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連載・伊藤詩織「性被害を受け、13歳で母になる…アフリカの少女が流した涙」

プレジデントオンライン / 2020年6月6日 11時15分

性被害を受けた3歳の男児を抱きかかえる、レイプクライシスセンターの女性担当者(アフリカ、シエラレオネ・フリータウン、2018年5月、著者撮影)

■アフリカで出会った、13歳で母になる少女の涙

取材をした日はラマダン中で、アザーンという礼拝への呼びかけがどこからか流れると、男性が外に集まり、祈りを始めていた。

アフリカ、シエラレオネ。首都フリータウンにあるレイプクライシスセンターを訪れる8割以上が18歳未満だという。そこで話を聞かせてもらった子どもたちを一生忘れることはできない。

13歳のアニマタは性被害に遭い、犯人から脅され、家族に相談できずにいた。彼女はセックスで妊娠することを知らなかった。膨らんだお腹に家族が気づいたときは、もう人工中絶するには遅すぎた。淡々と被害を医者に話すアニマタの瞳から、大粒の涙があふれたのは学校に行けなくなったと口にしたとき。私はカメラのレンズを彼女に向けることが苦しくなった。

■クマのぬいぐるみで、ポツリポツリと悪夢を説明

アニマタは数学が大好きだという。取材した2018年当時、シエラレオネではエボラ出血熱がきっかけで性暴力が増加。それを理由に妊娠した女子生徒は登校が禁止されていた。その後、19年に性暴力に対して緊急事態宣言が出され警鐘が鳴り、同年レイプに対する法律は厳罰化された。そして20年にようやく登校禁止令も撤廃された。

子どもたちの多くは、自分が受けた性暴力をどう言葉で表現すればいいのかわからない。センターで出会った母親は4歳の娘にプライベートゾーンを教えようとした際、初めてわが子が夫から性暴力を受けていたことを知った。「水着で隠れる場所はあなたの大切な体の場所なの。もしも誰かがここを触ろうとしたらお母さんに教えてね」。そう娘に話した。すると性器の名前も知らない子がクマのぬいぐるみを使い、ポツリポツリと彼女を襲った悪夢を説明しだした。母親は「何があってもあなたは悪くない」と娘を抱きしめた。

いまだに性的同意年齢が13歳とされている日本だが、20年はその法律の見直しが検討される年でもある。110年以上変わらなかった同意年齢や、同意のない性行為をした加害者が処罰されない現状に変化が起きるかもしれない。

そして法律だけではなく、子どもに対する性教育の実施も被害発覚や防止につながる重要な要素だ。そう、シエラレオネの性被害サバイバーたちは教えてくれた。

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伊藤 詩織(いとう・しおり)
ジャーナリスト
1989年生まれ。フリーランスとして、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信し、国際的な賞を複数受賞。著者『BlackBox』(文藝春秋)が第7回自由報道協会賞大賞を受賞した。

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(ジャーナリスト 伊藤 詩織)

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