、きっとさまざまな発見があるはずです。このコロナ禍でちゃっかりコミュニケーション能力を磨くことができれば、まさに「ケガの功名」でもあります。

■過酷な環境だから、スクワットは欠かせない

立川 談慶『ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語』(サンマーク出版)
立川 談慶『ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語』(サンマーク出版)

ただし、長い在宅時間でかようなアルコ―ルに接する機会が増えると、運動不足と相まって、不健康を招くことにもなりかねません。巷間ではやっている「#プッシュアップチャレンジ」やら「#スクワットリレー」などに、オンライン飲み会の合間に取り組んでみるのもいいでしょう。

1時間座りっぱなしだったら、「じゃあ、ここらで5分間、みんなでラジオ体操でもやりませんか」と幹事さんが持ちかけるのも面白いかもしれません。

ともあれ、まだまだ続く過酷な環境の中でも、上手に楽しみを見いだす姿勢こそが本当の知性なのではないかと思います。エチケットを守って有意義なリモート飲み会を!

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立川 談慶(たてかわ・だんけい)
立川流真打・落語家
1965年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ワコール勤務を経て、91年立川談志に入門。2000年二つ目昇進。05年真打昇進。著書に『大事なことはすべて立川談志に教わった』など。

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(立川流真打・落語家 立川 談慶)

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