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「不倫相手のおかげ」コロナ離婚を回避した妻の言い分

プレジデントオンライン / 2020年6月9日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pongchart

家で過ごす時間が増えると、夫婦関係にはどのような影響があるのか。夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「皮肉なことに、夫婦が一緒にいることが原因の相談が増えている。だが、非常時に白黒つけることは避けたほうがいい」という――。

■「夫婦が一緒にいる」ことで増えたトラブル

新型コロナウイルスの影響で、最近はLINEのビデオ通話やSkypeを中心に夫婦問題の相談を受けている。一緒に過ごす時間が増えた夫婦は多いが、皮肉なことに、夫婦が一緒にいることが原因で生じるトラブルが増えている。

コロナ問題が起こる前は「お互いに忙しすぎて夫婦の時間が持てない」「生活時間帯にズレがあり関係がギクシャクしている」という理由から夫婦問題が生じるケースが大半を占めていただけに、今は真逆の展開に正直な話、戸惑うこともある。自粛生活がスタートしてすでに2カ月以上がたつものの、「夫婦が四六時中顔を合わせる環境に慣れる気配は一向にない」という話もあちこちで聞く。

世の中にコロナ離婚という言葉が広まり、定着しつつある今、こんな夫婦問題の相談が寄せられている。

※登場人物のイニシャルと年齢は変えてあります

■家事を手伝ってくれていた母が来られなくなり…

【Case1】家事と夫へのストレスで体調不良になった

結婚して3年目のS美さん(32歳)は、4歳年下の夫とともに在宅勤務になった。コロナ問題が起こるまでは共働きで、夫婦関係はおおむね良好。多忙な娘夫婦のサポート役として、同じ沿線に住むS美さんの母親がときどき訪問して掃除や夕飯づくりなどの家事を手伝ってくれていたことも、円滑な夫婦生活の支えとなっていた。

ところが新型コロナウイルスの影響で、二人の関係は一変。高齢な母親が外出自粛で娘夫婦の自宅から足が遠のいたことで、初めての二人だけの生活がはじまった。S美さんは、今まで母親に任せていた家事をいざ自分ですべておこなうことになり、自分の家事能力があまりにも低いことを知り愕然としたという。「もともと掃除や片付けは苦手だし、料理のレパートリーも少ない。主婦業はプレッシャーもあって、いっぱいいっぱいになった」。夫のほうは、「俺は仕事に専念するから、家のことは頼んだよ」と、朝から自室にこもる日々。妻が家にいる安心感からか、夫は家事を手伝おうとはしなかったという。

■夫は仕事そっちのけでゲーム三昧

S美さんが、仕事に邁進しているとばかり思っていた夫の裏の顔に気づいたのは、それから1カ月後のことだった。その日は久しぶりに近所の薬局でマスクが買えるという情報が入り、行列に並ぶ間、留守番をしてもらおうと夫の部屋をノックもせずに開けたS美さん。そこには、パソコンに向かってゲームに夢中になっている夫の後ろ姿があった。ゲームに熱中するあまり妻の侵入に気づいていなかった夫は、「ねえ、何してんの?」という妻からの冷ややかな声にビクッと背中を震わせた。イタズラが見つかった子どものように慌ててゲームの画面を消した瞬間、次にパソコンの液晶画面に現れたのはアダルトサイトだった。

「この1カ月、私が不得意な家事に孤軍奮闘している間、夫はずっとゲームとアダルトサイトに興じていたのかと思ったら、あまりにも腹立たしくて怒りがピークに達した。親のことや世間体を考えると離婚はしたくないけれど、しばらく夫とは顔を合わせるのもイヤ」とはS美さん。それほど反省をしていない様子の夫にも、いまだS美さんのイライラは募るばかり。今も夫の顔を見ただけで、激しい頭痛と動悸が止まらないと話す。

■「不倫相手のおかげ」でコロナ離婚を回避

【Case2】不倫相手との絆が深まった

「コロナ離婚をしないで済んでいるのは、不倫相手の存在があるおかげ」と淡々と語るのはK子さん(41歳)。K子さんの不倫相手は、彼女の職場の同僚で、K子さんと同じ年齢の既婚者。不倫関係がスタートして半年になる。K子さんいわく「鈍感な夫にはバレていない」とのこと。11歳年上の夫との間に子どもはなく、3年前から「夫のイビキがうるさいから」という理由で寝室を別にしている。年齢差があるせいか、結婚当初より夫のモラハラ気味の言動が目立っていたが、新型コロナウイルスの問題が大きくなるにつれ、さらにひどくなっていった。

ワイン好きの夫は、これまでは部下や後輩をつれて毎晩のようにイタリアンやフレンチの店に出掛けていたが、自粛生活がはじまってからは自宅で夕食をとることを余儀なくされることに。そのことに不満を募らせていたらしく、「いつまでこんな食事が続くのか」「お義母さんに料理を教わらなかったの?」「こんなにまずく料理するほうが難しいよね」などと妻に向かって言いたい放題。「それでも我慢できたのは、毎晩不倫相手とLINEのやりとりをしていたからです」とK子さん。

■「日常」が戻ってくるのを心待ちにしている

K子さん「今日も夫にイヤミを言われちゃった。料理がまずい、って(泣)」
不倫相手「それはひどいね。オレだったらK子を悲しませるようなこと、絶対に言わないのに」
K子さん「ありがとう……。でももうそろそろ我慢の限界かも(涙)」
不倫相手「大丈夫? でもオレのところももう限界。早くK子に会って抱きしめたいよ」

スマートフォンには、こんな赤裸々なやりとりが残っている。「自粛生活が長くなり、別れる不倫カップルもいると聞くが、私の場合は逆。会えない時期があって、むしろ相手との絆が深まったという実感がある」。K子さんは現在、日常が戻ってくるのを誰よりも心待ちにしている。

■外面がいい夫、SOSを出せない妻

【Case3】まわりに夫婦問題を相談できる人がいない

新型コロナウイルスの影響ですっかり夫婦関係は冷え切ってしまったものの、そのことを家族や友人にも打ち明けられずに苦しんでいるケースもある。Y乃さん(32歳)は、今回の自粛生活がきっかけで夫と大げんかをし、決定的な価値観の違いに気づいた。「この人と一生、わかり合えることはないだろう」と夫婦間に深い溝ができたことを確信したとのこと。夫も同じ思いだという。ただ、二人の間には3歳になったばかりの子どもがいるため、感情や勢いだけで離婚するわけにはいかないことも知っている。

新型コロナウイルスの問題が起こる前は夫婦仲は悪くなく、外面のよかった夫は近所のママ友たちからの好感度も高かったために「うらやましい」「ウチの夫と交換してほしい」などと憧れられる存在だった。自粛生活がスタートしてから毎日のように届く、ママ友たちからのLINEの内容は夫に対するグチがほとんど。にもかかわらず、「Y乃さんのところはダンナさんが優しい人でうらやましいわ」「Y乃さんのダンナさんなら、在宅勤務でも全然苦にならなさそう」などと、夫を称賛するメッセージが毎日のように送られてくるのだ。

「夫は優しいどころか、最近は家でも絶えずイライラして子どもに手をあげたことも。そんなにひどい人間だとは知らないママ友たちに夫の本性を暴きたいが、私のプライドが邪魔をしている。『本当はつらいの。力になって』というSOSがどうしても出せない」と涙ながらに本音を吐露するY乃さん。幸い夫の暴力は一度だけで終わったこともあり、「すぐに離婚」という事態はないものの、将来のことを考えるとどうしていいかわからず暗い気持ちになるばかりだという。

■非常時に「白黒つける」ことは避ける

これまでの日常とはまったく違った時間を過ごすことになったこの時期は、今まで知らなかった相手の一面が見えやすくなるもの。ただし、それは「こういう時だから、そんなふうに見えたこと」かもしれないのであって、恒常的に続くとは限らないのも事実。夫だけではなく、不倫相手に対する思いも同じこと。非常時だからこそ、「いつもと違う思いを抱いているような気になっているだけ」という可能性もあることを忘れてはならない。

後悔しない選択をするためには、今の時期に夫婦関係の白黒をハッキリさせるのは控えること。これまで夫婦が二人で育んできた大事な関係性を、非常時の判断だけで終わらせるのはあまりにも早急だからだ。そのかわり、夫婦がそれぞれ自分の時間を持つのもいいだろう。ひとりの時間に相手への不満のガス抜きをすることで、少なくても非常時の不毛な衝突を避けることはできるはず。夫婦関係には、向き合うより別の方向を向くことが「解」の場合もあるのだから。

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岡野 あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)『離婚カウンセラーになる方法』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。

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(夫婦問題研究家 岡野 あつこ)

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