ノーベル賞候補の医学博士が解説、コロナ予防に効く「手洗い、マスク」に次ぐ第3の習慣とは
プレジデントオンライン / 2020年5月30日 6時15分
※本稿は前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
■炎症のメカニズムを研究して気づいた野菜の力
私の専門は細菌学、微生物学、ウイルス学です。「微生物感染の分子病理学」「炎症のメカニズム」の研究を、日米両国で長年にわたって行ってきました。
この「炎症のメカニズム」を研究しているときに、活性酸素の生成メカニズムを明らかにすることに成功しましたが、研究の過程で、活性酸素が遺伝子の変異や細胞障害、細胞死まで引き起こしていることが分かったのです。そして変異した細胞が、ガン細胞の発生につながっていたのです。
そこで、活性酸素を中和することが、変異細胞を、ひいてはガン化細胞を作らないこと、つまり、ガンの予防になると確信したのです。ではどうやって中和すればよいのか、それには活性酸素を中和する食品成分を探し出し、効果的に体内に摂取すれば良いのではないか、と考えました。
そして抗活性酸素力のある成分を含む、野菜に注目したのです。私は今回の新型コロナウイルス予防に対しても、野菜に含まれる成分の効果的な摂取が、ガンや他の病気と同じく、極めて有効であると考えています。
■なぜ植物はガンにならないのか
草花や野菜など、植物はなぜガンにならないのか? 不思議に思ったことはありませんか?
自然界の植物は強い紫外線にさらされ、かびや病原菌や害虫の攻撃も受けているのに、自ら動いて逃げたり防衛したりできないのです。
そのため体の中に、自分で自分の身を守るしくみを整えたと考えられます。ファイトケミカルです。
直訳すると植物性化学物質であり、細胞の中に含まれる成分であり、植物の色や香り、辛み、苦みなどのもととなる機能性成分です。
トマトのリコペン、ホウレンソウ・コマツナのルテイン、タマネギのケルセチン、お茶のカテキン、ニンジン・カボチャのベータカロテンなど、私達がよく食べるおなじみの野菜に多く含まれています。
ファイトケミカルは、強い抗酸化力を持ち、ウイルスの侵入などで発生した活性酸素を中和・除去してくれるのです。
これほど頼りになるファイトケミカルですが、残念ながらヒトの体内で作ることはできません。植物由来の成分であり、私達は野菜・果物を食べることでしか摂取できないのです。
①私達の身体を作りエネルギーのもととなるタンパク質・脂質・炭水化物の三大栄養素
②体調を良くしバランスを保つビタミン・ミネラル群
③腸内環境を整える食物繊維
に加え、ファイトケミカルの役割を是非知っていただきたいのです。
活性酸素を中和・除去し炎症を抑える、免疫力を向上させる、私達の健康を守る隠れた救世主なのです。ウイルス等感染症・ガン・生活習慣病の元凶である活性酸素を除去してくれるファイトケミカルですが、さらに調べていくうちに、その調理法も大切であることに気づきました。
■野菜スープで効果は100倍に
ファイトケミカルの成分は、加熱することによって人体にずっと吸収されやすくなるのです。吸収率、抗酸化力は実験では最大100倍にも強くなることが分かっています。そしてベストな料理法はスープであることも確信できました。
新型コロナウイルス感染の予防・防衛のために「野菜スープ」が大いに助けになる、という提言を覚えておいてください。
ファイトケミカルには、人体にとってもう一つ優れた特性があります。血管を拡張し、血流を良くする働きです。
血管内の内皮細胞から一酸化窒素(NO)が放出されます。この一酸化窒素が血管の筋肉をゆるめ、拡げ、血流を増やしてくれるのです。
しかし、ここでも活性酸素が邪魔をします。NOを攻撃、酸化させてしまうので、血管は狭くなり、血圧も上昇、体のすみずみにまで血液等がいきわたらず、体調を乱すもととなります。
ファイトケミカルは、血の巡りを良くしてくれるのです。毎日の野菜スープは、循環器系の不調にも有効な生活習慣なのです。
■コロナウイルスから肺炎にいたるメカニズム
新型コロナやインフルエンザにかかって亡くなったと聞くと、ウイルスが人を攻撃して死にいたらしめたと思いがちですが、実はウイルスはきっかけにすぎないのです。私達は、マウスを使って、このことを証明しました。
実験で明らかになったのは、マウスにインフルエンザウイルスを感染させると、そのマウスは死ぬのですが、マウスの死体からはウイルスが全く見つからないということでした。
なぜなら、ウイルスによって直接マウスが殺されたのではなく、感染後の炎症反応によって、つまり、宿主であるマウスの持つ防御反応の過剰な流れ弾で、自身が傷ついて肺炎を発症していたからです。
これを私達は「ウイルスなきウイルス病」と呼んでいます。1989年、世界で初めてこの事実を突きとめ、科学雑誌『サイエンス』に発表しました。
マウスとインフルエンザの実験で分かったことは、マウスがウイルスに感染後、数日で大量の活性酸素が肺に発生し、肺炎が起こったということです。
発生した活性酸素量は、非感染のマウスの200~600倍もありました。
ウイルスが侵入すると、免疫を司(つかさど)る白血球から、ウイルスを殺すための活性酸素が猛烈に放出され、ウイルスは全滅したのです。
ところが、急激に増えた活性酸素が肺の細胞や組織をも傷つけ、炎症が起こり、発熱や肺炎にいたります。活性酸素はまさに諸刃の剣なのです。
ウイルスは死にいたる病気の引き金ではありますが、直接の病因・死因は増えすぎた活性酸素だったのです。つまりウイルス侵入後でも活性酸素を少なくすることができれば、発症の予防が可能なのです。
以上は実験室の清浄な雑菌のいない環境でのデータですが、現実の生活環境にはあらゆる細菌、病原菌が多く浮遊しています。それらの菌は、インフルエンザウイルス感染で傷ついた上気道の細胞に付着し、容易に血中に入り、複合感染(重感染)し、致命的になるわけです。もうこのときは手遅れになりうる状態です。
ウイルスには抗生物質は効かないといわれていますが、こう考えると、細菌や病原菌に対して効く抗生物質の併用も必要だといえます。
■野菜スープの力でお手軽に免疫力をアップしよう!
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスが猛威をふるっているとき、感染しないためには、室内の換気に気を配る、手洗いやうがい、マスク着用などももちろん大切です。
でもさらに活性酸素を除去するために、ファイトケミカルを豊富に含む野菜スープを飲むことも忘れないようにしましょう。
たとえウイルスに感染してしまったとしても、活性酸素を除去する「ファイトケミカル野菜スープ」を習慣的に飲んでいれば、軽症ですむか、早い回復が期待できます。
寒い冬の季節でしたら鍋物や温かいスープは食卓に上りやすく、食事としては理想的です。また、毎朝の味噌汁も、野菜をたっぷり入れて作ると良いでしょう。
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医学博士
ハーバード大学がん研究所研究員を経て、熊本大学名誉教授、バイオダイナミックス研究所理事長。大阪大学招聘教授、東北大学特別招聘プロフェッサー。副作用のない抗がん剤の研究で、ノーベル化学賞候補となる(2016年)。
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(医学博士 前田 浩 写真=iStock.com)
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