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「閉店ラッシュが止まらない」1年で34店減ったモスバーガーの苦境

プレジデントオンライン / 2020年6月12日 11時15分

ハンバーガーチェーン「モスバーガー」の閉店ラッシュが止まらない。この1年だけで34店減り、6年前と比べると134店が消えている。業績も計画にとどかず、上向かない。なぜ苦境から抜け出せないのか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「モスの商品やキャンペーンには話題性が足りない。マクドナルドと比べるとその差は歴然としている」と分析する――。

■6年前と比べて134店が減った

モスフードサービスが展開するハンバーガーチェーン「モスバーガー」の閉店ラッシュが止まらない。3月末時点のモスバーガー事業(国内)の店舗数は1285店で、1年前からは34店減った。当初の計画では12店減にとどまる見込みだったが、さらに増えて、最終的な閉店数は48店となった。

モスバーガーは店舗数の減少傾向が続いている。6年前と比べると店舗数は134店減っている。これは開店を差し引いているので、閉店した数だけでみれば251店になる。

店舗数の減少が響き、2020年3月期連結決算は計画未達に終わった。売上高は従来予想より1.4%少ない689億円(前期比4.1%増)、営業利益は同33.7%少ない10億6000万円(同2倍)、最終損益は同63.5%少ない3億6500万円の黒字(前期は9億700万円の赤字)だった。

■6期連続で既存店客数は前年割れ

モスバーガーは客離れで長らく不振が続いている。既存店の客数は14年3月期~19年3月期まで6期連続で前年割れが続き、既存店売上高も長らくさえない状況が続いている。この客数減の時期と先述した大量閉店の時期は重なっており、不採算店の閉鎖を進めてきたといえる。

20年3月期は客数が1.9%増と前年を上回り、既存店売上高も4.9%増と伸びてはいるが、これは18年8月に発生した食中毒による落ち込みの反動と考えられる。既存店売上高は当初目標(8%増)を大きく下回っている。この当初目標は食中毒発生直前の18年3月期と同じ水準(18年3月期比100%)としていたので、これを下回ったということは食中毒前の水準には達していないと言っていいだろう。

一方で、新型コロナウイルスの影響を考察する必要もある。モスは2月に3店を休業し、13店で営業時間を短縮。3月は15店が休業し、249店が営業時間を短縮した。また、3月は外出自粛の影響も大きい。結果として既存店売上高は2月が15.9%増と大きく伸びていたが、3月は0.9%増と微増にとどまった。

■テイクアウト需要で3月4月は売上高プラス

ただ、外出自粛期間が生じたことは、むしろモスのようなファストフードにとってはテイクアウト需要が高まるなど、必ずしもマイナスの影響だけではない。

日本フードサービス協会の調査によれば、3月の外食売上高(全店ベース)が17.3%減、4月が39.6%減と大きく減った一方で、ハンバーガーチェーンを含む洋風ファストフードは3月が0.9%減の微減にとどまり、4月は2.8%増と伸びている

モスも3月の既存店売上高が前述の通り0.9%増、そして4月は3.7%増とプラスだった。ライバルのマクドナルドは、3月が0.1%減と微減だったものの4月が6.5%増と大きく伸びている。いずれもテイクアウト需要が下支えしたため、大幅減収にはならなかったのだ。こうした状況から、新型コロナがモスの20年3月期の既存店売上高に与えた影響はプラス面とマイナス面が同等で差し引きゼロといったところではないだろうか。

以上を総合的に考えると、現在のモスの状況は良いとはいえない。既存店売上高が当初目標を大きく下回ったのが致命的事実で、食中毒や新型コロナがなかったとしても業績は上向いていないということができる。

■話題性のある打ち出しができていない

なぜモスの業績は上向かないのか。それは、話題性のある打ち出しができていないことが大きい。競合であるマクドナルドと比較するとわかりやすい。

マクドナルドのご飯バーガー

マクドナルドは14年の期限切れ鶏肉問題や異物混入問題で客離れを招き業績が悪化したが、19年12月期に直営店とフランチャイズ(FC)店の合計売上高が創業以来最高の5490億円を叩き出し、見事に復活を遂げている。

そこで大きな役割をはたしたのが、話題性のある打ち出しだ。商品の人気投票「マクドナルド総選挙」や、「マック」と「マクド」どちらの愛称に愛着があるかを決めるキャンペーンなど、斬新な施策を打ち出した。その結果、既存店売上高は15年12月~20年2月まで、51カ月連続で前年を上回っている。

一方、モスはここ数年話題性のある打ち出しができていない。マクドナルド並みに話題になったものは見当たらないのではないか。もちろん何もしていないわけではない。たとえば、2019年9月から現在にかけて「モスジャパンプライド」と銘打ち、モスならではの商品を提供する取り組みを行っている。だが、パンチに欠ける感が否めず、話題になったとは言い難い。こうした話題性の欠如が既存店業績の低迷につながったといえるだろう。

2019年9月にモスが新発売した「海老天七味マヨ」と「シ゛ャンホ゛メンチ」
画像=モスバーガープレスリリースより
2019年9月にモスが新発売した「海老天七味マヨ」と「ジャンボメンチ」 - 画像=モスバーガープレスリリースより

■マクドナルドの“ご飯バーガー”は話題性抜群だった

キャンペーンでの明暗の分かれ方は、モスとマクドナルドの“ご飯バーガー”にも表れている。ご飯バーガーとはバンズ(パン)の代わりにご飯を使ったバーガーのことだ。モスは1987年に「ライスバーガー」を開発し、販売してきた。

一方、マクドナルドは今年2月、自社史上初となるご飯バーガーを発売。「ごはんてりやき」「ごはんベーコンレタス」「ごはんチキンフィレオ」の3種で、予想を上回る好調な売れ行きとなった。

マクドナルドの「ごはんてりやき」「ごはんベーコンレタス」「ごはんチキンフィレオ」の3種。
マクドナルドプレスリリースより
マクドナルドの「ごはんてりやき」「ごはんベーコンレタス」「ごはんチキンフィレオ」の3種。 - マクドナルドプレスリリースより

好調の理由には、話題性があったことが大きい。ご飯バーガーは先述した通り、モスが先行して販売してきた商品だ。その存在を知っている人は「マクドナルドがついにご飯バーガーに手を出したのか」と驚いたに違いない。逆に、これで初めてご飯バーガーなるものを知った人にとっては、斬新な商品として映っただろう。この話題性が、予想を上回る売れ行きにつながったと考えられる。

■もはや素材にこだわるだけでは選ばれない

モスも今年5月、前述の「モスジャパンプライド」シリーズの一環として、ご飯バーガーの新商品「モスライスバーガー海老天めんたい味」「モスライスバーガーよくばり天めんたい味<海老とかきあげ>」を投入したが、長年このタイプの商品を販売している実績がある分、新規性に欠けた。タイミング的にも、マクドナルドに話題をさらわれてしまった。

「モスライスバーガー海老天めんたい味」と「モスライスバーガーよくばり天めんたい味<海老とかきあげ>」
画像=モスバーガープレスリリースより
「モスライスバーガー海老天めんたい味」と「モスライスバーガーよくばり天めんたい味<海老とかきあげ>」 - 画像=モスバーガープレスリリースより

現代はおいしい食べ物があふれている。それゆえ、単においしいだけでは選ばれなくなっている。モスの商品は素材にこだわっており、どれもおいしいことは多くの人が認めるところだ。だが、それももはや当たり前になっており、それだけでは消費者の興味をかき立てることができない。今の時代に商品を売るには、以前にも増して話題性が必要なのだ。

■品質の追求以上に話題性が重要になっている

ほかの外食チェーンのヒット商品を見てもこのことがよくわかる。例えば、牛丼チェーン「吉野家」が昨年2月に発売した「牛丼」の新サイズ「超特盛」と「小盛」のヒットがそうだ。どちらも初速が良く、超特盛は1カ月で販売数100万食、小盛は同じく60万食を超え、共に想定の2倍を売り上げた。

これは28年ぶりの新サイズというニュース性に加えて、名称に「超」と遊び心のある絶妙な言葉をつけて話題を集めることに成功したから、という理由が大きい。実際、ネット上では「“超”という名前が良い」といった言葉をよく見かけた。これがもし「1年ぶりの新サイズ」で例えは゛「特大盛」といった平凡な言葉だったら、これほど売れなかっただろう。

牛丼チェーン「松屋」が今年1月に全国販売を始めた「シュクメルリ鍋定食」のヒットも同様だ。シュクメルリは鶏肉をガーリッククリームソースで煮込んだ、伝統的なジョージア料理。一部店舗で限定的に販売したところ2万件超の声が寄せられるほど反響があり、売り切れが続出するほど人気が出たのだ。これを受け、全国販売するに至った。あまりの人気に、松屋が公式再現レシピを「クックパッド」に載せたほどだ。

これほどの反響があったのは、味もさることながら、日本ではあまり馴染みのないジョージア料理という話題性の力が大きい。「ジョージア料理ってどんな料理なんだろう?」と興味をかき立てることに成功したのだ。

もちろん、高い品質を追求することは大切だ。だが、こうした事例が示す通り、飲食店の商品をヒットさせるためには、それ以上に話題性が欠かせない時代になっているということなのだ。モスが復活をはたすには、その点を強く意識した打ち出しを行う必要があるだろう。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。

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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)

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