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怒れ日本人!「中国礼賛」WHOテドロスの"台湾イジメ"をやめさせろ

プレジデントオンライン / 2020年5月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fazon1

■この事態にあっても、WHOは台湾を排除するのか

この事態にあっても、WHOは台湾を排除するのか。5月18日に行われたWHOの年次総会(今年はテレビ会議方式で開催)で、台湾はオブザーバー参加を拒否された。台湾の蔡英文総統は「WHOの事務局は圧力の下、台湾を総会に招くことを再び拒んだ。厳正に抗議する」と述べている。

さすがに新型コロナ禍のさなかでの「台湾排除」には、日米豪をはじめとする各国から異論が噴出している。台湾のWHO参加は台湾の国益のみならず、コロナ封じ込めに成功した台湾の知見が国際社会の財産ともなり得るからだ。逆に言えば、今回こそ台湾の奮闘でそうした状況は免れたが、本来は国境を越えて広まる感染症への備えにおいて、台湾が国際的な取り組みの「空白地帯」となることは、台湾のみならず周辺国の脅威ともなり得る。

WHO非加盟であることは、国際的な感染症の情報を入手できないことを意味する。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行の際、感染症の情報をWHOから得られなかった台湾は、院内感染などで346人の感染者と73人の死者を出した。この時の経験と危機感が今回の新型コロナウイルスへの備えと迅速な対応を生んだのだが、そうであるならばなおのこと、台湾のコロナ封じ込め経験を、国際社会の防疫政策に生かすべきだろう。台湾もそれを強く望んでいるはずだ。

■それでも台湾がWHOに加盟できないのはなぜか

それでも台湾がWHOに加盟できないのはなぜか。それは台湾と中国の争いから生じた問題に関連している。戦後、中華人民共和国と中華民国(台湾)の両者が「中国における正統な政府はこちらだ」と言い張っていた時期があった。当初は中華民国が優勢だったが、1971 年 10 月の国連総会における、いわゆるアルバニア決議によって双方の立場は逆転する。

この決議によって「中華人民共和国」を「中国」として認め(「中国代表権」を中華人民共和国に移し)国連に加盟させるとともに、中華民国が排除された。

その後、台湾は李登輝政権下でWTOやAPECに参加、陳水扁政権では中華民国ではなく台湾としてのWHO参加を模索してきたが、実現には至らなかった。馬英九政権時代は中国との距離が縮まったことから台湾のWHOへのオブザーバー参加は認められたが、「一つの中国」原則を否定する民進党・蔡英文政権になってからは再び、オブザーバーとしての参加さえ認められない状況になっている。

■日米も台湾との国交を断ち、中国との関係を優先させてきた事実

蔡総統の言う「圧力」の主体はもちろん中国である。中国は先の台湾との争いに競り勝つために、国連やWHOをはじめとする国際機関から台湾(中華民国)を追い出し、近年、中国自身が力をつけてくると、搬出金や職員の提供、さらには国際機関の代表に中国人を据える運動に力を入れるなど、国際的な影響力を増すべく邁進してきた。

中国は台湾をあくまでも「中国の一地区」と位置づけ、台湾との国交関係を継続してきた国々に圧力をかけて断絶させ、中国との国交を結ぶように迫っても来た。日米は今回こそ台湾のWHOオブザーバー参加を支持しているが、両国とも台湾との国交を断ち、中国との関係を優先させてきた事実も忘れてはならない。

WHOに対しても、中国は搬出金を増やし、積極的に協力して関係を強化してきた。中国の本意は何であれ、中国の貢献が保健・医療体制の弱い国や地域の人々を救うことにつながってはいる。そのため中国の貢献そのものは一概に批判できるものではないが、そこを中国がうまく逆手に取っているともいえる。

■WHOに加盟したければ、「一つの中国」を受け入れろ

今回も中国は「台湾がWHOに加盟したければ、『一つの中国』の原則を受け入れろ」と迫っている。当然、台湾としては受け入れられない。しかし中国は一顧だにしない。それどころか、「WHO加盟を騒ぎ立て、感染症を政治問題化しようとしているのは台湾の方だ」と言い張っている。

WHOは中国との間で2005年に覚書を交わしている。その内容は「全世界の人に提供される」国際保健規則を、台湾については「中国が自ら適用する」というもので、台湾のWHO加盟を実質的に阻むものだとの指摘がある(若林正丈編『台湾総合研究Ⅱ―民主化後の政治―』調査研究報告書 アジア経済研究所 2008 年 第6章 台湾の国際参加 竹内孝之)。

WHO設立のもとになっている世界保健憲章にはこうある。

〈到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一である〉

台湾の排除はこの憲章に反するものではないだろうか。

■WHOテドロス事務局長の「中国礼賛」姿勢に対する非難の声

今回の新型コロナウイルス対応に関して、WHOと中国の関係は「蜜月」と批判されるに至った。中でもテドロス事務局長の「中国礼賛」姿勢に対する非難の声は高まる一方で、2020年5月1日までに「テドロス辞任を要求する請願書」に100万人以上が署名した。

いまでこそ英米などの被害が中国を上回っているが、武漢での対策や報告の遅れには明らかに問題があった。だがテドロス事務局長は当初からの中国礼賛を止める気配がない。むしろムキになって賛辞を送り続けているかのようにさえ見えるほどだ。あげくの果てにはテドロス事務局長はインターネット上で自身が人種差別的な中傷にさらされているとした上で、「個人攻撃は台湾から来ている」と発言。根拠に乏しいテドロス発言は、台湾人の神経を逆なでした。さらには台湾が排除された2020年5月18日のWHO総会で習近平国家主席が「中国は透明で責任ある対応を取ってきた」と強調する演説を行った。いくら何でもやりすぎではないだろうか、との印象はぬぐえない。

■なぜこうもテドロス事務局長は中国におもねるのか

なぜこうもテドロス事務局長は中国におもねるのか。理由として中国がWHOの大口スポンサーであることが挙げられる。WHOへの搬出金はアメリカがトップで約1億2260万ドル(約133億円)。2位の中国は中国は約2870万ドル(約31億1000万円)を搬出している。日本は3位で搬出額は約2050万ドル(約22億2000万円)だ。

金額だけ見ればアメリカが中国の4倍以上も搬出しており、テドロス事務局長が「アメリカびいき」になってもよさそうなものだが、違和感があるほどにテドロス事務局長が中国を持ち上げて見せるのは「中国を褒めることによって感染症対策への協力を促したかった」という見方もあれば、テドロス氏が事務局長に選出される際に中国の働きかけが奏功したからではないか、テドロス事務局長の祖国エチオピアと中国の親密な関係が影響しているのでは、という憶測もある。

■外形的には中国の方にリーダーシップがあるように見えてしまう

過剰な中国びいきはアメリカ、というよりトランプ大統領の機嫌を損ね、搬出金が一時凍結される事態になった。だがこうしたアメリカの姿勢は、かえって中国を利することにもなりかねない。コロナ禍で大変な時に、「WHOと歩調を合わせて事態の収束を目指そうとする中国」と「自国の事態も収拾がつかないうえに、国際的な感染症対策を取り仕切るWHOへの資金を停止して言うことを聞かせようとするアメリカ」と、どちらが国際社会のリーダーにふさわしいか、という話だ。

もちろん中国の意図を見抜いている人々であればそうはいかないが、外形的には中国の方にリーダーシップがあるように見えてしまう。日本では米中対立を歓迎し、ひいては中国が競り負ける事態を期待する向きも強いが、各国も同じように見ているとは限らない。アフリカ諸国をはじめ、経済支援などの「実弾」によって求心力を得ている中国の国際的影響力はいや増すばかりだ。

「だからといって、国際社会の保健や衛生をつかさどるWHOのような崇高な機関が、中国のカネに転んでいいのか」という指摘はあるだろう。テドロス批判が高まるのも、「本来中立的であるべきWHOがあからさまに中国に傾いているのはおかしい」と考える人が多いことの証左だ。

■国連は中立、平等は幻想だ

だが、WHOは無色透明の組織ではない。国際政治学者の詫摩佳代氏は『人類と病』(中公新書)で〈WHOは国際社会の中で独立した主体ではない。所詮、加盟国の合意によって設立された国際機関であり、財政的に加盟国に依存し、加盟国の合意に基づき、行動している〉〈国際政治の影響を受けざるを得ない〉〈アメリカや中国など、分担金負担率の多い国の顔色をうかがわなければならないことは、その最大の弊害〉としている。

そうした弊害を上手く使いこなし、感染症をはじめとする様々な脅威に対抗するのが「WHOの腕の見せ所」だと指摘する。日本人には国連などの国際機構に対しても「中立にして善であり平等である」とのイメージを抱いているが、こうした考えはあくまでも幻想に過ぎないことを、今回のコロナ騒動から学ばなければならないのかもしれない。

(長篠 つかさ)

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