医師「新型コロナウイルスとの闘いは長期戦になる」
プレジデントオンライン / 2020年6月13日 11時15分
■新型コロナウイルスとの闘いは長期戦になる
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威が世界を襲っている。日本でも2020年4月7日に緊急事態宣言が発令、外出自粛や店舗の休業要請が行われる事態になった。現状、感染者の増加は歯止めがかからないが、治療薬もなく高齢者を中心に重症化例も出ている深刻な事態が続く。
ネットやテレビでは連日、様々な情報が飛び交っているが、時には明らかなデマ情報がまことしやかに流布される。普段と勝手が違う在宅ワークや、休校による子供の世話といった状況の変化についていくだけでも大変だ。自粛要請からひと月が過ぎ、体力的にも精神的にも疲れが見え始める頃だろう。
コロナウイルスに負けない強い体をつくるためには、何が必要なのか。寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学を専門とし、免疫力について研究してきた白澤卓二医師に取材した。「新型コロナウイルスとの闘いは長期戦になる」と語る白澤医師。感染症流行という「有事」に慌てない心と体をつくっておくための準備とは――。
■インフルエンザとは格が違う
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっています。流行開始当初は季節性インフルエンザと比較して楽観視する向きもありましたが、全くの間違いです。新型コロナはインフルエンザとは格が違う感染症であることを、知らなければなりません。
新型コロナの特徴として、インフルエンザに比べて罹患後に肺炎を起こすケースが多く、広い世代にわたること、さらに重症化が早いことが挙げられます。この重症化と感染者増のスピードに治療が追い付けなければ、感染症であれ別の病気であれ、病院を訪れた患者に適切な医療を施せなくなる。欧米で起きている「医療崩壊」とはこうした事態を指します。
新型コロナのウイルスが人と人との間で感染する以上、最大の防御策は「人に会わないこと」です。
もう1つは、ウイルスに負けないよう、自身の体の免疫力を高めることです。免疫には自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は侵入してきた病原体に反応する機能で、獲得免疫は1度感染した病原体を記憶し、次の感染時に病原体を排除する仕組みです。こうした免疫機能は、後述するように継続的な生活習慣によって機能を高めることが可能です。
もちろん免疫力を高めたからといってどんどん外に出たり人に会ったりしていいわけではありません。ここは誤解のないようにしてください。
免疫力を高める食事や生活習慣についてお話しする前にまず知っておいていただきたいのが「ストレス」の存在です。
コルチゾールという物質があります。副腎皮質から分泌されるホルモンの1つで、肝臓で糖を作ったり、脂肪組織で脂肪の分解などの代謝を促進する、生体にとって必須のホルモンです。このコルチゾールはストレスを受けたときに分泌が増えることから「ストレスホルモン」とも呼ばれています。ストレスを感じると、脳の視床下部が「ストレスに対処せよ」という指令を副腎へ発信します。これは体が活発に動ける状態にするために心拍数や血圧を上げて興奮状態にする機能ですが、過剰に分泌されると血圧や血糖値が上がりすぎたり、副腎が疲れて必要なときに十分な量を分泌できなくなり、免疫力が低下してしまうのです。
つまり、どんなに食事やサプリ、運動などで免疫力を備えても、ストレスによってコルチゾールが過剰に分泌されれば水の泡なのです。
新型コロナとの闘いは長期戦に及ぶ可能性があります。そしてそれは、ストレスとの闘いでもあります。情報に振り回されず、「自分には食事や健康管理の正しい知識と、免疫力が備わっているから慌てる必要はない」と思える心身であることが、感染症を遠ざける第一歩なのです。
日本でも20年4月以降、「医療崩壊」という言葉が聞かれるようになりました。「何かあれば病院に行けばいい」「日本は国民皆保険で医療費も安価だから大丈夫だ」といった前提が揺らいでいるのが現状です。これを機に、生活習慣を見直し、自分の力で危機を乗り越えるための“セルフメディケーション”意識を高めることが求められています。
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白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。90年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。順天堂大学大学院教授などを経て、白澤抗加齢医学研究所所長。お茶の水健康長寿クリニック院長。千葉大学予防医学センター客員教授。近著(翻訳)に『SUPER IMMUNITY』がある。
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(白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長 白澤 卓二 構成=梶原麻衣子 図版作成=大橋昭一)
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