日本人だけが知らない、日本経済の本当の強さ

プレジデントオンライン / 2020年6月3日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

■スケールメリットで経済を図る時代は終わる

スケールメリットや人口の増加で「経済の体力」を測る時代はそろそろ終焉を迎えるでしょう。世界の人口はもはや飽和状態であり、今後は、技術革新のスピードを強め、独自の付加価値を持つ国が国力を高めています。日本は自信を失っている人があまりにも多く、自己肯定が苦手な国民性ですが、なんとなく周りの意見に同調し、ただ悲観するのは終わりにしましょう。「失われた20年」の過去を嘆くなど、後ろ向きの議論は何の意味もなく、非生産的な行為なのは誰もが分かっていることです。

現状を把握した上で、ミライに向けて「どういったアクション」をしていくかを皆で考えることが重要だと考えます。日本人はやると決めたら国を挙げてキャッチアップする能力が高いです。日本の潜在能力をいかに伸ばしていくかを共に考える必要があります。

世界の人口は調整局面に入っており、消費を行う生産人口は減少傾向にあります。このトレンドはグローバルに展開している企業にとっては不利になるでしょう。一方、これからシェアを取りにいく、伸びしろのあるスタートアップ企業にとっては有利な可能性があります。ここから先は、技術をアップデートし、世の中を刷新できる企業の存在感が増します。

■本当に「失われた20年」だったのか

「こんなものがあったらいいな」という、まだ世の中にない人々の願望を実現できる企業が成長する国こそが、国力を高めていくことになります。それができるのはアメリカや中国なのではないか? いえ、日本も可能性は十分にあり、本気で向き合っていないだけです。そのために必要なのは、新しい技術開発を行っているスタートアップへの投資や、国の予算のポートフォリオを研究開発費用などのミライにつながるお金の使い方に少しで良いので、振り分けることでミライは大きく変わります。

バブル崩壊後の1991年時点から20年間を「失われた20年」と指すことが多いです。バブル崩壊で露呈した銀行の不良債権問題や企業のバランスシートの傷みといった問題は基本的に解決していた後も、経済成長はバブル崩壊以前の水準に戻らなかったのです。その原因は「労働生産性が停滞」していたことが挙げられます。

■日本にはまだ、伸びしろがある

生産性を伸ばすことができなかったことはGDPを見れば一目瞭然です。世界ランキングを見ると19年では、アメリカが21兆4200億ドル、中国は14兆3400億ドル、そして第3位の日本は5兆800億ドルとなっています。アメリカと中国が巨大なGDPを稼ぎ出しているものの、日本も長い間3位を堅持しています。

ほんの10年前までは、中国より上の世界第2位でした。10年前の2000年のGDPはアメリカは約10兆2500億ドルと、この20年で約2倍、中国は約1兆2100億ドルと、この20年で12倍、日本は4兆8800億ドルと横ばいです。世界的に一気に生産性が高まった、ここ約15年間に、日本だけが大きく伸ばせなかった理由は生産性を伸ばすことができなかったからです。言い換えれば、日本にはまだ伸びしろがあるのです。

■情報通信産業だけはGDPにプラスに寄与

特にこの15年間の変革のスピードが異常でした。インターネットやAIが、一気に花開いた時期に、アメリカや中国は産業のアップデートを進めてきました。日本においては、実は、情報通信産業(ICT)だけがGDPにプラスに寄与しています。総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成30年)のデータによると、実質GDP成長率への情報通信産業の寄与度を2000年から4年刻みでみると、情報通信産業の寄与度はいずれもプラスとなっているのです。日本はICTしかGDPがまともに伸びていないのです。

でも、たしかに他の分野は何もできていませんでした……。むしろまっしろと言っても過言ではありません。これを、しっかりと他の産業でも着手できれば、十分に成長余力があると言えます。むしろ、この程度の“本気度”でGDP3位を維持していることの粘り強さの方が驚きなのです。

■シニア層へ回すお金が多く、研究開発に回すお金がない

『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(NewsPicksパブリッシング)の著者である安宅和人氏によると、日本は若い世代への投資、未来の成長力に使うお金が削られ続けていると述べています。日本の伸びしろを高めるために必要なのがミライにつながるお金の使い方です。

現状、研究機関や大学にかけるお金は、主要国の中で貧弱過ぎるのです。「東大・京大の学生辺り予算は米国主要大学の3〜5分の1です。科学技術予算を見ると、この歴史的な技術革新期に、04年以降、韓国は倍、ドイツは1.4倍にしている中で、日本は増やすどころかむしろ減少傾向」と驚くべき事実があります。国のリソースの張り方はあまりにも過去に向いているのです。

「国を家族に例えるならば、稼ぎ手の稼ぎよりも多くの金を借金までして、おじいさん、おばあさんに使っていると言っても良い状況だ。我々の未来の世代に対して、そして新しい未来を生むためのR&D(研究開発費用)に十分に投資しなければ、ミゼラブルな未来が待っていることは間違いない。できれば10兆、たとえあと5兆でもいいから未来に向けて振り向けることができたらどれほど大きな事ができるだろう」と日本の可能性に言及しています。

■「日本は財政破綻する」はウソ…

ここまでは、日本がまだ本気で手を付けていない部分に対して、力と資金を振り分ける余地が十分にあることについて見てきました。ここからは、現状の国力について見ていきます。<日本経済はヤバい><大借金大国、ニッポン>そんな見出しや、タイトルを目にしたことはないでしょうか。事実ベースで言えば、日本経済は、アメリカ、中国にGDPで後れを取り、1300兆円の負債を抱える大借金国です。それを受けて、危機を煽(あお)られれば、私たちは当然怯(おび)えます。結論を急げば、「日本ヤバい論」は間違っています。

国の国力を見ていくときに、ドルのストックがどの程度蓄積されており、基幹産業が吹っ飛んだとしても何年、経常黒字がいつまで続くかを試算することで、国の力を測ることができます。フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の18年時点の試算によると、日本は年間、7兆4000億円程度のドルが増加しており、官民で約261兆1000億円(外貨準備以外は60%をドルと試算)のドルを保有しています。

18年の経常黒字は19兆1000億円であり、仮に自動車産業が壊滅したとしても、単純計算では経常赤字に転落しません。産業の分散が進んでいるとともに、強固な外貨ストックが存在しており、日本は簡単には経常赤字国にはならない強さを持っています。一方、お隣の韓国では、官民で26兆7000億円のドルを保有しており、経常黒字は18年時点で、8兆4000億円であり、基幹産業である機械・半導体が壊滅すれば、20兆円近い経常赤字に転落することになります。

■「負債」1300兆円は、「資産」と比べる必要がある

日本は、いまどのくらいの力を持っているのでしょうか? 現在の日本の借金は、日本銀行の「2019年第4四半期の資金循環」のデータによると、現在、政府の負債合計は約1300兆円です。一方で政府の「資産」は政府資産(約620兆円)+外貨準備高(約140兆円)=約760兆円になります。この約760兆円に対する、負債1300兆円の割合を考えると。借金の額はそれほど大きくないことがわかるのではないでしょうか。国の財政も資産と負債の2軸で考える視点が必要です。

世界における椅子の奪い合いではなく、日本は独自の椅子を作っていけばいい。その為に、日本の潜在能力をいかに伸ばしていくかを共に考える必要があります。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。

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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)

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