あなたvsストレス「ステイホームで"コロナ太り"に陥っていないか」
プレジデントオンライン / 2020年5月30日 11時15分
■「外出自粛でイライラ」が万病のもとに
“コロナ太り”に陥っていないだろうか。長期化した外出自粛要請によって、それまでの日常からライフスタイルが変化し、家にこもって食べたり飲んだりを繰り返す――。
「コロナが流行した最初の頃は急性ストレスによって交感神経が優位になり、食欲が減退気味の方が多かったのですが、長期化で慢性ストレス→過食になっている方が多く見られます」
管理栄養士の望月理恵子氏がそう指摘する。ストレスが慢性化すると、ストレスホルモンの影響で脂肪がためこまれやすくなるという。
実はストレスは精神的なものだけではない。気候の変化や睡眠不足、騒音、紫外線など、ちょっとした負荷で体はストレスを受ける。“ストレスに強い体”になるにはどうすればいいのか。
食事面では「カルシウム」摂取が重要だ。これは、よくいわれるような「カルシウム不足がイライラを招く」ためではない。なぜなら血液中のカルシウムは、少しでも足りなくなればカルシウムの貯蔵庫である骨から溶け出し、血液中に補充されるからだ。つまり、血液中のカルシウムは常に一定に保たれるように管理されている。だが、長期的にストレスを感じてイライラすると、カルシウムが不足しやすくなってしまう。再び望月氏の話。
「ストレスを受けると交感神経優位となり、副腎皮質ホルモンの分泌が活発になります。そのホルモンの働きが小腸でのカルシウム吸収を妨げ、尿とともにカルシウムを排出させることがあるのです。長期的にカルシウムが溶け出す状況は、骨粗しょう症をはじめ高血圧症、糖尿病などを引き起こす可能性があり、体に悪影響です」
カルシウムそのものが脳神経の興奮を抑える働きがあるため、日頃から体に蓄えておくと、ストレスを受けたときの“備え”になるという。乳製品やゴマなどに豊富に含まれる。
また、イライラを抑えたいなら、脳神経を安定させる働きがあるギャバが含まれているものを。発芽玄米やヨーグルト、納豆などの発酵食品が代表的だ。ホットのギャバロン茶も、消化管を温め、リラックスの働きがある副交感神経を刺激するため心が落ち着く。一方で、気持ちが沈みがちなときはカレーやキムチ料理などを食べると交感神経が刺激されて元気が出やすい。
だるくてやる気が出ない、心身に疲れがたまっていると感じるときは、鶏ムネ肉がイチオシ。鶏ムネ肉に豊富に含まれる成分「イミダゾールペプチド」を1日2回、200ミリグラム、2週間取り続けると、抗疲労効果がある。
「肉の量に換算すると1日100グラム程度。市販のサラダチキンをストックして、ラーメンの具材やサラダにトッピングするといいでしょう。肉体疲労にも、精神疲労にも効きます」(同)
イミダゾールペプチドは最高時速100キロで泳ぎ続けるマグロやカツオ、数千キロの距離を休むことなく飛び続ける渡り鳥の翼の付け根など、動物のもっとも酷使される部位に含まれる成分。鶏肉を毎日食べるのが大変なときは、サプリメントで取ってもOK。
それでは続いてストレスに対抗するサプリメント(サプリ)について解説しよう。まずサプリは「食品」の扱いで、国が科学的な根拠と効果を認めた「薬(医薬品)」とは違うことを頭に入れておきたい。そのため、薬のような表示ができないという規制がある。パッケージに飲む時間などの「用法」を記載せず「一日に◯粒程度」といった表現が多い。そういうと「食品だからたくさん飲んでも大丈夫」ととらえる人がいるが、特定の成分を凝縮したサプリは多量摂取により、かえって体に害を及ぼすことがある。
■ビタミンCのサプリは忙しいときの強い味方
もちろん良い面もある。病気と診断される状態になる前に体をサポートできる点だ。管理栄養士で名古屋経済大学准教授の早川麻理子氏が解説する。
「例えば親が倒れて介護をするときに、菓子パン生活が続いたとします。“一時的な無理”に対して、体は何とか健康を維持しようとする仕組みが備わっていますが、栄養素が足りない状態が続けば細胞や臓器に負担がかかり、免疫力も低下する。忙しくて炭水化物主体の食事が続くときは『マルチビタミン&ミネラル』を取るといいでしょう。ビタミンやミネラルは、炭水化物(糖質)や脂質をエネルギーに代謝するために必要なんです。さらに疲れたなと思うときは、『ビタミンB群』のサプリを追加してください」
ビタミンB群はB¹、B²、B⁶など8種類の総称。炭水化物など糖を代謝するにはビタミンB¹、脂質代謝にはB²、タンパクの代謝にはB⁶が必要だ。糖や脂質などを有効に利用し、体を元気に動かす代謝酵素を活性化するにはビタミンB群が必須といえる。
また、ストレスを感じるときはビタミンCの消耗が激しいので、そういったときもサプリで補ってもいい。
「ビタミンCはおよそ4時間で尿で排出されるので、1回300~500ミリぐらいの量を朝晩に分けて飲むといいでしょう。忙しく、ストレスが強いときのみサプリを利用して、余裕があるときはできれば自然の野菜や果物を摂取してください。ポリフェノールや食物繊維など、食品にはどんなサプリにも勝る多様な力があります」(早川氏)
サプリは特定の栄養素を抽出したもので、例えばトマトの栄養素を丸ごと含むようなサプリはない。万能品ではないということだ。食品でいうとビタミンCが豊富なものは果物や、菜の花、赤パプリカなどの野菜。
■コロナ太りに対する、直接的な対策
さて冒頭でふれたコロナ太りに対する直接的な対策はあるだろうか。ポイントは、コロナ流行前の日常と「2時間以内の誤差で動くこと」だ。
「年末年始も、いつもと違う日常で太ってしまう方がいるでしょう。同様に今も、自宅にいるとだらだら過ごしやすいと思いますが、なるべく朝決まった時間に起きて同じ時間に仕事や家事を行い、決まった時間に食事を食べ、決まった時間に寝ることが重要です。電車を使って会社に出勤していたときと同じ時間の過ごし方をするのが第一です」(望月氏)
ここには私たちの体内の臓器やホルモンを機能させる「時計遺伝子」の存在が深く関わる。体内リズムに詳しい明治大学農学部の中村孝博准教授が「人はほとんどの全身の細胞の中に、時計遺伝子が作り出す『体内時計』を持ち、24時間を刻んでいる」と説明する。体内時計は体の各機能が最も働くべき時刻にピークを迎えるように整えてくれているのだ。例えばいつもの起床時間が近くなると血圧を上昇させ、目覚めた直後から活動できるように。次回は体内時計からみる“病を発症しやすい時刻”を紹介したい。
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ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)など。
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(ジャーナリスト 笹井 恵里子 写真=PIXTA)
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