医師が教える「スーパーで買える免疫力UPミラクルフード」

プレジデントオンライン / 2020年6月12日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AlexRaths

■今最も注目を集めている「ケトン食」

感染症予防と食について今最も注目を集めているのは「ケトン食」です。元はてんかんの治療食として臨床応用されてきたダイエット法(ケトジェニック・ダイエット)で、体内で生成されるケトン体に注目した食事法を指します。

ケトン体は脂肪細胞が分解されるときに生じる物質で、体内でブドウ糖がなくなったときにはじめてエネルギーとして利用できる物質です。血中のブドウ糖がなくなると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンからブドウ糖が作られます。それも不足すると今度は肝臓がたんぱく質を分解したアミノ酸からブドウ糖を合成しますが、その頃には全身の細胞の主なエネルギー源は脂肪酸を分解したケトン体に切り替わっています。つまり、糖の原料である炭水化物を減らすことが、ケトン体をエネルギー源とする「ケトン回路」が働く状況をつくり出すのです。

これまでケトン食は認知症予防や減量効果などで注目されてきましたが、免疫力についても研究が進んできました。そして19年末、米国エール大学医学部の岩崎明子教授らの研究チームが、ケトン食にインフルエンザに対する予防効果があることを報告。マウスを使った実験ですが、ケトン食を与えられたマウスはそうでないマウスに比べて、インフルエンザによる死亡率が優位に低かったというのです。研究チームによれば、ケトン食を与えられたマウスの肺には細菌感染、ウイルス感染や細胞のがん化に伴うストレスに反応して活性化されるガンマ・デルタT細胞が増加していたといいます。

■免疫細胞が活性化する「フィトケミカル」

ガンマ・デルタT細胞とは、免疫細胞のうち、がん細胞と闘うT細胞の一種で、ナチュラル・キラー細胞などと同様に異常のある細胞を見つけて攻撃する細胞です。皮膚、肺胞、腸管などのバリアとして働き、全身に異常がないか、くまなく監視する役割を担っています。

ケトン食を取ることでガンマ・デルタT細胞が増加し、インフルエンザウイルスが肺に入り込むのを防いだというわけです。

では具体的にはどういった食事が「ケトン食」なのでしょうか。「白澤式ケトン食」は、炭水化物を減らし、様々な種類の肉・魚・野菜を積極的に食べるよう指導しています。いきなりすべての炭水化物を我慢する必要はありません。まずはパンや麺類を控え、白米を玄米にするところから始めてください。

ケトン体を増やすには脂肪の少ない肉の赤身や、羊肉(マトン)を食べるといいでしょう。魚であればイワシやアジ、サンマ、カツオなどの青魚など。サバの水煮缶などもおすすめです。

たんぱく質と脂質は、ホルモンの材料となるため、「ストレスホルモン」であるコルチゾールを分泌する副腎を元気にしますから、こうした食事は二重の意味で免疫力の向上に役立ちます。

また最近、免疫細胞は多種多様な「フィトケミカル」によって機能していることがわかってきました。フィトケミカルとは野菜や果物に含まれており、植物が紫外線や昆虫などの有害なものから身を守るために作られた色素や苦み、香り成分のことです。ポリフェノールやカロテノイドのほか、フラボノイド、セサミン、カプサイシンなどがフィトケミカルの一種です。

これらを多く含むのがブロッコリーで、実に200種類以上のフィトケミカルを含んでいます。ブロッコリーはアブラナ科ですが、アブラナ科の植物にはほかに小松菜、チンゲン菜、カリフラワー、ルッコラ、キャベツなども含まれます。このほか、玉ねぎやきのこ類、ベリー系の果物、種子などにもフィトケミカルが多く含まれており、免疫力を高めます。これらをメインに様々な種類の野菜、果物を積極的に取りましょう。

市販の野菜ジュースや濃縮還元の果物ジュースでは、野菜不足を補うことはできません。食物繊維は取れないし血糖値を上げるので避けたほうがいいでしょう。

それよりも、ほんのひと手間で野菜の栄養を取れるスムージーやベジブロスを作りましょう。

スムージーは野菜と果物をミキサーにかけたジュースのことで、美容方面では少し前からブームになっていますが、野菜の成分を体に取り込み免疫力を高める手軽な方法として、注目されています。

例えば小松菜とリンゴ、ヨーグルトをミキサーにかけたグリーンスムージー。菜の花とグレープフルーツ、ヨーグルトを合わせた春らしいスムージーなどもおすすめです。果物をジューサーにかけて果汁だけを飲む人もいますが、これは食物繊維という大事な部分を丸ごと捨てることになりますので避けましょう。

ベジブロスとは、フィトケミカルが多く含まれているものの、普段なら捨ててしまう野菜の皮やヘタ、茎などの部分や切れ端を煮出すスープです。使う野菜は何でもよく、ニンジンや玉ねぎの皮、ブロッコリーの茎などをたっぷりの水と一緒に鍋に入れて沸騰させ、20分ほどぐつぐつ煮る。ざるで濾したらできあがり。

このスープには、例えばニンジンならカロテン、玉ねぎならケルセチンといった、野菜に含まれる栄養成分が溶け込んでいます。

煮出すことで野菜の細胞内にあるフィトケミカルが細胞外へ溶け出すため、吸収効果も断然よくなります。スープはそのまま飲むのはもちろん、みそ汁やカレーのベースになる万能だしとして使えます。また、ヨーグルトや豆乳に加えることで、栄養素の詰まったヘルシードリンクとして手軽に楽しむこともできます。

■正しい食習慣を身につけて、免疫力を高めていくことが大切

さて、ここまで免疫を高める食事についてお話ししてきましたが、「免疫と食」といった際に気を付けなければならないのは、短絡的な情報です。未知のウイルスを前に不安の募る人たちの間では、どうしても「○○を食べれば免疫力が上がってコロナに罹りにくくなる」といった情報が拡散されやすくなります。

ひとたびテレビなどでこうした情報が報じられると、スーパーからその食材が姿を消すといった現象さえ起きますが、免疫力は何かを食べればたちどころに養われるというものではありません。体は食べたものでできていますから、インスタント食品やファストフードで済ませるなど普段の食生活が乱れているのに、これらの食事に納豆だけプラスしても焼け石に水です。

新型コロナウイルスとの闘いは長期戦です。今から正しい食習慣を身につけて免疫力を高めていくことが大切です。

野菜、肉、魚をメインにバランスよく食べよう

■手軽にできる一石三鳥の食べ方

免疫力のアップに欠かせないのが発酵食品ときのこ類です。共通点はどちらも「菌」であること。

発酵食品は腸内環境を整える機能を持っています。

腸内には100兆ともいわれる数の細菌がおり、乳酸菌やビフィズス菌のように発酵することで有益な物質を生み出す善玉菌と、大腸菌のような悪玉菌、どちらでもない日和見菌に分類できます。善玉菌が増えると腸の働きがよくなり、悪玉菌が増えると腸内環境が悪化します。

発酵食品は発酵の過程で乳酸菌を増殖させるため、食べることによって腸内の乳酸菌が増え、腸内環境が整うのです。全身の免疫機能のうち60~70%程度が腸に集まっているといわれますから、腸内環境は免疫力を大きく左右するのです。

免疫細胞の約7割が集まる腸内環境を整えることが大切!

発酵食品で手に入りやすいのは、麹、味噌、醤油、醸造酢、みりん、魚醤、チーズ、ヨーグルト、発酵バター、塩辛、納豆、漬け物、鰹節、キムチ、甘酒、マッコリなど。折しも会食が減り、家で晩酌する機会が増えている今、マッコリを片手にキムチをつまむのも1つの手です。

現代では忙しい、寝ていたいという理由で朝食を取らない方も多いのですが、チーズだけ、ヨーグルトだけなら食べる時間もあるはず。朝にこうした発酵食品を取ることで、睡眠中に増えやすい悪玉菌をやっつけてリカバリーすることができます。ハーバード大学の研究では、ヨーグルトを毎日食べる人は食べない人よりも糖尿病のリスクが18%減少するという結果が出ています。

納豆に含まれる納豆菌は、腸内の善玉菌を元気にします。低温の状態では納豆菌の活動はストップしていますので、冷蔵庫から出して常温で20分程度置いて、納豆菌が増えてから食べるのがおすすめです。

麹菌はでんぷんやたんぱく質などを分解する酵素を生成するため、体内での消化、吸収がしやすくなります。また発酵の過程で数々のビタミンを作り出します。米麹の場合はビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、イノシトール、ビオチンなど、健康維持に欠かせないビタミン類を作ります。

多彩な栄養素や酵素を取るためにも、麹は毎日、別の発酵食品や野菜と一緒に食べるのが効果的です。熱に弱く、60度以上に加熱すると不活性化してしまうため、生のまま味噌と混ぜて野菜ディップとして食べれば一石三鳥です。

きのこ類はβ-グルカンという免疫機能を活性化する成分を豊富に含んでいます。β-グルカンはきのこに特有の食物繊維「キノコキトサン」の1つ。腸の粘膜にある受容体を通して、免疫の伝令役である自然免疫系のマクロファージ(抗原提示細胞)に直接働きかけて活性化を促します。するとマクロファージは獲得細胞系のB細胞、ヘルパーT細胞などを活性化させ、抗体を作って病原菌を攻撃したり、ウイルス感染細胞を攻撃したりする。つまり、免疫系に対する最初の指令を行う部分にβ-グルカンが直に効くのです。

また、発酵食品もヘルパーT細胞の働きを促しますから、きのこの味噌汁などは免疫力に効果絶大です。

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白澤 卓二(しらさわ・たくじ)
白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。90年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。順天堂大学大学院教授などを経て、白澤抗加齢医学研究所所長。お茶の水健康長寿クリニック院長。千葉大学予防医学センター客員教授。近著(翻訳)に『SUPER IMMUNITY』がある。

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(白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長 白澤 卓二 構成=梶原麻衣子 写真=マッシュルームソフト「食品素材写真集」)

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