ノーベル賞候補の医学博士が教える「ウイルスやガン予防に効く」野菜の種類と食べ方
プレジデントオンライン / 2020年5月31日 6時15分
※本稿は前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
■ウイルス予防のために知るべきは「吸収学」
最近では野菜が健康に良いという情報は、多くの雑誌やメディアから発信されていますが、改めて健康食としての野菜に光を当ててみたいと思います。
これまでの栄養学では食材が持つ栄養素を、試験管の中でしか調べていませんでした。しかし、実際にヒトの身体の中に入って吸収されて初めて、その栄養素が活躍できるのであって、吸収されないで腸を通過し、便として排出されてしまっては、まさに宝の持ち腐れ、何の役にも立っていないことになります。
大切なのはどの野菜にどんな栄養素がどれくらい入っていて、有効な成分をヒトの体内でどうすれば効率よく吸収できるかを研究することです。
栄養学も大事ですが、さらに大切なのは「吸収学」なのです。
1日に必要なカロリーも、ビタミンやタンパク質の量なども、実際には食べたものが100%吸収されるわけではありません。その人その人の体調や体質によっても異なります。また、空腹時(絶食後)と、そこそこお腹いっぱいのときでは、吸収率は大きく異なります。同じ食材でも、調理法によって差が出ます。
いかにしたら、口から入れた食べ物の吸収率を高めることができるのか、それぞれの食材が持つ栄養成分を効率良く身体に取り込めるのか? 今こそ吸収学の視点と工夫が必要だと思います。
■キャベツは外側、豆類は黒豆と小豆が病気予防に効果的
どんな野菜がウイルスやガン予防に効果的なのでしょうか。私達の研究では、一般に緑色の濃い野菜が活性酸素の中和能力・ファイトケミカルの力が強いことが分かっています。
すなわち、同じハクサイやキャベツでも内側の白い部分よりも外側の緑が濃いところの方が有用です。またハウス物よりも紫外線を多く受けた露地物の方が、抗酸化力がはるかに強いことも分かっています。
ダイコンやニンジンは根よりも葉の方が50~100倍も強く、豆類では黒豆、小豆、緑豆、大豆が特に高い値を示しました。中でも有色の黒豆と小豆が最も強く、次いで緑豆、大豆の順となっています。
ごま、菜種、ナッツなどのいわゆる種子類も有能な食品です。植物の種は、もともと子孫を残すための素ですから、DNAや子孫を育てるための栄養素がびっしりと詰まっており、命そのもののようなものです。
酸素や光で損傷しないように、強力な抗酸化作用を持つ防御成分も含まれているのは当然といえば当然でしょう。
根菜ではレンコン、サトイモ、サツマイモ、ジャガイモなどが良く、切り口が褐色に変わるものがお勧めです。褐色になる理由はポリフェノールが含まれているからで、空気に触れると褐変するのです。根菜類はファイトケミカル以外に、食物繊維の含有量も多く、毎日の食卓に是非取り入れたい野菜です。
野菜スープに豊富に含まれる水溶性食物繊維、不溶性食物繊維は、腸内の善玉菌を増やして免疫力を高めてくれることが分かっています。
さらに私達は、水溶性食物繊維が白血球を直接活性化することも確認しています。ファイトケミカルの力にプラスして、野菜スープは、ガンや感染症予防の強力な助っ人になるのです。
■生より野菜スープが効果的な理由
ガン予防やウイルス防御に良い野菜が分かったら、次はどう効率良く身体に吸収するかです。
野菜は、当たり前ですが植物細胞でできています。この植物細胞は、細胞をくるむ膜とそれをまるごとくるむ細胞壁の二重構造になっています。一番外側の壁はカプセル様で、硬い構造物。私達が少々噛かんだくらいでは容易には壊れません。
この野菜の細胞壁は生の状態ではすりつぶしてもなかなか壊れませんが、加熱するとすぐに破裂して、中の有効な成分・ファイトケミカルや食物繊維が外に出てきます。生ですりつぶすよりも、抗酸化力は10倍から100倍にもなります。
野菜ジュースやスムージーが人気ですが、ジューサーやミキサーで処理しても、実は細胞壁はほとんど壊れないのです。
つまり、野菜は加熱して食べる、温野菜に限るのです。野菜の栄養成分を吸収するには煮る、炒める、蒸すなどの加熱によって、まずは細胞壁を壊してから食べることが大切です。
特に5分以上煮込むと、その煮汁にはウイルスやガン予防に大切な成分がたくさん抽出され、余すことなくいただけます。私が野菜スープを推奨する大きな理由です。
私の体験からも、スープを作ることは、比較的簡単ですし、煮汁も活用でき、冷凍すれば作りおきもできるので、特にお勧めです。
■鍋を雑炊でしめるのは、健康的かつ科学的
野菜スープの中には、野菜の持つ豊富で重要な抗酸化成分・ファイトケミカルのポリフェノールやフラボノイドがたっぷり入っています。
加えて、ビタミンCや葉酸、ビタミンK、さらに多くのカロテノイドなども溶け出しています。
野菜のゆで汁や野菜をたくさん入れた鍋物の残りのスープこそ、栄養素の宝庫なのです。昔から味噌汁は具だけでなく汁も残さず飲み干せといわれ、鍋をしたら、最後の雑炊まで食べるのも理にかなっていたのです。
では、火を使わないヒト以外の動物はどうやって植物の栄養を取り入れてきたのでしょうか? 実はヒトとヒト以外の動物とでは、食物である植物の消化力に大きな差があるのです。
植物の細胞壁は、いくつかの繊維質成分からできています。ところが主要成分であるセルロースを消化分解する酵素(セルラーゼという)を、ヒトの消化液は持っていないのです。
一方草食性の動物は、消化管の中にセルロースを分解する微生物を棲(す)まわせていて、身体の中の消化管で発酵させて分解し、栄養素を吸収できているのです。
人間だけが火を使い、調理して食べるようになったのも、大きな意味があったのかもしれません。
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医学博士
ハーバード大学がん研究所研究員を経て、熊本大学名誉教授、バイオダイナミックス研究所理事長。大阪大学招聘教授、東北大学特別招聘プロフェッサー。副作用のない抗がん剤の研究で、ノーベル化学賞候補となる(2016年)。
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(医学博士 前田 浩 写真=iStock.com)
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