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「月収200万から貯金650円」コロナ恐慌下の20歳女子大生サバイバル

プレジデントオンライン / 2020年6月8日 15時15分

「歌舞伎町にここまで人がいないのは、去年の大型台風以来だよ」 - 筆者撮影

■コロナ禍でもあえて風俗に来る男の素顔

5月25日、5都道県で緊急事態宣言が解除され、街の人出も元に戻りつつある。しかしながら、宣言下においては、小池百合子都知事が“3密”の例として真っ先に挙げたキャバクラやクラブなどが密集する歌舞伎町や銀座、六本木などの夜の繁華街からは、人が消えた。

このような状況で営業を続ける風俗店に対し、批判の声があがる一方、そこでは貧困ゆえにコロナ禍でも出勤せざるをえない女性たちの存在があった。では、こんな時期に風俗店を利用する男性客とはどのような者たちだったのか。

話を聞いた2人の風俗嬢の話から、コロナ禍における彼女たちの「勝ち組」と「負け組」が見えてきた——。

■裏引きで「濃厚接触」の情況を詳しく聞いた

「4月以降、連絡をくれるお客さんはほとんどいません。店長は本当に頭を痛めてますね」

千葉県千葉市中央区——。千葉都市モノレール栄町駅前に数件軒を連ねるソープ店の一つで働く中井千佳さん(仮名・27歳、大阪府出身)は、過去最大の不況が訪れていると嘆いた。

大阪から上京し大学へ入学するも、すぐに中退。21歳で一般企業の事務職として働き始めたが「夜に遊ぶお金が足りない」ということで、ソープランドで働き始めたのが今から6年前。彼女は1年前、専業ソープ嬢になった。

栄町のプレイ時間は70〜90分で1万7000~2万5000円が相場だ。コロナ以前は月150万円ほど稼いでいたという彼女だが、4月以降は店舗の営業自粛によって、一気に収入を失った……かと思いきや、事態はそう単純ではなかった。

「シネシティ広場にだーれもいないなんて考えられないよ」
「シネシティ広場にだーれもいないなんて考えられないよ」(筆者撮影)

「コロナ後は、お店のお客さんから直接連絡がきて、本当に常連の人だけ会っていますね」

いわゆる“裏引き”というものだが、この状況下で“濃厚接触”となるサービスを提供するのはあまりにもリスクが大きい。だが、これに千佳さんは反論する。

「会ってるのはほんとに2〜3人です。っていうかほぼ1人。20回以上遊びに来ている高井さん(仮名)っていう70歳の常連さんだけです。会社を5社経営していて、ソープで遊ぶのが生きがいみたいな人なんですよ」

■コロナだから店ではなく個別で会うことは可能か

緊急事態宣言が発表された直後、その高井さんからLINEが送られてきたという。

<千佳ちゃん、お店遊びにいけなくなっちゃったから、個別で遊べない? 普段お店ではできないことをお願いしたいんだけど……>

取材時の4月末現在、ソープ専業の千佳さんは出勤日数0日の状態。内容次第で考えようとそのプレイ内容について返信したという。

<千佳ちゃんの女友達呼んで、一緒に3Pがしたい。2時間で1人7万円。どうかな?>

大胆な提案だったが、千佳さんはすぐに受け入れたそうだ。

「いつもホストクラブに行ってる女友達がいて、そのコも風俗やってるコなんです。境遇は私と同じだからたぶんノッてくるだろうなって」

千佳さんの見立ては正しく、目ぼしい遊び友達にLINEを送ってみたところ、すぐに返事があった。女子大生の佐藤瑠璃さん(仮名・20歳)だ。

「このコもまた、緊急事態宣言後、金欠だとTwitterでずーっと病みツイートしてたコで。提案するのに抵抗はなかったですね」

■風俗嬢が命綱にした「ベーシックインカム」とは

話が決まったら早い。翌日、14時に歌舞伎町のドン・キホーテ前で高井さんと会い、歌舞伎町で風俗嬢をしている佐藤さんの案内で3Pができるホテルへと入った。

「高井さんは、『コロナのせいでお店に行けないからこうやって会えるのが嬉しい』ってずっと言ってましたね。プレイは至って普通で、終わるのが早いので、2時間の間はほとんど添い寝してただけ。しゃべって、タバコ吸って、スマホ見てホストのツイート確認して、またプレイして……みたいな(笑)」

「早くいつもの歌舞伎町に戻ればいいんだけどね。じゃないと困るし」
筆者撮影
「早くいつもの歌舞伎町に戻ればいいんだけどね。じゃないと困るし」 - 筆者撮影

こうして2時間後、しっかり2人は7万円を受け取り、歌舞伎町を後にした。このように、緊急事態宣言後は、“安全な常連さん”とだけつながっている風俗嬢がいたようで、彼女たちは裏引きした男性客からの報酬がコロナ禍における「ベーシックインカム」になっていたようだ。

「結局、常連さんと週1くらいで会ってて、金銭状態は最悪なことにはなってないけど、早く日常に戻ってほしいです」

だが、千佳さんのように“裏引き”できるのはごく一部の風俗嬢に限られるのが実情だ。事実、千佳さんは勤務する栄町の店舗でナンバー2の実績を持つ人気嬢。これが不人気嬢や、新人嬢となると状況が変わってくる。

■寝泊まりする風俗嬢たちで待機所はすし詰めに

「お客さんよりも待機してる女のコのほうが多くて、この2週間は一日スマホいじって終わる日がほとんですね」

現役デリヘル嬢の伊藤えりなさん(仮名・24歳)は、歌舞伎町の待機所近くのカフェで深刻な表情でコロナ禍の勤務状況をそう打ち明けた。

中部地方の地方都市で生まれ育ち、高校卒業後上京。介護職の専門学校に通い、昨年埼玉県の民間施設の介護職員として働き始めたが、収入が少ないことと、多忙ゆえに身体を壊し退職。「収入が高いし、時間が自由」ということでデリヘル嬢を始めたのが昨年9月のことだ。

「でも、まともに稼げたのは半年もなかったです。稼げてた時期は鬼出勤して月収も100万円近くいきましたが、3月半ばに収入が20万を切って、今月(※4月)は家賃も払えてません。家に帰ると交通費とか電気代とかがかかるから、待機所で寝泊まりしています」

えりなさんのように、待機所暮らしをしている女性は多く、現在彼女の職場では10人ほどのデリヘル嬢が待機所で生活しているという。

「ベッドもないので、床で寝て、起きて指名が入ったら出勤してってかんじです」

■待機所生活2週間もついに終わり絶体絶命。フリー客につくのが怖い

では、この時期にヘルスを利用する男性客とはどのような人物なのか。

「正直、おかしい人が多いですよ。一昨日は、60代くらいで、経営者って名乗ってる人が来ました。プレイは普通だったけど『個別で会えないか?』『お金ないだろうから月20万円で愛人にならない?』ってずっと迫ってきました。でも初めての人で怖かったので断りました。常連さんは既婚者だったりサラリーマンだったりで、家族や会社の目があって今は風俗なんていけないので、やっぱり変な人しか来ないですね」

コロナ禍に置かれるまでは、地方出稼ぎする機会もあったというえりなさんだが、今は出稼ぎ先から「東京のコは来ないでほしい」と言われてそれもできない状態だという。

出稼ぎ先から「東京のコは来ないでほしい」と言われて…
出稼ぎ先から「東京のコは来ないでほしい」と言われて…(筆者撮影)

「私がついたのが、3月末が20人、4月は10人ちょい。この一週間は一人もお客さんにつけていません」(取材したのは4月後半)

現在の銀行の口座残高を見せてもらうと、なんと650円だった。

「3月までは最低賃金として出勤で1日1000円もらえてたんですが、それも4月からなくなりました。最近『待機所で生活しないで』ってみんな言われて出ていくことになったけど、来月はたぶん電気もガスも止まるんですよね。でも、お客さんにつくのが怖い……。専門学校の奨学金も返さないとだし、早くいまの状況が終わってほしいですね」

一口で風俗嬢と言ってもここまで明暗が分かれるとは驚きだ。えりなさんの場合、指名客はおらず、フリーで入る男性客だけ。「一応検温はしている」というがやはり不安は拭いきれないだろう。

(ライター 柚木 ヒトシ)

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