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「早く日本に行きたい!」いま中国人が日本で買いたがっているモノ

プレジデントオンライン / 2020年6月24日 15時15分

都道府県境をまたぐ移動が全面解禁後の初の週末を迎え、多くの観光客でにぎわう浅草・雷門の前を通過する人力車=2020年6月20日、東京都台東区 - 写真=時事通信フォト

■旅行が解禁されたら日本で何を買いたい?

「あ~! 日本に行きたい! 行きたい! 行きた~い!」

新型コロナが日本で最も深刻だった5月初旬の大型連休中のこと。同じく連休中の上海で20代の中国人女性がSNSでこうつぶやいていたのを偶然見かけた。このコメントには、彼女が昨年出かけたという沖縄のビーチと、沖縄のホテルで飲んだトロピカルジュースの写真が添えられており「妄想旅行中~♪」とも書かれていた。

新型コロナウイルスの影響により、5月の訪日外国人数は前年同月比99.9%減となった(日本政府観光局のデータ)。日本国内の観光業も壊滅的な状況の中、インバウンドも大きな影響を受けている。中でも最も訪日人数が多く、昨年は約959万人も来日した中国人がほとんど来られなくなったことで、観光地の中には死活問題となっているところもある。だが、私の知る限り、冒頭のように「日本に行きたい」と熱望している中国人は少なくない。

もしコロナ後、海外旅行が解禁されるようになったとしたら、彼らは日本でどんなものを買い、何をしたいと思っているのだろうか? それを知ることは今後のインバウンド動向のヒントになるのではないかと考え、SNSを通して複数の中国人に問いかけてみた。大勢を対象としたアンケートではなく、あくまでも個人的なヒアリングにすぎないが、「日本好きなリピーター」の意見は、参考になると思ったからだ。

■ネットでは買えない新作化粧品がほしい

真っ先に返信をくれたのは天津に住む20代の女性だ。富裕層の子弟で、大学卒業から数年たつが、仕事はしていない。来日経験は4回あり、そのうち3回は親しい友人が住む関西地方だった。その女性はいう。

「コロナでどこにも行けない日々でしたが、自宅にいてもスキンケアとメイクは怠りませんでした。化粧品はすべて中国のネット通販で日本の自然派化粧品を購入。もう何年もずっと日本製しか使っていません。でも、新色の口紅とか、新しいシリーズの化粧品はネットでは買えないものが多いし、ネットでは商品の色が微妙に異なるので、自分の足で日本の百貨店に行って試してみたいです。化粧品コーナーでは、実際にメイクもやってもらいたいですね」

この女性のように、日本の化粧品に関心を示す中国人女性は非常に多い。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」(2019年)の「日本滞在中の費目別支出」を見ると、購入品の1位は菓子類で、2位が化粧品・香水となっている(ちなみに3位は医薬品)。菓子類は空港や観光地での土産物が多いと思われるが、その次に多いのが化粧品なのだ。訪日中国人の男女比は男性4割、女性6割で女性のほうが多く、女性の中でも年代別で多いのは20代と30代。化粧品やファッションに関心が高いというのもうなずける。

■洋服や抗菌グッズ、無印良品など…

大連の企業で働く30代の女性は「日本で衣料品を買いたい」という。「大連にいても、ネットで国内外の衣料品は買えるのですが、やっぱり試着したり、お店で選んだりしてみたい。自分の目で見て、確かめてから買いたいですね。日本にはセンスのいい服がたくさんあるし、デザイン的に中国より“かわいいもの”が多い。もし日本に行けるようになったら、スーツケースを2つ持っていきたいです(笑)」と語る。

そのほかには、以下のような回答があった。

「日本のドラッグストアで売っている下痢止めの薬」(中国には日本のようなドラッグストアはないし、市販の手軽な漢方薬は日本のほうが豊富だから、50代女性)
「今年のかわいいスケジュール帳」(春節後に日本に行って買う予定だったので、今年のスケジュール帳がないから、30代女性)
「抗菌グッズ」(日本のほうが消毒液や抗菌グッズをたくさん売っているから、30代女性)
「無印良品の雑貨」(中国にも無印良品はあるが、日本よりも値段が高く、アイテムも少し異なるから、20代男性)
「東急ハンズのDIYコーナーにある道具やアウトドアグッズ」(中国には東急ハンズや、似たようなショップもないから、50代男性)

■政府規制とコロナで手に入りにくい

日本でも知られている通り、中国ではネット通販が非常に盛んだ。毎年11月11日に盛大に行われる「独身の日」セールだけでなく、日常的に何でもネットで購入するという人が非常に多い。日本人と違い「国産品」よりも欧米や日本製品を求める傾向も強い。

ボールペンやアイシャドー、シャンプーに至るまで「国産ではなく日本製がいい」という人までいる。ボールペンならインクの出方やグリップ部分など細部の品質が日本製は段違いですばらしいし、シャンプーも日本製だと髪が傷まないという人もいる。これらはコロナ以前、2015年の「爆買いブーム」の頃からずっと続いている傾向なので、コロナによって急に考え方が変わったというわけではない。だが、コロナによって「安心・安全」を求める意識はより高まったといえるだろう。

中国のネット通販で買えないものは、以前は日本に住む中国人に「代理購入」を頼んだりすることもあったが、「代理購入」は2019年1月から本国で実名登録をしなければならないなど中国政府の規制がかかり、トーンダウンした。それに3月以降、新型コロナの影響で、郵便局から中国に発送するEMS(国際スピード郵便)が停止されているため、日本製品は以前よりも手に入りにくくなった。そうした影響もあり、余計に「日本に行って自分で買い物したい!」という欲求は高まっているようだ。

■口コミで広がる「コト消費」は健在

だが、いろいろ話を聞いていくと、「日本に行きたい理由は買い物だけではない」という声が多かった。それは「(中国みたいに)人が密集していない静かなところでのんびりすること」や「(中国にはまだ少ない)最高級の焼き肉レストランに行くこと」など、いわゆる日本ならではの“コト消費”に関連することだった。

「爆買い」後、中国人の海外旅行はモノ消費からコト消費へと移行した、と日本でも報道された。それは現在もずっと続いており、今回の取材の際も「箱根の温泉の露天風呂に入ってのんびり入りたい」、「北海道の大自然でサイクリングして、そのあとジンギスカンやお寿司をたくさん食べたい」、「阿蘇の牧場に行って、草原で牛乳を飲みたい」といった「モノ」以外の話をする人が多かった。冒頭の上海の女性も「沖縄にまた行って、何度か行った土産物店のおばあちゃんの顔を見たい」と話していた。

具体的に行ってみたい場所は千差万別で「この県のこの場所が人気ナンバーワンだ」というランキング的なことはいえないが、それぞれが過去に体験した日本旅行からもう一度行ってみたいところや、以前からSNSで見て、行ってみたかったところを挙げていた。中国人は旅行サイトよりも、自分が信頼する友人や知人のクチコミを信じるため、「コロナが収束したら、同僚の○○さんが以前行ってよかったというあそこにぜひ行きたい」という具体的な希望を持っているのだ。

■来日する最初の中国人は都市部の富裕層か

今夏、中国から出国できる国はヨーロッパのいくつかの国だけに限られるようだが、中国人にとって日本は常に「行きたい国」の上位に挙げられており、日本行きを熱望する声は高まってきている。そして、もし実現できるとしたら、その旅行スタイルは「個人旅行」だ。

観光庁の訪日中国人のデータ(2019年)を見ても、個人旅行はすでに全体の7割(個人旅行向けパッケージ商品を含む)に上っており、団体旅行(3割)を大きく上回る。もしもコロナがなかったとしても、自由に自分の裁量で、好きなだけ動き回れる個人旅行を選ぶ中国人は圧倒的に増えていた。

これまで団体旅行は比較的所得が低く、内陸部の都市出身者らが「初めての海外旅行」で参加する傾向があったが、コロナ後は、都市部の比較的富裕層から順に海外旅行に行き始める可能性が高い(コロナによって、それ以前に発給済みだったマルチビザは無効となっていたが、渡航が再開されれば、手続きなしでビザの効力が回復するともいわれており、そうした人々は約200万人に上る)。となると、行き先はおのずと、ここまで述べてきたような「コト消費」ができるエリアになってくるだろう。

これからは日本人の旅行も「密にならないところ」がキーワードになるだろうが、中国人旅行客も、結局のところ、求めることは日本人とそう変わらないといえそうだ。

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中島 恵(なかじま・けい)
フリージャーナリスト
山梨県生まれ。主に中国、東アジアの社会事情、経済事情などを雑誌・ネット等に執筆。著書は『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日経プレミアシリーズ)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか』(中央公論新社)、『中国人は見ている。』『日本の「中国人」社会』(ともに、日経プレミアシリーズ)など多数。

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(フリージャーナリスト 中島 恵)

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