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「新卒でいきなり年収600万」進学も就職も強い"9月入学インター"のお得度

プレジデントオンライン / 2020年5月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/akenobu

新型コロナの影響で、「9月入学」のインターナショナルスクールや国内外のボーディングスクール(全寮制)が注目を集めている。一般的に学費は高額だが、格安のオンラインコースや学費無料のインターも登場している。「インター生向けの就職枠もある」という現実とは――。

■コロナ禍で「9月入学」のインターナショナルスクールに注目が集まる

新型コロナウイルスの影響で、日本経済は深刻なダメージを受けている。

だが、振り返ってみれば新型コロナ感染拡大前から、わが国の衰退は始まっていた。2018年度のGDPは世界第3位だが、国民一人当たりに換算すると経済協力開発機構(OECD)加盟36カ国中20位。1997年を基準にした実質賃金の国際比較では、先進国の中で唯一日本だけが低下している。

超少子高齢社会による人口減もあり、大胆な移民政策でも行わない限り、GDPは下がり続けていくと予測する専門家もいる。

このような状況から近年では、富裕層の間で「将来、日本でしか働けないようでは、貧しくなってしまう」「世界のどこでも生きていけるようにしてやりたい」と、わが子をインターナショナルスクール(以下、インター)や国内外のボーディングスクール(全寮制学校/以下、ボーディング)に進学させるケースが増えている。

インター専門メディア「インターナショナルスクールタイムズ」の村田学編集長は次のように語る。

「もともとは海外駐在経験のある親が、赴任先で受けた海外の教育を継続させるために帰国後も子どもをインターに通わせることがほとんどでした。しかし最近では、海外経験のない親も増えています。経営者や企業役員、医師といった方々です。インターでは、授業はすべて英語で行われるので、高校卒業までにネイティブ並みの英語力と学力が身につきます。カリキュラムは国際バカロレアやイギリスのシックスス・フォーム、アメリカのコモンコアなど、国際的に通用する内容になっていて、卒業後はスムーズに海外大学にアクセスできる点が人気です」

■富裕層は日本の学校からインターやボーディングにシフト

いま話題になっている「秋(9月)入学」も、インターでは当たり前だ。

「インターはもともと外国人駐在員のお子さんのための教育機関ですから、卒業後は母国(欧米)の大学など進学先に入れるようにほとんどの学校が秋入学、初夏卒業になっています。日本の学校から海外進学しようとすると半年間のタイムラグが出てしまう。この点もインターならラグが発生せず、それも人気の理由の一つになっていると思います」

9月入学(新学期)にするかどうか、と文部科学省が判断をもたもた遅らせている間に、富裕層の保護者の中には、わが子を日本のインターやボーディングに進学させる決意を固めているケースも増えるだろう。

ちなみに、東京大学は2012年に秋入学を検討したことがある。結局、学内で反対にあって頓挫した。その直後から、東京大学は世界大学ランキングの順位を落としていったと村田さんは指摘する(2013年27位→2019年42位)。

「世界大学ランキングでは外国人生徒比率などが評価に含まれるため、外国人が留学しにくい日本の大学は軒並みランキングを落としました。今回(のコロナの影響で)、秋入学が導入されることになれば、これを挽回するチャンスになることは間違いありません」

■日本でも、インター出身者の初任給は「ケタ違い」

実はあまり知られていないことだが、インター生は国内の大学に進学する際も有利だ。

「慶應義塾大学や早稲田大学、上智大学などの私学のトップ大学だけでなく、東京大学、京都大学など、国立のトップ大学が『バカロレア入試』を実施しており、国内のインター生が多く受験しています。一般入試に比べると競争率は低いので、国内大学を選ぶインター生も多いです」

就職も、かなり“おいしい”。英語が堪能なら、日本の企業でも採用時のアドバンテージとなり、海外企業にも就職する選択肢も持てる。さらにインター生には特別枠があるという。

「外資系企業の日本法人はインター生向けの特別枠を設けていることがあります。こういう会社には、現地採用の日本人と、経営幹部であるグローバル採用の外国人がいます。両者をつなぐのがインター生の役割です。給与体系も例えば、日本人が初任給月22万円なら、インター生は年俸600万円からといった具合にまったく異なります」

大学進学でも就職でも、有利なインター。卒業生にはどんな人たちがいるのだろうか。たとえば、こんな人たちがいる。

●メルセデスベンツ日本法人代表の上野金太郎氏(アメリカンスクール・イン・ジャパンから早稲田大学社会科学部卒業)
●ソニーの元社長で、現在はシニアアドバイザーの平井一夫氏(アメリカンスクール・イン・ジャパン→国際基督教大学教養学部卒業)
●エンジェル投資家で、元MITメディアラボ所長 伊藤穰一氏(西町インターナショナルスクールからアメリカンスクール・イン・ジャパン→タフツ大学コンピューターサイエンス専攻中退、シカゴ大学物理専攻中退など。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士号取得)

グローバル企業のトップなど、世界をまたにかけて活躍している人が多い。

紙幣
写真=iStock.com/StockGood
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/StockGood

■超名門パブリックスクール日本上陸で世界のエリートへの道が拓かれる

インターのニーズが高まる中で、日本国内の学校数も増えている。

インターは、日本の学校教育法に定められた学校や株式会社による運営が混在していて、全校が文部科学省の管轄下にあるわけではない。そのため、正式なデータの集計はないが、インターナショナルスクールタイムズの概算では、2020年2月現在、保育・幼稚部(プリスクール)が481園に約4万人が、小・中・高等部62校には約5000人の生徒が通っている。ポイントは、ここ数年で新規開校が相次いでいること。子供の進路を考える時の選択肢として急浮上しているのだ。

2022年8月にはイギリスの超名門パブリックスクールであるハロウ校が岩手県安比高原に、翌23年にはラグビー校が東京に日本校を開校予定だ(ラグビー校は、北海道にも生徒たちが利用できるキャンパスを開く予定)。

パブリックスクールとは、イギリスの私立学校で上位10%にあたるエリート養成校のこと。中でも別格なのが「ザ・ナイン」呼ばれる学校で、ハロウ校、ラグビー校はその一角を成す。2校の日本上陸は、世界のリーダーへの道が拓かれることを意味し、大きなインパクトを与えそうだ。

超名門パブリックスクールが日本に開校する理由を、前出・村田編集長は次のように語る。

「両校とも日本はもちろんですが、中国、韓国、台湾、シンガポール、マレーシアなどアジア全域から生徒を集めることを考えて、日本校を開校しています。アジアの富裕層が進学を考えるとき、イギリスやアメリカのボーディングスクールよりも、距離的に近い日本のほうが行かせやすい。大学進学を考えた時も、たとえば中国からイギリスやアメリカの名門大学に出願するより、日本の学校から出願するほうが競争率は少なくて行かせやすくなるので、迂回ルートとしても重宝されると考えています」

ラグビー校

■ボーディングに入れるなら費用は年間600万円は覚悟

わが子を世界で「食べていける子」にするためにインターに入れたいが、入学するには高い英語力が求められる。

「教授言語が英語になるので、中学校からの入学となると、抽象的な概念を英語で理解できるレベルが求められます。さらに、理解するだけでなく、話したり、書いたりできるか。インターの授業ではディスカッションやディベート、レポート提出が多い。ついていけない子がいると授業の妨げになるので、4技能はシビアに精査されます」

ただし、学校によって求められる英語のレベルは変わるという。

「家から通学するインターの場合は、高い英語力が求められます。しかし、ボーディングスクールの場合は、日本人の中で『英語が得意』ぐらいの子も入学できるケースがあります。全寮制という強みを生かして、放課後に英語力を伸ばすためのESL(English as a Second Language)クラスを設けられるからです」

さきほど紹介したハロウ校やラグビー校はボーディングスクールなので、英語のハードルは少し下がるかもしれない。だが、今度は高い学費の壁が待っている。

「インターの学費は新設校で年間150万円、老舗校は年間250万円。ボーディングスクールは、授業料に加えて、寮費が300万円かかります。名門パブリックスクールだともっと高く、全部で年間600万~700万円くらいになります」

■イートン校のリーダー教育をオンラインで学べる

年間600万円以上となると、庶民にはとても手が出せない金額だろう。だが、近年では英語力の壁を乗り越えれば、超名門パブリックスクールの教育を受けられる選択肢も登場している。

たとえば、超名門パブリックスクール、ザ・ナインのうちの一校で、イギリス王室のウィリアム王子やヘンリー王子も通ったイートン校が展開する「イートンX」。これはイートン校で行われているリーダー教育のエッセンスを詰め込んだプログラムをオンラインで提供するというもの。イートンXの運営はイートン校と別組織になるが、プログラム開発には同校の教師陣が参加している。

提供されるプログラムは「Future Skills Program」と呼ばれ、「Critical Thinking(多面的探究)」「Creative Problem Solving(創造的な問題解決)」「Public Speaking(演説法)」など、全11のコースがある(2020年5月現在)。1コースにつき、7週間のカリキュラムが組まれ、生徒は反転学習による自習と、オンライン教室でのロールプレイやディスカッション、共同学習などに取り組む。

イートンXのCEO、キャサリン・ウィティカー氏は、次のように語る。

「変化が非常に速い時代に、アカデミックな学習だけでは成功することはできません。誰もが早い時期から、イートン校で伝統的に教えられてきたリーダーになるためのソフトスキルを学び、使っていくことが重要だと考え、中高生から受けられるプログラムにしました(大学生や社会人研修にも対応)。イートンXは1クラス最大8名で、各クラス1名のチューターがついて、自習はもちろん、生徒間の学びを積極的にサポートしていきます。MOOCs(Massive Open Online Course)のように一方的で受け身ではなく、非常にアクティブな授業であるのが特徴です」

コース修了後には、修了証明書を授与される。正式な学校卒業資格や単位にはならないが、ひとつの学びのキャリアとして履歴書に記載できる。何より世界中から集まった生徒たちとイートン校のプログラムの課題を達成した経験は、確かな実力と自信につながるだろう。1コースの料金は、2カ月で約5万円。全コースを受講しても55万円。インターに入れたり、留学したりするより各段に安く一流の教育を受けられるのだ。

イートンXのCEO、キャサリン・ウィティカー氏。2019年11月27日にイートンXの日本展開を行うグローバルスカイ・エディケーションで行われた記者会見の様子。
イートンXのCEO、キャサリン・ウィティカー氏。2019年11月27日にイートンXの日本展開を行うグローバルスカイ・エディケーションで行われた記者会見の様子。

■学費無料のインターナショナルスクールも登場

一方、2019年9月に開設されたサイエンスに特化されたマナイ・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー(以下、マナイ)は、学費がかからないインターの高校だ。マナイには決められたカリキュラムはなく、入学すると、生徒は自らのプロジェクトを立ち上げて、研究に取り組む。

マナイの生徒はそれぞれが自分のプロジェクトを持ち、研究を行う
マナイの生徒はそれぞれが自分のプロジェクトを持ち、研究を行う

そのプロジェクトをサポートするために学外メンターがつく。興味深いのは、この学外メンターが、生徒の研究について知恵やネットワークを提供するだけでなく、資金援助も行うということだ(Senpai制度)。

メンターからアドバイスをもらうマナイの生徒
メンターからアドバイスをもらうマナイの生徒

「『才能はコミュニティで育てるもの、そして、その活動を通じてコミュニティに還元されるもの』というマナイの理念に賛同してくれた科学者や起業家、企業などが、生徒を経済的にも支えます」(マナイ創立者・野村竜一氏)

親が授業料を払うという教育費の常識を覆して、マナイというコミュニティのもとで才能ある人材に投資しているのだ。それだけに社会や科学界に一石を投じる才能が求められるが、こういう学校があることを知っておいて損はないだろう。

例えば、わが子は日本の学校では劣等生だが、何か一つでも夢中で探究しているテーマがある。そんな子供にはマナイが合っているかもしれない。

とはいえ、マナイのコミュニティに参加するにも、必要なのは英語となる。可能性を広げるためにも、英語を勉強させることは選択の幅を広げることになる。ちなみに、イートンXで求められる英語力は、「最低でもCEFR(語学のコミュニケーションスキルを示す国際標準規格)でB2レベル、IELTS5.5」(ウィティカー氏)。これはTOEICで785~940と非常に高いレベルだが、一つの目安としておきたい。

■日本初、小学生を対象にしたボーティングスクール開校

中学校、高校で名門パブリックスクールに通わせるのであれば、小学校のうちから準備が必要。そう考える親御さん向けに、日本初の小学生を対象にしたボーディングスクールが今年4月に開校している。ジャパンタイムス代表取締役の末松弥奈子氏が広島県神石郡に創立した「神石インターナショナルスクール」だ。

インターだが、英語だけではなく日本語での教育も大切にされている。学校教育法における一条校に認定されていて、日本の小学校卒業資格も得られる。授業時間に行われる勉強だけでなく、寮生活を通じてマナーやスポーツ、文化などについてもプロフェッショナルが教育してくれることが魅力だ。

「グローバルステップアカデミー」という、3~12歳までのインターの教育をオンラインで提供しているサービスもある。通常の小学校に通いながら、放課後に習い事としてオンラインでインターの授業を受けることもできる。

英会話はもちろん、算数やプログラミング、工学など、英語で学ぶ科目が豊富で、12歳までに「英語で学び、コミュニケーションできるようになる2000時間の学習」達成を目指すという。

ここまで駆け足で近年登場してきたインターナショナルスクールやボーディングスクール、習い事について紹介してきた。英語で学ぶなど、わが子にはとても無理と感じるものも多かったかもしれない。しかし、新型コロナウイルスによる休校措置の中で学校の存在意義を考える今、さまざまな選択肢に目を向けて、10年後、20年後に活躍できる子に育てていくにはどうしたらいいのかについて考えてみるのも良さそうだ。

(プレジデントFamily編集部 森下 和海)

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