「給与の高さじゃない」コロナ禍での結婚条件で急浮上したポイント
プレジデントオンライン / 2020年6月24日 8時45分
■コロナ禍で「お金の生存戦略」を考え直すときがきた
「あなたとお金の生存戦略」――。本連載ではこれをテーマに執筆してきましたが、今ほど「生存戦略」の重要性を感じられる時期はないのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの影響で、人々の生活環境は大きく変化しました。
私の知人には、これまで気ままな独身生活を謳歌していましたが、孤独な「ステイホーム」の期間に体調を崩した男性がいます。また、移動が制限されたため、地方に暮らす親、あるいは老人ホームで生活する親・祖父母の様子を見に行くことができず、じっとワンルームの賃貸で過ごす女性もいます。
結婚している人でも、家族内でけんかが続いて逃げ出したくなった人がいます。わが家も1カ月を過ぎたあたりから、こどもの相手と仕事の両立が難しくなってきました。
そして、未婚・既婚に関係なく、多くの人がサバイバルを余儀なくされているのがお金の問題です。雇用と定期的な収入が安定していることのありがたさをひしひしと感じている人もあれば、いきなり収入減となり定額給付金などの手続きに追われている人もいます。
ストレスや苦労は絶えません。しかし、コロナの第2波、第3波が予想されている今こそ、少し先の人生や生き方を考えるチャンスではないでしょうか。そこで今回、10年先を見据えた「あなたとお金の生存戦略」を4つのポイントで考察していきます。
【ポイント1】仕事のキャリア、稼ぎ方の見直し
・あなたのキャリアをどうデザインするか
・共働きポートフォリオをもっと意識する
1‐1)伸びない会社、年功序列にはもうつきあわない
新型コロナウイルスを受けての緊急事態宣言は解除されたものの、テレワークを継続する企業は多いようです。今後、「働き方」が大きく変わる可能性があります。それに伴い、ビジネスパーソンは仕事のキャリア構築について、これまで以上に強く意識しなければならないことがあります。それは、「キャリアは伸ばせるときに伸ばせ」ということです。
アフターコロナにおける企業の人事評価はどう変化するでしょうか。もともと年功序列的な給与の仕組みは徐々にすたれつつありましたが、それに加え、テレワーク中心の働き方が定着すると「拘束時間」の量を給与の根拠としていた発想が薄れ、「業務のアウトプット」の量や質で評価する時代に移行していくと考えられます。ダラダラ残業なども無意味になります。
今後、主流となりそうなのは、より能力主義、実績主義を重視した評価制度です。年齢に関係なく、自らの能力・実績を高めて評価やポストを上げて年収を増やしていく。結果を残す人がより多くの報酬を得る形です。
このとき、私が強調したいのは、旧態依然とした人事制度の会社にいて年功序列の昇格順を待ってはいけないということです。それは人生において時間のムダだと認識すべきです。
もし、あなたのビジネススキルの伸びと賃金の伸びがミスマッチだと思うなら、あなたの能力を適正に評価してくれる企業へ急いで移るべきです。職種としてイヤな仕事に就いている場合や、不向きな仕事に従事させられている場合も、「次の異動まで3年ガマンしよう」など考えず、自分に向いている職種で勝負すべく積極的にジョブチェンジを考えればいいのです。
また、50歳代を過ぎたら、会社の高齢者雇用制度改革などをただ待つだけではいけません。自分が長く働けるキャリアビジョンを考えて行動するべきです。数年後には多くの人が70歳まで働くのが当たり前の時代が到来しますが、それはよりシビアな世界になります。必要とされる人にのみ高い給与が払われることになるからです。
60歳代前半の処遇も現在よりは改善されるでしょうが、「65歳以降働けるかどうか」は、周囲があなたをどう評価し必要とするかにかかっています。
■結婚相手選びの基準は「給料の高さ」「外見」ではなく、「共働き」
1‐2)片働き時代の終わり、共働きを前提とする
すでに多くの人が実践していますが、これからの時代はますます「共働き」が中心となるでしょう。夫婦の共働きと片働き(いわゆる専業主婦の世帯)との比率は現在、おおよそ「2:1」です。平成時代が始まったとき、これが「1:2」であったことを考えると約30年で大きな社会的変化があったわけですが、それでも「専業主婦世帯」は3割以上あるわけですし、「非正規で働く共働き」世帯もまだ多く含まれています。
共働きを前提としていくことはもはや前提です。夫が大車輪の活躍で2人分稼ぐという発想から、夫婦がそれぞれ稼いで合計で2人分を得るという発想にすれば、男性も女性も過度な負担をかけずに働けるようになります。
そして、共働き最大のリスクヘッジは、「いきなり年収ゼロの可能性がなくなる」ということです。働いている会社がいきなり倒産したり、「明日から来ないでね」と通告されたりすると片働き世帯の場合、窮地に立たされてしまいますが、せめて夫婦のどちらかが稼ぎ続けられれば、被害は最小限にでき立て直しも可能です。
これから結婚する人は、伴侶選びの際に、「共働き」という価値観を共有できる人かチェックするべきでしょう。ひょっとすると、「給料の高さ」「外見」などより、「共働き」のほうがより優先度の高い条件となる可能性もあるのではないでしょうか。
共働きは、現役時代だけではなく、老後の安心にもつながります。例えば、国が示している公的年金モデルの年金額は「専業主婦と会社員の夫婦」の数字ですが、「共働き正社員夫婦」であればこれを上回ります。条件にもよりますが、老後の年金収入が年100万円の差になることもあります。ともに正社員として勤務することで、家事育児の分担など、仕事以外の労力が夫婦それぞれにかかりますが、そうした共働きの苦労は「老後」に報われるのです。
■正社員夫婦は「異業種」に勤めるとリスクヘッジになる
1‐3)共働きはあえて違う会社に勤めてリスクを分散せよ
今、結婚している共働きであれば、その夫婦は「職場結婚」というケースもあるでしょう。また、以前のように結婚した女性社員に離職を強制するようなことは減っているので、職場結婚した後も夫婦2人とも会社に所属し続けることも珍しくありません。
しかし、これからを考えたとき「夫婦がともに同じ会社で働くことはリスク」でもあることを意識したいです。なぜなら「ふたり同時に年収減」になるリスクがあるからです。
わかりやすい話、勤務先が新型コロナウイルスの影響をもろにかぶって売り上げ減少している場合、夫婦ともに夏のボーナスは期待できなくなります。ところが、夫が「自動車メーカー」、妻が「小売業(スーパーなど)」といった形で違う業種で働いていれば、コロナ禍であっても後者はボーナス増もありえます。
夫婦が共働きをするなら「異業種」で働くほうがリスクヘッジになります。夫婦もどちらかが年収減少にならなければ、比較的余裕を持って危機を乗り越えられます。共働きというリスクヘッジがさらに強固なものになるわけです。
職場結婚をした夫婦はぜひ、どちらかは転職にチャレンジしてみてください。景気が回復し始めたらでもかまいません。なお、このテーマについては拙著「共働き夫婦 お金の教科書」(プレジデント社)でも指摘していますので、読んでみてください。
■パートと正社員の生涯収入を1億円以上ついてしまう
【ポイント2】働き方の見直し 非正規のリスク
・非正規での仕事は大きなリスク
・テレワークが働き方を変えていく
2‐1)非正規の仕事はもう選んではいけない
今回のコロナ禍で明らかになったのは「非正規」と「正規雇用」のあいだの待遇差です。期間工のような仕事は容赦なく仕事がなくなりますし、アルバイトやパートの場合も、勤務日数が減少すればその分、収入が下がります。仕事を辞めることになっても退職金も出ません。これは派遣社員でも同様でしょう。
正社員と非正規のあいだにある、あまりにも大きな「差」は経済危機に直面して改めて浮き彫りになったといえます。どんなに「同一労働同一賃金」というしくみができても、雇用の安定性での格差は残ります。
これまでは、働く時間の自由度を理由に、非正規の働き方を選ぶ人もいました。しかし、ここ数年、むしろ正社員の働き方に多様性が与えられるようになってきました。正社員でも勤務時間をシフトさせたり、短時間勤務を認めたり、子の病児保育や親の介護時に休暇を取ることができるようになっています。
そもそも昇格昇給のチャンスは正社員にのみ与えられていることがほとんどです。この差は、パートと正社員の生涯収入を1億円以上つけてしまうほどのインパクトがあります。
そして、退職金支給の対象もまた正社員のみとする企業がほとんどで、この点でも1000万円以上の差がつくこともあります。先ほど述べた公的年金の適用(厚生年金に入るか、国民年金だけか)に加えて、老後の経済格差は大きくなるのです。よって、転職しようとする際にも非正規の採用はもう応募しないくらいの覚悟で仕事を探すことをおすすめします。
■テレワーク定着で稼ぎ方のルールが大きく変わる
2‐2)テレワークが進めば、働き方が変わる
今回、多くの会社で働き方の変化が生まれました。テレワークです。国が音頭を取って、オリンピック前に普及率を上げようと試みていたのですが、実施率は今ひとつの状態でした。それが今回のコロナ騒動で一気に普及しました。「会社としては実施していたけれど、自分は無関係だと思っていた」というような人が、否応なくテレワークの対象になったケースもあるでしょう。
テレワークはすべての業種・職種で採用できるわけではありません。しかし、働き方を大きく変えるきっかけになる可能性があります。
個人にとっては、「通勤時間」を働く時間から除外することができます。今までは6時起床だった人も、9時直前に食事を終えてパソコンの前に座ってもいいわけです。業務時間が終了すればすぐ、自宅の掃除や買い物に着手することができます。特に子育て世帯にとってはこれほど助かる話はありません。
仕事のストレスとしても、週何日かの自宅勤務があることで、ストレスを大きく軽減させられる人もいるでしょう。そもそもでいえば「9時から5時」という働き方にしばられなくなる可能性もあります。
今後さらに本格的にテレワークが進めば、「首都圏に暮らさないと働けない」という制約から解放されるかもしれません。地方のローコストの住宅費で済めば、仕事選びや自宅選びの選択肢、さらには人生の選択肢も格段に増えるでしょう。
もしかすると、稼ぎ方のルールが大きく変わる大転換点に私たちはいるのかもしれません。ぜひ、うまく適応してストレスなく稼げるようになりたいものです。(「後編:ポイント3、4」に続く)
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ファイナンシャルプランナー
フィナンシャル・ウィズダム代表。連載12本を数える人気コラムニスト。『マネーハック大全』など著書多数。
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(ファイナンシャルプランナー 山崎 俊輔)
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