橋下徹「安倍首相との対話で見えた総選挙の3文字」
プレジデントオンライン / 2020年6月24日 11時15分
■一般の労働者なら完全に「労働基準法違反」
6月20日(土)、ABEMA(旧AbemaTV)での僕の番組、「NewsBAR橋下」に安倍晋三首相が出演して下さった。1時間たっぷりとお話しさせてもらった。
(略)
安倍さんは19日に国会が閉幕して、僕の番組に出演した翌日、21日の日曜日に5カ月ぶりにやっと丸一日休日を取ることができたらしい。コロナ対応に追われ、新聞報道では140日間連続執務という記事が出ていた。
(略)
5カ月間、1日も休日がない。
これ、一般の労働者だったら完全に労働基準法違反、超過重労働だよね。批判の嵐が沸き起こった、ミュージシャンの星野源さんの動画に合わせた安倍さんの優雅なステイホーム動画も、あれは丸一日の休日ではなかったんやね(笑)
(略)
■これが「攻めの解散総選挙」の黄金則だ
メディアを通じて、早期の解散総選挙がささやかれ始めた。安倍さんの自民党総裁任期満了は、来年2021年9月。衆議院議員の任期満了は翌10月。
(略)
選挙は合戦だ。追い込まれた状態で合戦を始めるのは戦略・戦術としてまずいことは一目瞭然だ。
ただ政治評論家などの外野にこんなことを言われなくても、政治家本人が一番よくわかっている。だから支持率が下がり始めたときに、どう攻め込む形に転換して合戦を始めるか。ここに政治家は知恵を振り絞るが、それを実際にやるのはほんと難しい。
僕も何度も選挙を経験してきたがその経験からすると、国民の間に大争点を巻き起こし、それについてYESかNOかを国民に問う環境を作る。これが「攻めの選挙」に持っていく黄金則だと思う。
支持率が下がり始め、いったん「リセット」するための解散総選挙と、大きな政策の方向性のYES・NOを国民に問うて、政策を進めるための解散総選挙。
前者は政権維持のためのもの。他方、後者は国民・国家のためのもの。この後者こそが攻めの解散総選挙というものだ。
安倍政権はこれまで6回、国政選挙で勝利している。これは凄いことだ。ただし政策の方向性のYES・NOを明確に国民に問うて、選挙によってそれを進めたのは、2014年の衆議院解散総選挙と2016年参議院議員選挙だけだと思う。
この2つの選挙によって、本来2015年10月から消費税が8%から10%に引き上げられるところを、2019年10月まで実施時期を後ろへ引っ張った。
消費税の税率引き上げは、民主党の野田政権のときに、与野党合意によって2012年に法律で定められた。一度法律で定められたことを延期しようというのであれば、それは選挙で問うて、法律を改正していくしかない。
そこで安倍さんは国民に信を問うて選挙で勝利し、消費税増税を延期した。
■政策を進めるのが、本来の「選挙の使い方」
2014年の衆議院解散総選挙のときに、僕は日本維新の会の代表としてテレビの党首討論に参戦した。そのときのCM中に、安倍さんに「総選挙を利用しなければならないほど、増税延期をすることは大変なことなのですか? 総理の権限で進めるわけにはいかないのですか?」と問うた。
そのときに安倍さんは「周りはみんな増税だって言うからね」と言っていた。財務省をはじめ、自民党の中でも増税論者は山ほどいる。世間でも増税の必要を説くメディアやインテリが山ほどいる。財界までもが増税を言っていた。
そして税と社会保障の一体改革として、すでに法律もできている。社会保障を充実させるための財源として消費税の増税が必要だというロジックは、思いのほか世間に浸透していた。このような状況で増税をストップするには、解散総選挙で勝利し、国民の信を得るしかない。
いったん決まった増税について、「増税ストップ」と口で言うのは簡単だけど、それを実際にやるのはほんと大変なんだよね。
そして、これが本来の「選挙の使い方」だと思う。下がり続ける支持率を食い止めるために選挙を使うのは邪道だ。
(略)
僕は番組で、安倍さんも重々わかっていることをあえて質問として投げかけた。
「総理のお爺さんである岸(信介)首相は、日米安保条約の改定を断行されました。当時は日本国中で反対の嵐が吹き荒れました。それでも岸首相は改定を断行し、その責任をとって退陣しました。その後現在に至るまで、日米安保条約の改定は本当に日本にとって必要なことだったと国民の多くが痛感しています。今、日米安保条約についてそもそも反対だという人は、ほとんどいません。こういうことを成し遂げるのが政治家の仕事だと思います」
経済をよくすることは政治の役割として当然のことである。しかし経済は、その時々の国民の利益。それと同時に、国家の将来の背骨にあたる部分をしっかりと組み立てていくことも政治の重要な役割だと思う。
その背骨の一つが、憲法改正の国民投票だ。
■国会閉幕後、政権中枢の4人が語り合ったのは「戦の誓い」か!?
安倍さんが僕の番組に出演して下さった日の前日である6月19日夜。3カ月ぶりに安倍さんは、夜の会食に参加した。コロナ禍が始まった時に「夜の会食はけしからん!」という世間の声が上がったことに配慮し、夜の会食は控えられたようだ。実際、コロナ対応で会食どころではなかっただろうが。
その久しぶりの会食のメンバーは、安倍さんをはじめ、菅義偉官房長官、麻生太郎副首相兼財務大臣、甘利明自民党税制調査会会長の4人。報道によればこの4人の会食は実に3年ぶりだとか。
この4人は安倍政権の中枢中の中枢のメンバーだ。安倍さんを自民党総裁に押し上げ、政権奪取を果たした原動力である。この4人の人間関係は強固なもので、政治グループというものは、こういう人間関係の塊がエンジンとなる。
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さあこのメンバーの会食。何が話し合われたのか、安倍さんは番組内で、一部を紹介して下さった。
メディアで報じられても問題にならない範囲で、しかも安倍さんが一番言いたかった、菅さんとの関係について特に話して下さった。「菅さんとの関係は何ら問題ない」ということを。コロナ対応で安倍さんと菅さんとの間に隙間風が吹いているという報道が盛んに出ていたけど、それを打ち消すメッセージだ。
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しかし僕は感じる。あの4人のメンバーで「戦の誓い」をやっていることを。それは具体的に言葉を発する必要はない。あのメンバーの中で、わざわざ言葉に出す必要はない。
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今、安倍政権の支持率は下がっていて、この機に乗じて安倍さんの寝首を掻こうとしている連中は野党には当然、与党の中にもたくさんいる。それが政治の現実だ。
そして安倍さんの総裁任期はあと1年半。
こんな情勢の中でも、再度政権を立て直し、安倍さんの悲願をなんとか実現しようと口には出さずとも4人で誓い合ったはずだ。戦うべきときには炎を燃やして死力を尽くそうと。
言葉に出さず談笑の中で、そんな誓いを立てたはずだと思う。
(略)
(ここまでリード文を除き約2700字、メールマガジン全文は約1万300字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.205(6月23日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【安倍政権「最後」の総選挙(1)】憲法改正へ動くか――総理が僕の番組に出て語ってくれたこと》特集です。
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元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。
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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)
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