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コロナで暴落した"日本株を買い漁った人たち"に待ち受ける悲惨な運命

プレジデントオンライン / 2020年6月11日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/matejmo

■なぜこんなに株価が上昇しているのか

なぜ、こんなに株価が上昇しているのか? 世界中の経済指標が悪化し、実体経済は大きな打撃を受けているにもかかわらず、NYダウ、日経平均ともにコロナショック前の高値まで約8割戻しています(6月5日時点)。現状の株高と実体経済の乖離(かいり)の“不思議”から、多くの人からこの疑問について連日、質問を受けています。そこで、今回、乖離の原因は何なのかを追求し、この乖離にはどのようなリスクが潜んでおり、何に気を付けて判断をするべきなのかをお伝えいたします。コロナショックで仕込んだ多くの個人投資家は次のシナリオを考える必要があります。

株高となっている最大の理由は、アメリカの無制限の金融緩和と米連邦準備制度理事会(FRB)によるジャンク債の購入です。実は、リーマンショックの時を振り返ると、当時、世界第3位の投資銀行が倒産した際、リスクを取り過ぎたために破綻しただけと、「単なる一企業の倒産」としてFRBは“即座に”危機対応をしていなかったのです。しかし、当時のFRBが想定もしていないほど、この倒産は世界中大きな衝撃を与え、立ち上がるのに時間を要したのです。

■日経平均の上昇には2つ理由があった

このリーマンショックの経験を経て、中央銀行は金融危機が起きたらどのような事態に陥るのかを脳裏とデータに刻み込まれました。今回は、彼らが「金融危機を起こしてはいけない」というはっきりとした「命題」と「解決策」を分かっていることが今の株高につながっています。

日経平均の上昇には2つの理由があり、1つは、個人投資家が買い支えていたからです。3月に国内の個人投資家は8454億円の買い越しとなっています。2つ目は4月に日銀がETF(上場投資信託)を購入したためです。日銀は今年3月に、ETFの買い入れ上限額を年間6兆円から12兆円に拡大し、この買い入れ額の拡大を行っています。特に、3月の急落時は1日2000億円のEFTを購入しています。株価が戻ってきた直近は1日1000億円の購入となっていますが、東証1部の売買代金が1日2兆円を割るような水準のボリュームの中で、後場だけで1000億円の投入は大きなインパクトです。これが株高を演出した要因です。

■FRBのバランスシートの拡大は救うのか、崩壊を招くのか

4月にFRBはこれまでタブーとされていた投資不適格債も買い入れの対象としました。倒産確率が高いグループの資金繰りを支えることを約束したことになり、債券市場、株式市場も幅広い業界で買いが向かいました。何としても、金融危機だけは避けなければならないという意志が表れているのが、無期限の金融緩和とジャンク債まで買う行為なのです。

今回のFRBのバランスシートの拡大がどれほど、“異常値”であるか過去と比較してみます。三菱UFJモルガンスタンレー証券の藤戸レポートによるとFRBは「2017年10月から2019年5月まで資産圧縮」を行っていました。その後「2019年9月以降月額600億ドルの購入」をしており、この時点では、緩やかにバランスシートの拡大を行っていました。が、コロナが発生し一気にバランスシートの拡大に突き進んでいます。「2020年3月15日緊急利下げと7000億ドルのドル資産購入、4月9日に2.3兆ドルの資金供給の発表」と、FRBの直近のバランスシートの拡大は、短期間に異例の規模での金融緩和となっています。

この過剰流動性が果たして、本当に金融危機にならないように救うのか、むしろバブルを起こして後に崩壊へと向かうのか、誰も正解が見えないまま突き進んでいるのは間違いないのです。

■価格帯別累計売買、2万1000円はポイント

日経平均については、2万1000円はやれやれ売り(購入した株が値下がりし、保有していたところ、相場の回復で買い値に近づいて、売却すること)が出やすいです。

価格帯別累積売買とは過去に「いくらの値段で・どれくらい売買」されたのかを集計したものですが、これをみると、日経平均は2万1000円以上から500円刻みで大量の売買が過去にあったことがわかります。過去に大量の売買があった値段には含み損を抱えている人が多く待ち構えているため、株価が戻ってきた場合には「含み損がなくなったところで早く売ってスッキリしたい」と考える人がたくさんいます。3月の急落過程で買い持ちの整理が大幅に進んではいるものの、戻り待ちの売りが強くなる水準でもあります。ここから、先は海外投資家の買いがどの程度続くのかが、日経平均の上昇のカギとなりそうです。

■今後の悪材料。特に懸念すべきはローン担保

現在の過剰流動性こそが、「リスクそのもの」である可能性もありますが、上記で述べた通り、リーマンショックの過去の経験から、今はこの過剰流動性のまま突き進むしかありません。5月の雇用統計でアメリカ失業率13.3%と前月より改善したものの、依然、厳しい状況です。さらに、激化する米中対立やアメリカ大統領選挙を控えて株価の調整の可能性など、今後の悪材料は多数あります。特に懸念すべきものは、ローン担保債券の増加です。海外クレジット投資における懸念です。

リーマンショックの際には、金融危機の引き金となったのは、住宅ローン、住宅ローン担保証券(RMBS)といった家計債務でした。今回、金融市場が懸念しているのが、信用力の低い社債、信用力の低い企業向けの融資、いわゆるレバレッジドローン、それを証券化したCLO(ローン担保証券:Collateralized Loan Obligation)です。このCLOの格下げが3月に入り急速に行われています。

リーマンショック前の2007年3月時点でのサブプライムローン残高は約1兆3000億ドルでした。直近のデータを見てみると、2018年時点ではBBB格社債が約3兆2000億ドル、ハイイールド社債が約1兆2000億ドル、バンクローンが約1兆2000億ドル、レバレッジドローンが約1兆1000億ドルという規模感に膨れ上がっています。

■第2波が襲来し、株価が下落した時にチェックするデータとは

新型コロナの第2波の襲来によって株価が再度下落する可能性については多くのアナリストが言及しています。では、株価が下がり始めた時に、その下落が単なる調整なのか、いったんリスク資産から撤退した方がいいのでしょうか。その判断は非常に難しいです。そこで、全てを網羅しているわけではではありませんが、2つのデータをチェックすることで、株価の下落の意味を見定めるヒントになるかもしれません。

ポイントは「長期金利」と「ドルインデックス」です。ドルインデックスとは、ユーロ・円・ポンド・スイスフランなど複数の主要国通貨に対する米ドルの価値を指数化したものです。「ドルインデックス」の数値が高いと主要通貨に対して米ドルが買われていること(ドル買い)を示し、低いと米ドルが売られていること(ドル売り)を示します。

『量的緩和2.0 コロナ危機後の投資戦略』の中で、岡崎 良介氏は「長期金利」と「ドルインデックス」について言及しています。株価が下がっても、長期金利とドルインデックスが上昇していなければ、米国の金融市場はFRBのコントロール下にあります。しかし、長期金利とドルインデックスが上昇した場合は、米国債の下落・ドル高になり、再度流動性危機の襲来であり、リスク資産から撤退し、FRBの次なる打開策を見届ける必要があります。最悪のシナリオとして、株価下落する中で、長期金利上昇(米国債の下落)、ドルインデックス下落(ドル売り)というトリプル安の展開になった場合は“破産”のサインの可能性があります。長期金利の上昇を伴った無秩序なドルの下落が起きた時には、FRBの打開策が見つからないでしょう。こうした事態が長期化してしまうと、ドル基軸通貨体制の崩壊、つまり、現在の資本主義社会の崩壊も懸念されると述べています。

この先、株価の下落が起きた場合に、長期金利とドルインデックスの動きがどのようになっているのか、上記のシナリオを参考に投資行動をし、個人投資家は自らの資産を守っていただきたいですね。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。

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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)

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