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マンション投資で必ず失敗するサラリーマンの3つの共通点

プレジデントオンライン / 2020年6月12日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BongkarnThanyakij

サラリーマンが副収入を得る手段として、不動産投資が注目されている。だが、やり方を間違えると大損する投資でもある。専門誌『家主と地主』編集長の永井ゆかり氏は、「失敗する人には3つの共通点がある。簡単に儲かると考えてはいけない」という──。

※本稿は、永井ゆかり『1万人の大家さんの結論! 生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主入門』(プレジデント社)の一部を抜粋・再編集したものです。

■コロナ不況の中、副業がある人は強い

雇用止め、派遣切り、失職……。新型コロナウイルスの影響で、非正規雇用を中心に突然収入が途絶えてしまった人が増えている。

新型コロナウイルス関連の倒産も後を絶たない。帝国データバンクによると、2020年6月10日現在、全国で237件に上るという。リーマン・ショックを上回る景気後退が懸念される中、正規雇用であっても賞与や給与に影響が出てくる可能性があるだろう。サラリーマンも今後の生活に不安が募る。

そんな中で、サラリーマン収入の他に、もう1つの収入の柱を持っている人は強い。そのもう1つの収入の柱が景気に大きく左右されない安定的な事業だとしたらなおさらだ。

そこで注目されるのが家主業だろう。

ひと昔前は、大家さんというと「不労所得」といわれたが、現在は人口が減少し、空室は増え、入居者の層も多様化し、世の中が複雑化したことで、経営の難易度は確実に上がっている。不労所得といえるほど楽な仕事ではなくなった。

■積水ハウスでさえ詐欺被害で55億円もの損失を出した

家主業は「不労所得」といわれていた割には、いろいろな知識を必要とする商売だからだ。その知識を身につけずに始めるから失敗する。大体不動産業界は、多額の資金が動くだけに曲者が多い。2017年に積水ハウスがトラブルに巻き込まれた「地面師」の事件一つとってもそうだろう。大手住宅メーカーの積水ハウスでさえ、所有者を装った詐欺師グループを見抜けず、55億円もの損失を出している。

そんな世界に、素人が投資目的で不動産を購入しようと入ってくれば、いいカモがやってきたとばかりに狙う輩は多くいる。もちろん不動産業界もそれを容認しているわけではない。業界自体も、クリーンな取引ができるように努力はしているが、すぐに改善されるわけではないからこそ、正しい知識を身につけることが重要であることは繰り返し伝えたい。

それにも関わらず、上っ面の投資ノウハウばかりに目が行き、本来知っておくべき業界の常識も含めた家主業に関する知識を持たない人が、2013年頃からの融資緩和で、不動産を購入し家主になった人に多いと感じる。

■不動産投資は欲の皮が突っ張りやすい

経営者の自覚を持たない人も失敗する。家賃収入があり、借金返済、経費を差し引いて、残ったお金をすべて自分の利益だと勘違いするのはその典型だろう。お金が入ってくれば使い込んで、いざ修繕などでお金が必要になったときに、その資金がなくて困った、などという話はよく聞く。事業なのだから、事業を継続するために将来必要となる資金をきちんとプールしておくことは当たり前のことだ。不動産投資という言葉は、そういう認識さえも払拭してしまうため、勘違いする人が多いのだろう。

最終的には資産拡大を目的としている事業だからこそ、欲の皮が突っ張りやすく、結果として失敗する人もいる。本来の目的はすでに達成したのに、周りの家主がどんどん不動産の所有戸数を増やしていることに刺激を受け、もっと増やさなければという意識に駆られて買い続ける人もいる。買い続けること自体が悪いのではなく、その過程で無理が生じ、その無理が原因で、最終的に財産を失ってしまったという人も見てきた。

失敗する人の共通点は以下の3つに整理できる。

①正しい知識を身につけていないこと
②経営者の自覚を持っていないこと
③欲の皮が突っ張ってしまったこと

それでは成功する人たちにはどんな共通点があるのだろうか。

■「最初の1棟」購入までに調べた物件は4万件

元銀行マンで「東京調布大家の会」を主宰する海野真也さんは、2010年に1棟目を購入しているが、勉強期間として購入前の3年半を費やした。その期間、買おうとして買えなかったわけではないが、「インターネットに氾濫している収益不動産の情報に、自ら駄目出しをしていくことで、物件1つ1つを買うべきか否か、検証した」という。立地条件や「積算評価」、利回りのバランスなどを考えながら、インターネットに出ている物件情報を1つ1つ検証した。

積算評価とは、不動産の価値を評価する計算方法の1つで、土地の価値と建物の価値をそれぞれ個別に評価(現在価値による評価)し、それを合算するという評価方法だ。積算評価は、金融機関が「融資の可否」「融資額の上限」などを決定する重要な指標となる。

海野さんは、当時サラリーマンの仕事を終えて帰宅すると、1日3時間ほど物件情報を調べ続け、その数は実に合計4万件にもなったという。周辺地域の海抜や高低差、ハザードマップ掲載の有無をチェックした上で、エリアを絞りこんで現地調査を実施。さらに街歩きを徹底して、飲食店等では近所に引っ越すふりをして店員に土地柄や街の雰囲気を聞いて把握、最終的に福岡や広島など10都市以上の候補エリアで収益不動産を扱う不動産会社をピックアップして問い合わせをした。

その結果、返答があったのは約100社。そのうち20社が真剣に対応してくれたという。

■不動産会社と関係を深め、一般公開前に情報をつかむ

さらに5、6社に絞り込み、実際に店舗を訪問し、希望する物件についての詳細な情報を伝え、面談を重ねた。時には一緒に居酒屋に飲みに行き、関係を深めていったという。

購入第1号の物件は福岡のRC造マンションだった。その後、東京、京都でも物件の紹介を受け、現在4棟64戸を所有しているが、いずれも一般に情報が公開される前に売り出しの情報をつかんだ。現在は、いずれの物件もほぼ満室稼働を実現している。

そんな海野さんですら、物件購入後に内部構造の不具合により、五月雨式に多額の工事費がかかるようなケースがあった。「こうしたアクシデントは防ぐことは難しいので、ある程度の手元流動性を高めた状態で物件購入を行うことが基本だと思います」と話す。

■「借金完済までは税金と金利との闘いだ」

多額の借り入れをして物件を購入する場合は慎重にシミュレーションを重ねることで、購入後の賃貸経営をより負担なく実行できる。逆に、あまり考えずに購入してしまうと、買ったはいいが、その後の経営が苦しくなり、本業あるいは自身の生活にも影響を及ぼす事態になりかねない。多額の借り入れをして始める家主業で確実に資産を増やすためには、不動産を精査する力が重要だ。

「賃貸経営は借入金の返済が終わるまで、税金と金利との闘いだ」と話すのは、メガバンクや外資系証券会社の元債券トレーダーで、在職中に家主業をスタートし、現在、アパートとビルを6棟所有して専業家主の傍らキャッシュフロー経営をテーマにしたセミナーを数多く行っている川村龍平さんだ。

近年、サラリーマンで不動産を購入し、賃貸経営をする人たちから資金繰りに関する相談が増えているという。その中でも多いのが、表面利回りを見て、安易に購入してしまったために資金繰りが苦しくなってしまうケースだという。

元利均等返済で融資を受けると、スタート当初は借入金利息の経費化で所得を圧縮できるので手元資金が残りやすいが、返済が進み徐々に利息が減少してくると、不動産所得の経費が減り、所得が増えて税金が上がり、資金繰りが苦しくなる。その厳しい時期を乗り越えて完済すると、空室対策等の本来の賃貸経営に集中することができるようになり、ここで初めて本来の家主業の妙味が感じられるのだ。

■「地主家主」と「サラリーマン家主」はここが違う

家主業というと、基本的には代々土地を持っている地主が、その土地を活用してアパートやマンション経営を始めるケースが圧倒的に多い。そんな「地主家主」と、土地がないところから不動産を購入して始める家主とを同じように考えてはいけない。

「私もサラリーマン出身だが、建物部分だけ借金するのと、土地・建物の両方を借金するのとでは借り入れ負担は大きく違う」と川村さんが話すように、土地活用で経営する家主とではそもそも「発射台」が違う。土地の取得費が必要か必要でないかという必要な資金の規模だけでなく、土地代が経費にならないことは税金面から見ても大きな負担となる。そのことを理解していながら、川村さんはなぜ収益不動産を買い進めたのか。

始めたきっかけは、30歳を過ぎたころ、節税対策としてワンルームマンションを買ったことだった。確定申告をすることで税金の基本的な知識を習得できたというメリットは感じたものの、利回りが低かったため、不動産投資で大きく儲けるためには土地付きの一棟ビルかアパートを購入する必要があると気づいたのだという。

以後、質素倹約に努め、不動産購入のための資金を貯めながら、不動産会社回りにいそしんだ。まだ今ほどインターネット上で物件情報を探すことができなかった時代だ。物件情報は徐々には集まり始めたが、なかなかいい物件とは巡り合えなかった。

待つこと3年。ようやく東京都世田谷区のビルを購入することができた。2002年のことだった。以来、最大3億円の融資を受けていたこともあったが、徹底したコスト管理と入居者対策で、収益性が高い賃貸経営を実現し、あと2年半で大半の不動産のローンが完済できるという。

■自主管理で100万~150万円キャッシュフローが上がることも

川村さんは、利回りを高めるために不可欠なのは、「不動産を安く買うこと」と「運営コストの削減」と考え、自主管理を徹底してきた。管理委託料は全収入に対して5~7%と、一見、少額に見えるが、借入比率が高い場合、税引き後キャッシュフローに占める割合は、決して小さくないという。

例えば、年間家賃収入1000万円の場合、管理会社に支払う管理手数料は家賃収入の5%、その他清掃、補修費用などが年間で50万~100万円かかることを想定すると、合計で100万~150万円かかる。この経費が自主管理することにより、税引き後キャッシュフローが200万円の人なら、300万~350万円に上がる。

ただ、サラリーマンや他の事業を抱えながら、管理会社に委託せずに賃貸経営をするのは大変だ。遠隔地に購入した場合は、なおさら自主管理は難しい。サラリーマンの方たちに自主管理が「必要不可欠」と言いたいわけではない。重要なことは、管理会社に委託しなければ時間が足りないというサラリーマンこそ「余裕なき収支計画をしない」ことだろう。

■「月1会議」でリーマン・ショックを乗り越えた

42戸の賃貸住宅を所有する愛知県豊田市の加藤芳雄さんは、賃貸経営には管理会社との連携が重要と考え、毎月定例会議を行ってきた。毎回50分ほどで、管理会社の管理部門担当者と仲介部門担当者、加藤さん家族が参加する。会議のテーマは、主に空室情報、市場情報、リフォーム、ごみステーションの不法投棄など現状の問題点だ。テーマは毎回、加藤さんが決め、議事録は管理部門担当者がまとめる。これまでに200回を超えた。

この定例会議が最も効果を発揮したのは、リーマン・ショックの時だった。満室だった入居が一気に16戸空室になったのだ。当時、加藤さんの物件では空室7戸が損益分岐点だったため、課題は入居率の改善となる。定例会議で改善策を話し合った結果、以下の4点を実行することになった。

1点目は「仲介会社の拡大」だった。当時、7年間共に対策を講じてきた管理会社の仲介力が下がっていた。そこで、仲介する会社を、1社から他の不動産会社を含めて5社に増やすことを決断したが、長年取引している管理会社に、仲介会社を増やすことを伝えるのは辛かったという。管理会社は、その気持ちを汲んで他の不動産会社にも仲介を拡大することに納得。蓋を開けてみると新規仲介会社が奮闘した。

2点目は、家賃を下げるキャンペーンの実施。家賃を3000円下げた。周辺の物件より半年ほど早く下げたため、先手必勝が奏功した。

3点目は、リフォームを行ったこと。リーマン・ショック前までは、人材派遣会社のスタッフ向けに3DKの部屋を3人入居用に貸し出していたが、人材派遣の需要拡大が見込めないことからターゲットを新婚、ファミリーへとシフト。そのため、間取りを2LDKに変更し内装も変更した。

最後の4点目は、清掃など環境美化の徹底だ。共有のごみ置き場の修理、ごみの分別、1階専用庭の草むしり、春・秋の環境美化運動、放置自転車の整理、壁・給排水管の保全、結露防止の通知の7項目の改善策を行った。以上の対策を実行した結果、8カ月後には15戸、1年かけて16戸すべての空室が解消した。

「家主一人ではうまくいかない。家族をはじめ管理会社、リフォーム会社、仲介会社、さらには地域とのコミュニケーションを考えながら進めていくことが、いい環境をつくり出す」と加藤さんは語る。

■「家主業」ほどいい商売はない

家主業のメリットにはいろいろあるが、最大のものは、従業員を雇うことなく、一人で経営できることだろう。組織の中で、時には理不尽な仕事もさせられる経験を持つ多くのサラリーマンにとって、自分の判断で経営できる家主業は、複雑な人間関係に伴う精神的ストレスが軽減されると同時に、一国一城の主としてのやりがいも感じられる。従業員を雇う代わりに、多くの会社と取引をしながら、賃貸住宅の経営に当たる。管理会社は、まるで自身のスタッフのように、わずか家賃収入の5%という管理料で動いてくれる。こんないい商売は他にはないだろう。

永井ゆかり『1万人の大家さんの結論! 生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主」入門』(プレジデント社)
永井ゆかり『1万人の大家さんの結論! 生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主」入門』(プレジデント社)

不動産で資産拡大に成功してきた人の共通点は、まず、不動産ビジネスに関する正しい知識を身につけ、それをアップデートし続けることだ。また、決して無理な不動産の購入はしないこと。無理をしないために、自身で線引きの基準を持っている。家賃収入と返済比率の割合がこの程度になったら、いくらまでなら新規で購入しても大丈夫、預金が今このくらいあるから、金利がいくらの今なら買い時だという指標があると間違わないだろう。

そして、ここで紹介した家主の方たちの事例を見ればわかるように、家主業を始める前の職業での経験を「知恵」に変え、自身の「哲学」として賃貸経営に生かしている。家主に必要なのは、小手先のノウハウなどではなく、経営に関する知恵と哲学に他ならない。

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永井 ゆかり(ながい・ゆかり)
『家主と地主』編集長
全国賃貸住宅新聞社 取締役。1975年、東京都生まれ。日本女子大学卒業。98年、「亀岡大郎取材班グループ」に入社。住宅リフォーム業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌等の記者を経て、賃貸不動産オーナー向け経営情報誌「家主と地主」編集長、賃貸住宅業界向け新聞「全国賃貸住宅新聞」編集長、2004年、全国賃貸住宅新聞社取締役に就任、現在に至る。新聞、雑誌の編集発行の傍ら、家主や不動産会社向けセミナーでの講演活動を行う。本書が初の著書となる。2児の母。

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(『家主と地主』編集長 永井 ゆかり)

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