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「うちの子は本当にダメで」という親の子は本当にダメになる

プレジデントオンライン / 2020年6月18日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/omgimages

日本ではわが子をほめられたら「そんなことありません」と謙遜するのが礼儀とされる。だがハワイと上海で塾を経営し、世界中の子どもたちと触れ合ってきた船津徹氏は、「日本の謙遜の文化が子どもの自己肯定感を下げている」と警鐘を鳴らす――。

※本稿は、船津徹著『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「自分は愛され受け入れられている」という自信

自己肯定感を支えているのは「自分は愛され受け入れられている」という受容感情です。この感情は、乳幼児期に「親から与えられるもの」です。親から大切にされ、親の愛情を実感できると「自分は愛され受け入れられている」と心から信じられるようになります。

ところが年齢が上がり、子どもの生活範囲が家の外へと広がり、家族以外の人との交流が増えていくと、だんだん自己肯定感が下がっていくのです。つまり「自分は愛され受け入れられている」という自信が揺らいでくるのです。

保育園や幼稚園など、新しい環境にスムーズに適応できれば自己肯定感は上がり、うまくいかなければ「受け入れてもらえない」と感じますから自己肯定感は下がります。いかに集団社会にうまく適応できるか、周りの人に受け入れてもらえるかが自己肯定感に影響するのです。

■年齢とともに自己肯定感が下がる日本人

日本人は自己肯定感が年齢とともに下がっていく割合が大きいのですが、その理由として考えられるのが、日本の伝統文化と集団重視の価値観です。

日本にはほかの国には見られない独特の伝統文化や価値観があり、それが日本人のアイデンティティを形成している一方で、子どもの自己肯定感を下げる原因となっている可能性があるのです。

日本は四方を海で囲まれた島国であり、列強の支配や大陸からの文化的影響を強く(直接)受けることがなかった国家です。その結果、世界に類を見ない独自の文化が醸成されました。日本に住んでいると身近すぎてわからないのですが、海外から見ると、日本にはミステリアスな雰囲気があります。

■親の謙遜を言葉通りに受け取る子ども

日本には独特の文化的習慣が多くありますが、世界から見て特徴的なものが、「謙遜文化」と「集団主義」です。

謙遜文化について説明します。「◯◯ちゃんは頭がいいね!」と、知人から子どもをほめられたとき、日本人の親は100%、「そんなことないよ。うちの子、全然できないよ」と否定します。もちろん親は謙遜しているのですが、これを横で聞いていた子どもは、「ボクは全然できないんだ……」と言葉通りに受け取ってしまう可能性があるのです。親の否定言葉ほど子どもの自信を下げるものはありません。

「自分を下げてみせる」というのは日本に古くから伝わる謙遜文化です。身分制度が複雑化していった歴史の中で、身分の上下を明確にするために、「相手を上げる」ことに加えて「自分を下げる」という日本独特の表現方法が生まれたのです。

謙遜は、本来「自分を下げる」ことが目的だったのですが、いつの間にか、「身内を下げる」に変貌し、習慣化していきました。今でも日本では、「愚妻」「愚息」「愚弟」など、身内のことを下げて表現することは珍しくありません。

■子どもをけなすことを「当たり前」にしてはいけない

親が自分自身を下げることはかまいませんが、子どものことまで下げることが習慣になると、「うちの子はダメで」「本当にグズで」「言うこと聞かなくて」と当たり前に子どもをけなすことに発展する可能性があります。そこまで悪化しなくても、ママ友との雑談の中で「うちの子は本当にダメで困るわ」と、子どもを下げることに無神経になっている親の姿をよく見かけます。

とは言え、「◯◯ちゃんは賢いね!」と人からほめられたとき、「そうなの。うちの子、天才なのよ!」という肯定的な対応を日本でするのは相当な勇気が必要です。心の中では「うちの子は天才」と思っていても、人間関係を円滑にするために、「そんなことないよ!」と一度は否定するのが一般的ですよね。

では、どうしたら子どもを下げずに、かつ周囲に嫌みにならない対応ができるのでしょうか。

■褒められたら「子供でなく自分を下げる」

我が子をほめられたときの対応策その1は「自分を下げる」ことです。「◯◯ちゃんは本当に賢いね」と言われたら、「そうなのよ、トンビがタカを生んだのよ」「そうなのよ、私に似なくて本当によかったわ」と、子どもへのほめ言葉は受け入れ、すかさず親が自分を下げれば嫌みにならずに済みます(笑いにしないと嫌みになる可能性があるので注意)。

対応策その2は「身内を上げること」です。「◯◯ちゃんは頭がいいね」とほめられたら、「そうなのよ、旦那に似てくれて助かったわ」「そうなの。きっとおじいちゃんの隔世遺伝だわ」と、パートナーや身内をほめるのもいい方法です。身内を下げるのはいけませんが、上げるのであれば何の問題もありません(こちらも、笑いにしないと身内自慢になる可能性があるので注意)。

ちなみに「ほめる文化」が浸透しているアメリカでは、子どものことをほめられたら、素直に「Thank you!」と相手に感謝します。人からほめてもらうことで子どもに自信がつきますし、自分の子育てをほめられていることでもあるので、ごく自然に「ほめてくれてありがとう!/Thank you!」という言葉が出てくるのです。

■子ども自身も「自己否定」が口癖になると……

子どもは親や周囲の大人の言動からコミュニケーション方法を学びます。もちろん、「自分を下げる」という日本的なコミュニケーションスタイルも自然に継承していきます。個人差がありますが、小学校高学年からティーンエイジャーくらいになると、子どもも自分を「下げる」表現を使うようになります。

友だちから「すごいじゃん!」と言われると、心の中ではそう思っていなくても「そんなことないよ」「全然だめだよ」「私なんて」と謙遜するようになります。

最初は謙遜のつもりでも、自分を否定する言葉を口にすることが習慣化すると、本当に自己肯定感が下がってしまう危険性があります。

■ポジティブな言葉は脳に喜びを与える

米ロヨラメリーマウント大学のマーク・ウォルドマン教授と脳神経学者のアンドリュー・ニューバーグ博士の共同研究によって、「ノー」というネガティブな言葉がストレスホルモンであるコルチゾールを生成すること、そして「イエス」というポジティブな言葉が満足ホルモンであるドーパミンを放出させることが明らかになりました。本音でなくても「自分はダメだよ」と口に出していると、ホルモンの働きで本当に気持ちが下がってしまう可能性があるのです。

船津徹『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方 』(KADOKAWA)
船津徹『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)

また、アメリカのクリエイティング・ウィー・インスティテュート社の行った研究では、優しく温かい言葉が幸福ホルモンであるオキシトシンの生成を増やすことが発表されました。さらに同研究によって、肯定的で温かい言葉は、従業員の知的能力と生産性を高めることが明らかにされています。

「言葉」は私たちが思っている以上に「脳」に影響を与えるのです。特に年齢の小さい子どもは思い込みが激しいので、親や周囲の人の言葉によって簡単に自己肯定感が上がったり、下がったりします。ネガティブな言葉を一切使わないというのは難しいでしょうが、少なくとも子どもの前ではポジティブな言葉、温かい言葉、ほめ言葉を多くすることを心がけてください。

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船津 徹(ふなつ・とおる)
TLC for Kids 代表
明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て、幼児教育の権威である七田眞氏に師事し英語教材の制作などを行う。その後独立し、米ハワイ州に移住。2001 年、ホノルルにTLC for Kids を設立。英語力、コミュニケーション力、論理的思考力など、世界で活躍できる人材を育てるための独自の教育プログラムを開発する。著書に、『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)、『世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方』(大和書房)ほか。

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(TLC for Kids 代表 船津 徹)

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