テレワークでも仕事がどんどん片付くチームをつくる「3つの合言葉」
プレジデントオンライン / 2020年6月25日 9時15分
■上位者への相談「エスカレーション」に対応できるか
「エスカレーション」という言葉は、IT業やコールセンターで頻繁に使われる言葉ですが、もともとは上位者に相談したり、対応を要請したりすることを指します。
例えば、コールセンターだと、オペレーターが電話に出たけれど対応ができないような内容であった場合に、エスカレーションが発生します。また、ものづくりの場合には、発生した障害を開発側に対応してもらうこともエスカレーションと呼びます。
リーダーの手腕が問われるのは、部下からのエスカレーションに的確に対応できるか? リーダー自身で対応できないような案件の場合、リーダーの上司や他部署やステイクホルダーへタイムリーで適切なエスカレーションができるか? の2点です。
部下は上司を観察しています。例えば、部下からのエスカレーションに期待通りのスピードで期待通りの内容に対応してくれた場合には、上司の評価が上がります。しかし、せっかくエスカレーションしたのに、回答はないし、そもそも対応してもらっているような様子もない。進捗を確認したけれど、「忘れていた」などということがあれば、部下からの信頼度は一気に地に落ちます。
■「管理リスト」を作ると抜け漏れなく対応できる
そこでお勧めしたいのは、エスカレーションの管理リストをつくることです。具体的には、いつ誰に何を問い合わせたか、その回答は誰からどんな内容でもらったのか。あるいは、問い合わせ先から回答がまだもらえていないのであれば、回答期限はいつかを書き出し、エスカレーションの状況を「見える化」します。
もらった回答も誰でも見られるようにしておくと、同じエスカレーションが多方面から上がってくることもなくリーダーもメンバーも仕事のダブりもなく、エスカレーション件数も減少します。
そのリストからFAQ(よくある質問)を作成することもできますし、お試しいただければその効果が絶大だということに気づいていただけることでしょう。
■権限委譲「デリゲーション」ができる組織は人が育つ
デリゲーションという言葉は日本ではあまり縁がないかもしれませんが、日本語にすると「権限委譲」という意味です。海外の場合には各人のジョブディスクリプション(職務定義書)がはっきりしているので委譲もしやすいのですが、日本型の組織ではなかなか難しいのかもしれません。しかし、権限委譲ができる組織は人が育ちます。
会社員時代に、フリーアドレスの席で仕事をしていると、海外からのエグゼクティブが隣に座って仕事をしだしました。“Give him a chance!…If he can’t manage it, fire him!” 電話で話す彼はそんな会話をしていて、鳥肌が立ったのを覚えています。つまり、「チャンスは彼にあげるけれど、もしうまくいかなければ辞めてもらえばよい」という会話を偶然耳にしてしまったのですが、そんなやりとりが普通の会話として聞こえてきたことが衝撃でした。
日本企業では、今の法律でそんなわけにはいきませんが、近い将来そのような厳しいことが起きるかもしれません。逆に、チャンスを渡すことでその人が伸びることもあるでしょうから、権限委譲をうまくできれば部下の成長の機会とすることもできるでしょう。
■リモートほど、声掛けが重要になる
ここで注意が必要なのが、デリゲーションの「範囲」と、委譲した相手への「動機づけ」です。どこまで委譲するのかは、部下のその仕事の習熟度によります。10あるプロセスを全部渡していいのか、プロセスの4と5だけなのか、対象者との会話が大切です。段階的に渡した方がいい人と、10個のプロセスを全部丸投げでも大丈夫な人がいるでしょうから、本人に決めさせるとよいでしょう。
そして、動機づけは非常に大切です。もちろん組織のため、顧客のためという大義名分も必要ですが、やはり最後まで頑張れるかどうかは「オウンリーズン」(Own Reason)、つまり自分なりの理由です。これが自分ごとになればなるほど、放っておいても頑張れるのです。
例えば、「この仕事の先に新しいキャリアが拓ける」「これがうまくいけばインセンティブがつく」「この仕事がうまくいけば社内での影響力も大きくなる」など、その人が欲しいものに直結するような頑張る理由を明確にしてあげることが大切です。
そして最後は、モチベーションを維持・向上させるような意識的な関わりも必要です。そもそも難しいことにチャレンジしているわけなので、うまくいったりいかなかったり、メンタルはジェットコースターです。ですから、うまくいっている時には注意点を、へこんでいる時には支える一言や期待を伝えるなどの工夫があるとよいでしょう。リモートであれば、なおさら必要になってきます。
■オンライン会議に必要な「プレゼンテーション」力
特にリモートでのコミュニケーションが増えるテレワークで活用するオンライン会議システムでは、約13インチの二次元の画面の中で自分を表現することが求められます。相手の反応もよくわからず、「まぁ、こんなもんかな? 反応もないし」と、コミュニケーションをあきらめてしまい、伝えるべきコンテンツは伝えるけど、そこに至るまでの思いや熱意などを乗せずに終わってしまうことが多くなります。オンラインだからこその良さもあるので、自分らしい表現を心掛けることで、プレゼン力を高めていきましょう。
具体的には、パッション型であれば、熱意を表現しつつも相手が飲み込むための間を取ったり、意見収集のための質問をいくつか準備しておきましょう。「一方的に押し切られた!」と思われることがないように、相手にいかに話をさせるかという工夫が大切です。
反対にクール型は、文字やデータで理論武装しがちです。しかし、そこは理だけではなく情の部分を見せるなど、自分の思いを自分の言葉で話すことが大切です。過去の偉人の言葉などを流用すると抵抗なく表現ができるかもしれません。
■「論理と心理」に働きかける話し方をする
リモートではやはり準備が必要です。行き当たりばったりではなく、相手の右脳と左脳の両面に働きかけられるように、論理と心理の両面からのアプローチを意識するとよいでしょう。
![片桐あい『これからのテレワーク 新しい時代の働き方の教科書』(自由国民社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/b/200/img_0bf970387200862438127c14629695d5229740.jpg)
つまり、納得感のある説明の内容(コンテンツ)と、「それやりたい!」と思わせるような表現(デリバリー)、そして何よりもリーダーとしての在り方(プレゼンス)が表現できるように、しっかり準備して臨みましょう。
オンラインでの会議や面談はプレゼンの場だと意識することで、相手への届き方は変わってきます。完璧を目指すよりも、「らしさ」が伝わるプレゼンを目指しましょう。
まだまだ始まったばかりのテレワークという働き方。味方につけてビジネスで成果を出せるリーダーになるのか、うまく使いこなせずに成果が出せないリーダーになるのか。やってみなければ、わからないことばかり。まずは、トライ&エラーを繰り返し、自分のチームらしいやり方をぜひみつけてほしいと思います。
目の前に部下がいないと仕事ができない人というレッテルを貼られる前に、この3つの力を身につけ、リモートでもリアルでもチームでの成果を狙っていきましょう。
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人材育成コンサルタント
カスタマーズ・ファースト代表取締役。日本オラクル株式会社(旧サン・マイクロシステムズ株式会社)サポート・サービス部門に23年勤務。M&Aやリストラで仕事上のポジションが危うい外資系IT業界で成果を出し続ける。卓越したコミュニケーション能力・問題解決能力を武器に2013年に独立し、企業研修講師となる。年間約120件登壇し約2万5000名の育成に従事。また、人財育成コンサルティングで延べ3400名のカウンセリングでの育成にも貢献している。
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(人材育成コンサルタント 片桐 あい)
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