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「コロナ転職」をするか迷ったら上司に問うべき質問

プレジデントオンライン / 2020年6月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AH86

新型コロナウイルスの影響で会社の経営が悪化したら、転職を考えたほうがいいか。経営コンサルタントの吉岡憲章氏は、「社長や上司に、会社の経営状況を教えてほしいと聞いてみるといい。『自分に任せておけ』と答えるようなら転職を考えたほうがいい」という——。

■今年はコロナに関係なく倒産が多いと予測されていた

4月7日に「緊急事態宣言」が発令され、さまざまなビジネスが大打撃を受けた。5月25日には全国で解除されたが、営業再開は段階的である。

図は中小企業の景況判断DIの推移である(中小企業庁調査2020年第1四半期)。

当然のことだが20年第1四半期(1~3月)の業況判断DI指数は全産業で前期比▲24.4、特に製造業は▲27.4と異常な低さを示している。

これは、このコロナ感染危機に起因するところが大きいが、注目しなければならない点は、2018年第2四半期(4~6月)をピークに“一方的な右肩下がり”を続けていることにある。

よく不況になったのは昨年10月の消費税UPが原因だ、との説もある。しかし、本当は1年半以上前の米中貿易戦争が開戦されたころから中小企業では影響を受け始めていたのである。

このために、もともと2020年は中小企業の倒産が前年より増加すると予測し警戒されていた。ちなみに、この1月から3月の倒産件数は前年の7.0%増加している。

中小企業の業況判断DIの推移

■弱り目にたたり目とも言えるコロナショック

このように、中小企業の足腰が大変弱くなっているところに、弱り目にたたり目とも言えるコロナショックの襲撃である。

帝国データバンクは5月26日現在のコロナ関係倒産企業を184社と発表した。しかし、これから想像もできないほどの破綻が発生するであろう。

コロナ倒産は始まったばかり。恐ろしいことだがこれからが正念場である。現実に私の目の前にも、間もなくコロナのおかげで自己破産をせざるをえない中小企業が何社もある。

コロナ後に中小企業にとっては本当に厳しい経営環境が待ち受けていると思っておいた方がよいだろう。

短期的には、外出自粛によりもろに影響を受ける観光業、遊興業、飲食業などの売上が7割減、9割減、はたまたゼロになるという極端な事態を招いており、休業をやむなくさせられているケースが多い。

やがて、その影響は製造業はもとより外国人労働者に依存する農業にまで及ぼすことは火を見るよりも明らかである。

■コロナで経営が傾いた経営者が今まずするべきこと

このように経営環境に大きな異変が生じたときに、社長がやることは、まず“自分自身を落ち着かせる”こと。社長が青い顔をして目もうつろになったら、部下の社員たちはもっと不安になる。社長自身も考えが集中せず、この先どのように乗り切るかの出口さえも分からなくなってくる。これが、破綻する社長の典型なのだ。

この先、自社が大変なことになるだろう、と多くの社長が思っている。しかし、ほとんどの社長は頭の中だけで、“大変になるであろうこと”を悩み、思い詰め、どうしたらよいか分からず悩んでいる。まず、このように混乱した社長の頭の中を整理することから始める。

そこで、まずは深呼吸でもして机の前に座り、おもむろに紙を出すことだ。

次に、その紙のヘッドに「オレは、コロナなんぞに負けない!」とタイトルを書く。

さて、これからは少し頭を使おう。

分かりやすい例として小ぶりの居酒屋を例に取って説明したい。

いま、会社の手元資金はいくらあるかを調べてタイトルの下に金額を書く(細かい数字はいらない。現金で10万円、預金は350万円というような粗い金額で十分)。したがって、手元資金の合計は360万円である。①手元資金=360万円と紙に書く。

次に、この先毎月いくらくらい資金が不足するかを計算しよう。この場合、思い切って休業する場合と何とか営業を続けていく場合の2通りを出してみる。

月商200万円の店なら、材料費80万円(40%)、人件費50万円、家賃を含めた固定費50万円、あとは利益というようなところが標準である。

もし、休業するのであれば、固定費50万円と店主の報酬だけあれば良いはずだ。従業員の休業補償は雇用調整助成金を使おう。

3カ月休業するとすれば、手元に360万円あるから、固定費50万円と店主の報酬30万円(これで我慢するとして)の合計80万円が必要だから3カ月後にはまだ120万円残る。

そこで、②休業の場合の3カ月後の手元資金残高=120万円 と①の下に書く。

仮に店を継続する場合を考える。売り上げが半分の100万円になったときには、材料費40万円を引いても60万円残る。ここから固定費の50万円と店主の30万円を引くと20万円不足する。でも、これが3カ月続いても手元資金は300万円も残るのだ。この売り上げだと社長一人で回す覚悟がいる。従業員はやはり雇用調整助成金の活用だ。

③継続するが売り上げが半減する場合の3カ月後の手元資金残高=300万円と②の下に書く。

■紙に書き出してみると安心する

少し乱暴な計算であるが、要は経営者としてこの先の資金状態を数字で考えることである。店舗を休業するか、売り上げが低くても続けるか、それはこのように紙に書いた数字を見比べてどちらが現実的で有利であるかを決めればよい。これが、分かっただけでも心は落ち着くではないか。

そこで、おもむろに「この計算はあくまでも紙の上のこと。この先このようにいかない場合がある!」と考える。

実は、このために、今回の制度融資のコロナ資金がある。

上記の例だと、年商2400万円だから、金融公庫か金融機関から500万~1000万円くらい融資を受けられる可能性がある。無利子・無担保だから使わない手はない。

いかがだろうか。このように紙に書いて整理すると心が段々と落ち着き、“何があってもコロナになんか負けないぞ!”という気持ちになると思う。当たり前のことに見えるかもしれないが、私の感覚では、このようなことが整理できている中小企業の社長は3割もいないのだ。

■売上高の落ち込みをどのように回復させるか

冒頭に記したように、わが国の中小企業はコロナ汚染以前にすでに経営力は厳しい状態となっていた。このことを中小企業の経営者は十分認識しておく必要がある。

それを前提として、まずやらなければならないことは、コロナの影響で減少した売り上げをコロナ以前にまで戻すことだろう。

そこで、ステップを踏んで対策を考えてみよう。

第1ステップ:コロナ騒ぎの間でも、変わらず取引をしていただいた取引先、来店いただいたお客さまがこの先も最も大切だ。心からの感謝の気持ちを持って接し、今後もこれまで以上のお付き合いを続けていただくこと。

第2ステップ:コロナ騒動の間にお付き合いが無くなった取引先や来店客は“既存顧客”だ。一度でもご縁のあった顧客は自社のことを知っていてくれる。電話でもメルアドでも知っていたら、時々便りを交換することが肝心だ。こんな時に顧客名簿がなにより財産になる。もし、無ければこれからでも意識して名簿を作る必要がある。

第3ステップ:あなたの事業の“強み”はなんだろうか?

中小企業のなかで、「それははっきりしているよ」と答えられる社長は2割程度。

「まあ、強みはこれかな」程度の会社は4割程度。残りの4割は「そう聞かれてもなんだろな?」と改めて自分に問い直す。つまり、自社の強みも認識していないし、当然強みはない。

コロナ騒ぎで世の中が停滞している間に“わが社の強み”を徹底して作り、磨き上げること。本当の強みならお客さまが認めてくれる。ドンドンと新規の顧客が増えていくことにつながるのである。

■転職するか迷ったとき上司に言うべきこと

年商10億円、従業員50人程度の典型的な中小企業の場合を想定してみよう。まず、社員がやらねばならないことは、“自社がコロナ騒動でどのくらい経営に影響を受けたか”を知ること。

つまり、売り上げがどのくらい減少して、利益にどのように影響するのかを数字で把握することが基本である。

できれば決算書や月次試算表などを見ることができればよいが、中小企業の場合、財務関係の資料が開示されていない場合が多い。

そのような時は、社長なり上司に「自分はこのような時に会社の役に立ちたいので、会社の経営状況を教えてほしい」とお願いしてみる。

その時に、社長や上司の受け答えであなたのこれからのビジネスマンとしての行き方が決まる。「それは良いことを聞いてくれた。ぜひ、協力してほしい」という答えなら、素晴らしい社長だ。あなたは彼と一緒に頑張ることでこの会社は復活できる。

なぜなら、社長は、社員たちとワンチームでこのコロナの襲撃に立ち向かおう、との気持ちに満ちているからだ。

一方、「そんなことは俺に任せておけばいいんだ。君は余計な心配をしないでいい」という感じの答えなら、会社の将来性は期待薄。まして、この困難な時期を乗り切ることができない可能性が大である。

世の中が落ち着いたころを見計らって、もっと将来性のある会社に転職することも、身を守るすべかもしれない。

経営者にあなたの出した“踏み絵”を踏ませることで会社の将来が分かるのだ。これを見分けることができれば、あなたも一流ビジネスマンの道を歩んでいることになるだろう。

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吉岡 憲章(よしおか・けんしょう)
未来事業代表
経営学博士(Ph.D.)MBA。1941年、東京生まれ。早稲田大学第一理工学部卒業、多摩大学大学院で博士号取得。63年日本ビクター入社、同社品質保証課長、企画課長、商品企画課長歴任し、74年退社。その後、経営コンサルタント会社を創業し、現在に至る。これまでに1100社の中小企業の経営を再生・成長へと導いている。著書に『定年博士』(きずな出版)、『会社が赤字とわかったとき読む本』(PHP)、『社長の器』(PHP)、『一年で儲かる会社にしようじゃないか』(日本実業出版)ほか多数。

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(未来事業代表 吉岡 憲章)

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