「天気の雑談」で一流が必ず付け加えるシンプルなひと言
プレジデントオンライン / 2020年6月22日 9時15分
※本稿は、桐生稔『雑談の一流、二流、三流』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■三流は「今日は暑いですね」から会話を始める
【①最初のひと言】
こんな経験はありませんか?
自分「今日は暑いですね」
相手「そうですね。暑いですね……」(沈黙)
自分「今日は暑いですね。30℃を超えるそうですよ」
相手「30℃ですか。どうりで暑いと思った」
自分「ですよね……」(沈黙)
話しはじめてすぐに沈黙が生まれる会話と、自然に続く会話。一流の人の会話は、もちろん後者ですが、いったい何を意識して会話をはじめているのでしょうか?
実は明確なポイントがあります。
これを解決する前に、一つ質問に答えてください。人間が一番興味があるのは、誰だと思いますか? 大好きなアイドルでしょうか? それとも気になっている同級生でしょうか?
違いますよね。一番意識しているのは「自分」だと思います。例えば、修学旅行の集合写真。パッと見て、好きな女の子と自分の顔。どっちの顔を探すのが速いでしょうか? きっと自分の顔を発見するほうが速いですよね。自己紹介と他己紹介。どっちがうまくできるでしょうか?
きっと自己紹介だと思います。自分のことが一番よくわかっているからです。人間は自分のことを一番意識している。そして自分のことが一番話しやすい。むしろ話したいと思っている。一流の人は、そこを明確に理解しています。
■一流の会話は、話題の矢印が必ず相手に向いている
一流の人の会話をひも解くと、必ず会話の主題が相手にあることに気づきます。こんな会話です。
「今日は暑いですね。今日は30℃を超えるそうですよ。夏バテとか平気ですか?」
「今日は本当に暑いですね。ちょっとクーラー効きすぎですかね? 大丈夫ですか?」
「今日は暑さがすごいですね。しかし○○さんって夏男って感じですよね。夏はお好きですか?」
このように話題の矢印を必ず相手に向けて、相手が話しやすいテーマを設定しています。あなたの周りに、「あの人と話していると、気づいたら会話が続いてる~」って思う人、いませんか? もしいれば、ぜひ会話に注目してみてください。必ずテーマがあなたに向いているはずです。
☑相手が話題の中心になるように話を振る
■三流は話しかけられるのを待ち、二流は先に話しはじめる
【②ファーストコンタクト】
刑事ドラマを観ていると、捜査官が犯人と交渉するシーンがよく出てきます。このとき、刑事は「質問」を使って交渉を進めていきます。質問することで、回答を引き出し、徐々に犯人を追いつめていくのです。
普通のドラマでも、よく脇役が主人公に向かって、「最近どうよ?」と質問を投げかけるシーンがあります。主人公が質問に答えることで、主人公にスポットライトが当たっていきます。
人間は質問されると答えてしまいます。例えば、「今日のランチは何食べたの?」と聞かれれば、瞬間的に今日のランチのシーンを思い出します。学校の授業では、先生に「2+2は何ですか?」と質問されたら、それに答える。我々は質問されて、それに答える習慣の中で生きています。
一流はこの習慣を明確に理解しています。上手に質問を使って、相手から会話を引き出し、会話をリードしています。実は会話の主導権を握っているのは、話している側ではなく、質問をしている側なのです。
■一流は「質問」を使って会話を引き出す
私の前職の上司は、全国ナンバーワンのトップセールスマンでした。その上司と営業で同行したとき、このように必ず先手を取って質問するのです。
「社長、こんにちは! 社長、最近ソファー変えられたんですか?」
「所長、ご無沙汰しております! しかし焼けてますね~? ゴルフですか?」
以前、大手生命保険会社のトップセールスマンと交流会を開催したことがありました。その方は出席者全員に、「いらっしゃい~! 元気?」と必ず声をかけます。質問することで会話の主導権を握っていました。
シリコンバレーの偉大なコーチ、ビル・キャンベルをご存知でしょうか? アップルの元CEOスティーブ・ジョブスやグーグルの元CEOエリック・シュミットの師と言われる方で、『1兆ドルコーチ』(ダイヤモンド社)という本が大変有名になりました。
ビル・キャンベルは、コーチングをするときに必ず、「How are you? What are you working?(調子はどう? 今何に取り組んでいるんだい?)」という質問から入るそうです。質問をして先手を取る。質問された人は必ず答える。このシンプルな法則を一流は徹底しているのです。
☑相手が話しやすいように会話を導く
■三流は挨拶だけで終了し、二流は挨拶にひと言加える
【③出会いがしらの挨拶】
挨拶から雑談がはじまるケースもよくあります。例えば、出社した直後、上司に朝の挨拶をする。会社に向かう電車の中でばったり同僚に会って挨拶をする。はじめましてのお客様に挨拶する。
このときに、「おはようございます」だけで終わってしまうと、会話が続きません。そこで、「挨拶にひと言つけ加える」という方法が、いろんな本やセミナーで奨励されています。例えば、以下のように、挨拶にワンフレーズをプラスします。
・上司との挨拶「おはようございます。昨日は遅くまでありがとうございました」
・同僚との挨拶「おはよう! 昨日の飲み会楽しかったね」
・お客様との挨拶「はじめまして。お会いできて光栄です」
確かにこれも悪くないと思います。
しかし、「おはようございます。昨日は遅くまでありがとうございました」→「ありがとね」沈黙……。「おはよう! 昨日の飲み会楽しかったね」→「楽しかったね……」(沈黙)、「はじめまして、お会いできて光栄です」→「こちらこそ……」(沈黙)と、そのあとが続かないケースがよくあります。
■一流は先手を取り、話しやすい「ふた言」を加える
自然に会話をスタートするには、挨拶にも仕掛けが必要です。その仕掛けとは、「ツープラス」です。挨拶にもうふた言追加するのです。
「おはようございます。(挨拶)昨日は遅くまでありがとうございました。(ひと言)しかし部長、本当にタフですね。(ふた言)」
「おはよう!(挨拶)昨日の飲み会楽しかったね。(ひと言)アレははしゃぎすぎでしょ。(ふた言)」
「はじめまして。(挨拶)お会いできて光栄です。(ひと言)噂はかねがねお聞きしております(ふた言)」
挨拶にワンワードプラスするのではなく、ツーワードプラスしていきます。挨拶の次に空白のボックスが二つあり、必ず二つ埋めないといけないというように考えてみましょう。
「久しぶり! ①元気だった? ②何年ぶり?」
「こんにちは。①いつも元気ですね。②私も見習わなきゃ」
「よ! ①元気? ②最近、忙しい?」
みたいに、話のネタを入れます。ボックスに何を入れるかは自由ですが、入れた内容によって次の話の展開が生まれます。
一流は先手を取るのが上手です。先手とは先に話しやすい空気を作ることです。挨拶は雑談の一番はじめ。会話のエンジンをかけるかのように、挨拶にもうふた言追加して会話をスタートさせてみてください。
☑最初の挨拶から雑談をなめらかにスタートさせる
■三流はあたふたネタを探し、二流は「木戸に立てかけし衣食住」から探す
【④話題がないとき】
はじめましての人とお話しするとき、「最初に何を話したらいいかわからない……」と困ることがありますよね。また、毎日話している上司でも、ばったりエレベーターで会ったら、「話すことがない……」と気まずい空気になることもあります。
よく雑談ネタで紹介されるもので、「木戸に立てかけし衣食住=きどにたてかけしいしょくじゅう」というものがあります。き=季節、ど=道楽、に=ニュース、た=旅、て=天気、か=家族、け=健康、し=仕事、い=衣料、しょく=食事、じゅう=住居、を話題にすると話が広がるという内容です。
しかし、毎回、今日は季節、今日は道楽、今日はニュース、今日は旅について……なんてネタを探していたら大変ですよね。しかもネタの種類が多すぎて覚えられません。
一流と言われる人は常に王道です。王道とは、「誰もが絶対に興味があるネタからはじめる」ということです。
■ネタに最適な「人間が毎日する5つのこと」
ニュースの話を振られても、その話を知らない人もいるでしょう。旅の話を振っても、「私、あまり旅行とかは行かないんで」という人もいます。天気の話をしても、毎回天気の話では飽きられます。では、「誰もが絶対に興味があるネタ」とはなんでしょうか? それは人間が毎日する5つのことです。
1:食べること
2:動くこと
3:働くこと
4:お金を使うこと
5:寝ること
何か事情があって、まったくしないときもあるかもしれませんが、基本的には1~5は毎日行う行為です。人間が毎日やっていることは人間にとって大事なことです。大事なことは誰でも興味があります。興味があることを話題にすれば、どんな人とも話が展開しやすくなります。
会社にいく途中、バッタリ上司に会ったら、1~5の王道ネタで、各方面に話題を展開
していくことが可能です。
る業務って何ですか?」
いますか?」「最近、自己投資とか趣味とかされています?」
休みの日は、しっかり休息を取れてます?」
■雑談の目的は、相手に心地よい空間を作ること
話すネタをたくさん用意してマシンガントークのように話す人と、自分に興味があるこ
とを話題にしてくれる人では、どちらが話しやすいでしょうか?
雑談はあくまでも相手との心地よい空間を作ることが目的です。話す中身よりも、話しているときの「心地よさ」を作り出すのが一流です。
☑人間が毎日実施している5つのことをテーマに話す
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モチベーション&コミュニケーション代表
メンタル心理カウンセラー、上級心理カウンセラー。グッドウィルの支店長、エリアマネジャー、音楽スクールの事業責任者を経て2013年より現職。現在、全国20カ所でコミュニケーションスキルを上げるビジネススクールを運営。著書に『10秒でズバッと伝わる話し方』など。
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(モチベーション&コミュニケーション代表 桐生 稔)
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